一乗寺に美味い物あり
徐々に暖かくなり、そろそろ外出してちゃんとした和食のコースを口にしたいと思い始めていた。
びっくりする程高価な店は除外。しかしオーソドックスかつ真っ当で、それなりに美味なお料理を
提供してくれる新しいお店を見つけたい、とあれこれ考え、花見がてら京都に向かいこちらの
お店をチョイス。
結論から言えば「大正解」だった。
突き出しのミル貝の石焼から計8品、筍御飯と水菓子2品。締めの筍御飯が美味しくて4杯も
お代わり。腹もいっぱい。それでもってあの美味な自家製水菓子。
〆て¥12000/人+消費税也。あの内容とボリュームならCPも言う事なし。
幾つか印象に残った物を。
ミル貝の石焼は、タレに付けられた貝を焼いて頂く。香ばしさと旨味が増して良いスターター
となる。そのままでも食べられる物だが、ちゃんと焼いて美味くなるようなタレになっている。
椀物は蛤真丈、蕗、そしてアカモクが入った春を感じさせる物。節系が勝ち気味だが淡い吸い地と
椀ダネのバランスも良く美味。自分でも能登でアカモクを購入し食した事もあるが、こちらの椀物
では一段調子の高い清冽な旨味。
八寸は筍と烏賊の木の芽和え、イイダコの炊き物、鯛子、そして赤貝の味噌漬け等が入る。
こちらも春らしい食材満載でどれも美味。パンチのある味わい、奥深い旨味、上品な味わい等の
緩急が素晴らしい。特にあの赤貝の味噌漬けは特筆ものだった。
この時期だけの変わり寿司となる、筍で巻いた巻寿司。更に玉子や穴子で巻き、具には海苔や
百合根が入る。ガブっと口にして味わった時の爽やかかつ後に残る旨味が秀逸で、満足感も高い。
専門店でもあのレベルの巻き寿司には中々お目に掛かれない。
若竹煮は、丁寧に薄く削られた鰹節が乗せられ、絶妙な加減の出汁つゆとともに供される。
添えられた山椒の葉の香りと共に、一滴残さず飲み干した。
タラの芽とバチコの天婦羅。いや、これは初めて食した。バチコ(コノコ)をあの塊で天婦羅に
して食すこと自体贅沢だが、まあその美味い事。タラの芽の爽やかな苦みと共に至福の味わい。
締めの前に出された梅貝の炊き物も美味だった。あんなに柔らかく処理された梅貝を口にする
機会も中々ないが、貝の旨味も更に引き出されている。添えられた白味噌の酢味噌も、コクと
酸味が非常に良い塩梅。
最後の水菓子がまた良かった。三宝柑のゼリー、パイナップルジュース、そして自家製蕨餅。
いずれも過去に名店と言われる懐石、日本料理の店で口にした物と比べて勝るとも劣らない。
柑橘系のゼリーを出す和食店は割と多いが、今回の物は甘みはそれ程ないにも関わらず、香り、
爽やかさ、品の良さ共にちょっと飛び抜けていた。
お料理の見た目はそれ程華美な装いも衒いも無い物。濃い物は濃く、しっかり目に味を付けて
ある物もあるのだが、そこは絶妙なセンスをお持ちなのだろう。重さは感じさせず、全てを
食べ終わった時の満足感が非常に高い。
切れ味鋭い京料理、というのともまた少し違うタイプだと思うが、いずれにせよ良いお料理である
事に変わりはない。
寡黙だが柔和なご主人と、肩肘の張らない女将さんの接客も好印象。
こういうお店は、食べログの総合☆点数だけを気にしていては絶対に出会えない。
「自分なりの情報判断力と勘で良いお店を探し出す」という達成感も久々に味わう事が出来た。
また違う時期に是非訪れたいものだ。
Restaurant name |
Nori Hide(Nori Hide)
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Categories | Japanese Cuisine |
Phone number (for reservation and inquiry) |
075-703-8045 |
Reservation Availability |
Reservations available
昼の予約は2日前までに |
Address |
京都府京都市左京区一乗寺下リ松町31-2 |
Transportation |
白川通りから、曼殊院道を東へ50mくらい、北側 499 meters from Ichijoji. |
Opening hours | |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥10,000~¥14,999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (JCB、AMEX、Diners) Electronic money Not Accepted |
Number of seats |
( カウンター7席、座敷(掘りごたつ式)6席 (カウンターも靴を脱がねばなりません)) |
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Private dining rooms |
OK |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking lot |
OK |
Space/facilities |
Stylish space,Comfortable space,Wide seat,Counter,Tatami seats,Horigotatsu seats |
Drink |
Japanese sake (Nihonshu),Japanese spirits (Shochu),Wine |
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Occasion |
This occasion is recommended by many people. |
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Location |
House restaurant |
Service |
Extended party hours (more than 2.5 hours) |
The opening day |
2015.4.10 |
Remarks |
祇園「乃り泉」(のりせん)で修業された店主さんのお店 |
昨年春に訪れて「このお店は良い!」と思い、違う季節に又訪れたいと思っていた。
盆休みの墓参の機会を利用して妻と再訪。
今回は¥15000/人でお願いし、ソフトドリンク込みで2人で税込み計¥33000+α。
水菓子のマンゴープリン(これも美味かった)以外に締めのお食事含め計11品。
夏らしい、高レベルな京料理。仕事と出汁の塩梅の確かな実力。加えて肩肘の張らない一品等も
あり、緩急が付いたそのコースは、質、量ともに満足。CPの素晴らしさも改めて感じた。
(あのグレードとボリュームならば、市内中心部、祇園周辺なら間違いなく+¥1万/人には
なると思う)
幾つかのお料理をご参考まで。
・朧昆布と冬瓜の松前煮
最初の一品。冷製で供されるこちらのお料理、かつての乃り泉の大将の頃からのメニューとの
事だったが、出汁、旨味の塩梅共に素晴らしく、この後の期待がいやが上にも高まる。
正直朧昆布は、その塩気と独特の昆布臭さが苦手だったのだが、これは美味いとしか言い様が
ない。
・鮑入り冷製茶わん蒸し
これも夏らしい一品だが、滋味深く口内を冷やし、満たしてくれるそのお味。
「ああ、美味い。。」としか言いようがない。
確かな京料理としての仕事が、夏の美味を更に高めてくれる。
・鱧の造り(焼き霜風)
鱧の皮目を炭火で焙ってある。梅肉タレと二杯酢が供されたが、その香ばしさと半レアの身の
旨味が、二杯酢で頂く事により更に独特の美味さに昇華される。新たな鱧の旨味を知る事が
出来たお料理。美味い。
・鱧子と鱧出汁の羹仕立て、鱧肝羹
いずれも出汁とタレの旨味のパンチ力がすごい。「ああ、夏らしいな」だけで済ませない、
確かな旨味を感じる。鱧の肝の味の強さとはここまでのものかと思う。
・刺身はこれも夏らしい剣先烏賊とアマテガレイ(マコガレイ)だったが、付け合わせのポン酢で
カレイを頂くと、その清冽な旨味が倍増する。久しぶりに「良い」カレイの刺身を口にした。
・宮津の方の良い鳥貝が入ったとの事で、熱した石でレア焼で頂く。調味は塩とレモン絞りのみ。
食材の力が物を言うシンプルなものだが、いや~、半端なく美味い。鳥貝も大振りの良い物。
・締めのご飯は、乃り英風「鰻のひつまぶし」
最初に小皿で出てきた薬味を見た時、まさか、と思ったが、やはり当たっていた。
岐阜の人間である自分は、鰻には些かうるさい。兎にも角にも口にしてみる。
・・・いや、美味い。凄く美味い。
鰻屋ではない「京料理屋のひつまぶし」としか言いようがないこのお食事。
久しぶりに鰻料理で感動した。
最後少しだけ残して、供されたお出汁と残りの山葵を加えて飲み干す。ああ、幸せ。。
その他、箸休めの「芝漬けの飯蒸し」のさり気ない完成度も素晴らしかった。
かつての祇園の名店「乃り泉」の系譜を繋ぐお店だが、気さくな女将さんから色々なお話も
聴かせていただいた。今回は座敷部屋だったが、カウンターでは賑やかに酒を酌み交わし談笑して
いる他のお客さん達。お店の造りはしっかりとしているが、その雰囲気的は、懐石料理屋という
よりは(良い意味で)カウンター割烹に近いものもある。
間違いなく高レベルな京料理のお店なのですが、「美味しい物を出してくれるお店」という
言い方の方が何故かよりしっくりくる感じがするこちらのお店。
正直あまり混んでほしくはないので今回のレビューも若干躊躇ったのですが、備忘録がてら
やはりちょっと書き留めておきたい、と思い再レビューとなりました。