山口県のご当地ラーメン5選

山口県のご当地ラーメン5選

東部からは広島豚骨醤油が、西部からは九州濃厚豚骨がなだれこんで来る山口県ラーメン事情。そんな逆境下、県中部で細々と息づくイニシエ系の醤油スープに、いりこスープや、牛骨スープ。さしずめラーメンのるつぼである。だから山口県のご当地ラーメンは、結構変化に富んでいる。その代表サンプルを東から西にご紹介。

更新日:2015/01/07 (2014/11/05作成)

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このまとめ記事は食べログレビュアーによる404の口コミを参考にまとめました。

岩国市 たちばな

ラーメン並(カタ)

局地的ご当地ラーメンだが、その出自は必然か!?(豚いりこ系)

山口県内の変り種ラーメン屋さんのトップ10に入ってもおかしくない。何せ、店舗営業は土日のみ。おまけにウィークデイは神出鬼没の軽トラ屋台営業。しかも創業は何と昭和26年。今は三代目が店を守る、かなり由緒正しき老舗である。にも関わらず、暖簾分けせず黙々と独りラーメンを作り続ける姿は清いのだ。この一杯の最大ポイントは絶対にスープである。単なる豚骨スープだと思っていたのだが、実は豚骨じゃなく豚肉スープ。東京の某肉屋から仕入れる、ある処理を施した豚肉でベースの豚白湯を採り、そこに瀬戸内産のイリコ出汁を合わせる。しかも、化調は言うに及ばず、何と塩さえもも一切使わない。マジで豚とイリコのみ。このスープが出色で、山口県では他に味わえない類のスープだ。それは、豚骨臭とは完全に縁切りされた豚肉の風味。豚肉からスープに転写された、優しくも芳醇なラードの風味である。キッチリとコクがあるのに全くひつこくない。そこに絡むイリコの風味。その調和は素晴らしい。こんなシンプルレシピで、これほど旨みのあるスープが作れるとは。恐れ入りました。

たちばな

孤高の豚いりこスープ

広島県からなだれ込んで来る豚骨醤油系、そこに瀬戸内ラーメンのエッセンスであるいりこを加えた、ありそうでないレアな一杯。これって単なるW系だろ?と簡単に切って捨てれないのはその地域性故。このお店のロケーションは、広島豚骨醤油スープと瀬戸内いりこスープが出合う、正に接合点に当たるのだ。極めて局地的なレシピだけれど、これも間違いなくご当地ラーメンじゃなかろうか。

大島郡 たちばなや食堂

中華そば

アクセス難度に負けるな!!瀬戸内ラーメンの震源地(いりこ系)

周防大島大橋を経て本土から車で30分はかかる、ひなびた漁村のお店は世捨て人の如きファサード。イニシエなんて生温い、生きた化石のような食堂である。そんな一杯は、これ以上は無いだろう強烈いりこ出汁スープ。本土に散在するフォロアーと比べても一段と透明度の高い、まるでビールの如き黄金色のスープ。ドワ~っと押し寄せるいりこの香り。背後に見え隠れする穏やかな塩味鶏ガラスープ。分かり易い事この上なしの、唯我独尊、孤高の極みのスープだ。この突き抜け感は、やはり瀬戸内ラーメン親玉的存在感である。麺は中細のストレート麺で、カタで手繰ると若干モサモサした食感は、ツルツルと手繰るタイプではない。このそば感が、レトロスペクティヴな印象を一層盛り上げてくれる。いりこ全開スープに泳ぐ麺としては抜群の調和感。難点とすれば、カタクチイワシの活きの良し悪しに影響されて、スープの振れがやや大きい事か。

たちばなや食堂

いりこプンプンの塩スープ

その存在感は未だ健在。今や僅かな生き残りとなってしまった、いにしえの味を残した一店として、もはや敬意を払わねばならないだろう。いりこ出汁の塩ラーメンというフォーマット、実は余り好みの類ではないのだが、それでもこの一杯は、本土から離れ、瀬戸内の漁村に接するという、正にこの環境だからこそ生まれた、本物のご当地ラーメンなのだろう。

下松市 北斗亭

中華そば(中)

山口県中部を代表するご当地ラーメン(牛骨系)

山口県中部の下松市とその周辺に散在する下松ラーメン。牛骨スープがフォーマット。麺はほぼストレートの中細タイプだが、下松ラーメンはこれしか使わないのだろうか?悪いがほとんど特徴が無い。カタでオーダーしてやっと普通。耐伸び性もあまり無いし、濃厚豚骨スープのようにヤワ麺が似合うことも無い。だから、着丼したら一気に手繰らないと終盤まで持たないのだ。まあ、刻々と延び行く麺と追いかけっこしながら手繰るのも醍醐味ではあるのだが。特有の甘みを伴いつつ、牛特有のあの風味が鼻をくすぐる。豚骨系全盛の山口県で極地ながらも気を吐くご当地スープである。ガシガシとしたウデかモモの赤身チャーシューも、下松ラーで良く見かけるパタンであり、実はこれが大層好きなのだ。

北斗亭

甘味を伴う牛骨スープ

近所にダントツ人気を誇る下松ラーメン店があるのだが、敢えてそこはピックアップしなかった。何故なら、この一杯の方が下松牛骨ラーらしいと思うから。地味な一杯に見えるけど、牛骨スープのキャラをシンプルに味あわせてくれる素な感じが好きなのだ。しかしどうも、山口県のラーメンはスープに比重をかけ過ぎる癖がある。やっぱり麺が泳いでなんぼだと思うのだが、ラーメンは。自家製面がマジで少ないよなぁ・・・

周南市 まつき食堂

中華そば

60年間基本レシピ不変!!恐らく山口県最古の一例

イニシエ中のイニシエな一杯。こういうのは今や珍しくなってしまった。1950年代の屋台のチャンそば、そう思えば趣も一気に変わってくるのだ。麺はストレート細麺。博多ラーよりも加水率が少し高めと見えて、少しプリプリした喉越し。茹で加減は近所の常連お年寄り軍団に合わせて、デフォだとかなりのヤワ茹でである。カタ嗜好の方はご注意を。試しにカタで茹でてもらうとグッと活きが良くなる。スープこそ嘘のような60年前の味。啜ってみれば何の変哲も無い鶏ガラ醤油。凝ったスープが当たり前の今にあっては、もはや哲学的な味わい方をするしかあるまい。1950年台の、卑屈さを投げ捨て希望の光を見据え始めた、在りし日の我が国を偲ぶのも一興ではある。

まつき食堂

60年不変のレシピ

このお店、ラーメン専門店ではない。実は地元ブランドの和牛ホルモンを格安で提供する焼肉食堂である。キタナシュラン候補にもなり得る、パラダイスな空間。床なんか傾斜してるので、机上に置かれたラーメンの液面は傾いてる。笑うしかないワンダーな鰻の寝床的空間は、だが妙に居心地が良い。喰い終わったら少しだけぼんやりとしていたい空間。舌に残る60年前の味わい。タイムトリップしてみては如何?

山陽小野田市 ラーメン六助

ラーメン(カタ)

宇部ラーメン始祖の正当な直系店(豚骨系)

福岡県久留米市から飛び火して根付いた宇部ラーメン。その始祖ともいえる今は無き師匠の二番弟子とされるお店。最近孫弟子にバトンタッチされた由。宇部ラーメン生誕からほぼ半世紀、無理もなかろう時の流れ。二基のつば付き寸胴鍋では、常に豚骨のみがグラグラやられている。水位が下がれば水を足し、豚骨がへたれば入れ替える。こうして継ぎ足し続けられる、通称呼び戻しスタイル。これは、宇部ラーの常道だ。こうして煮出された豚骨スープは結構な茶色。モタッとした喉越しが特徴の典型的な喉越しだが、他の人気店群に比べると相当に油が抜けており、コッテリ感は最弱クラス。舌と鼻に残るのは、何ともクリアでキレのある豚骨風味である。化調多用による独特の後味引きも、良くも悪くも宇部ラーメン。麺は宇部ラーメン定番の木嶋麺、カタメコールをすれば、それこそ麺のエッジが立った如きシャープな茹で下限でやって来る。その麺の寿命は2分半。トッピングもスープも放っといて、一気に手繰り切るのはラーメンの美学。

ラーメン六助

元祖宇部ラーメン直系

ちょっと地味な存在だが、最も好みの宇部ラーメン店である。でしゃばらず、内向する様に、絶妙にバランスするスープ。切れ味鋭く茹で上げられる麺との絡みは、もはやチャーシューなど邪魔に思えてくるほどだ。スープと麺の真剣勝負を冷静に楽しみたい。宇部ラーメンのセンターからはちょいと外れているが、それ故シブい宇部ラーである。

※本記事は、2015/01/07に更新されています。内容、金額、メニュー等が現在と異なる場合がありますので、訪問の際は必ず事前に電話等でご確認ください。

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