豊富なメニューが嬉しい、庶民派蕎麦屋
土曜日の昼に銀座に出る用事が有ったので、久しぶりにこちらに立ち寄る。
最近ブランドものの制服を採用したことで話題になった、同名の小学校とはすぐ近く。
周囲はほとんどお洒落なビルに建て直されているが、この店が在る横丁だけは、東京人には懐かしい数寄屋橋の路地裏の光景を残している。
13時過ぎに入店。
土曜日とは言え5卓しかない1階はほぼ満席、2階へ上がる階段への客の往来も頻繁な状況。
4人掛けのテーブルに相席となる。
相変わらず短冊状の紙片に記されたメニューが、正面カウンターの上方にびっしりと貼られている。
もっとじっくり眺めてから注文すべきだろうが、立ち上がって歩き回るのも気が引けるので、目に付いた幾つかの天種から「めごち天盛り」を選択。
3社が取り揃えられたビールは、今回も「サッポロ黒生」をチョイス。
5.6分で一式が乗った角盆が登場。
まず天ぷらに目を向ける。
「めごち」は江戸前天ぷらではお馴染みの小魚だが、時期的に少し早かったせいか小ぶりの2尾を一連にしたものが3個、合わせて6尾が使われている。
小ぶりながら味はしっかりで、やや硬めの揚げ上がりに'蕎麦屋の天ぷら'の伝統が感じられる。
添えは茄子とピーマンだが、こちらも美味い。
これにはそばつゆとほとんど変わらぬ濃さの、温められた天つゆが付いている。
私は天盛りでは、天ぷらが旧来の蕎麦屋の手法で揚げられるならば、つゆは濃いめの蕎麦つゆ一色で通すのが真っ当な仕事と考えている。
その方がつゆを仲立ちにして両者の相性の良さを楽しむという、この種物本来の趣旨に適い、味の面でも合理性がある。
こちらでは天つゆは別添えであるが十分な濃さが有るため、こちらで一体として味わうことで'天盛り本来の醍醐味'が堪能できた。
一方の蕎麦は白っぽく、割合は'七三'くらいと思われる機械打ち。
当然ながら香りは少ないが、江戸っ子が何より好んだ、適度な歯応えとのど越しの良さが前面に出ているタイプ。
今どきの'蕎麦マニア'が持て囃す蕎麦とは対極の仕事だが、これが東京の飯屋系蕎麦屋の基本的スタイルで、私にとっても子供の頃の出前を思い出す懐かしい味である。
古き良き銀座の味と雰囲気を残す、貴重な蕎麦屋。
これだけの豊富なメニューを取り揃え、安定した仕事ぶりを見せているのは立派。
この佇まいとスタイルは、何時までも残してほしい。
町場の蕎麦屋の良さを残す、ノスタルジックな老舗
連休の谷間の月曜日の午後、お彼岸なので我が家の墓のある深川の寺に出向く。
夜には銀座で所要が有るので、その合間にちょっと入れておこうと、通し営業であるこちらの蕎麦屋に久々に立ち寄る。
銀座には昔から大した蕎麦屋は無いが、こちらは比較的安定した仕事振りで、食事処としても呑み処でも使える万人向けの1軒として知られている。
創業は戦後の昭和20年代であるが、折からの高度成長期の時流に乗り、その時代を支えてきたサラリーマンに重用されることで繁盛してきた蕎麦屋である。
場所は数寄屋橋の路地裏で、この辺りは30年ほど前の勤め人時代に夜な夜なふらついていた界隈で、私にとっては懐かしい一帯。
各ジャンルでの人気店が犇めいており、結構入れ替わりも激しいようだが、こちらだけは変わらぬ佇まいを見せている。
表の袖看板が「そば 軽食 泰明庵」となっているのが面白い。
3時過ぎに入店。
一昔前までは大抵のサラリーマンの勤務は9時~5時が定時であったのが、最近は役所や金融機関を除けば、遅い始まりの企業やフレックスの事業所が増えたせいか、この時間帯でも食事客でにぎわっており、全てのテーブルに客が居る状況。
もとよりこちらでは相席は必至であるため、手前の4人掛けの卓の一人客と同席となる。
手狭に見えて2階も有るので合わせるとかなりの席数となるが、それに劣らずメニューの種類が豊富なのがこちらの特徴。
正面の配膳口の周りから天井にかけて、短冊状の紙に記された品書きがびっしりと貼られている。
当然うどんや丼物も商うが、季節ものや工夫の種物も見て取れる。
料理や肴類も一緒に掲示されており、蕎麦屋の定番に加え季節の天ぷらや刺身類まで多種多様。
まずはビール。瓶のみだが、3社のものが用意されているのが企業戦士御用達の証。
「サッポロ」を選ぶが、かつての都内の飲み屋では常道であった「黒生」が出て来た。
肴はこの時間でも何でも用意できるとのこと。
ちょっと迷うが、私には思い出深い「茗荷の天ぷら」を注文。
'天つゆはお付けしますか'と聞かれ思わず同意し、実際にこれで食べても決して悪くは無かったが、卓上に置かれた醤油を垂らした方が、より懐かしい味に近づいたと思う。
この後に酒を、これも壁の掲示を眺めて「黒帯」を選択。
冷蔵庫から出した一升瓶から小皿を敷いたグラスになみなみと注がれた、「コップ酒」のスタイルで供される。
相変わらず食事客が次々と回転していく状況で長居は無用と考え、これに合わせて「冷やしおかめ」を注文。
どんなスタイルで出て来るか楽しみだったが、概ね想像通りの景色の丼が登場。
蒲鉾2枚に自家製厚焼き玉子、本来はきつねそば用の甘い味付けの油揚げ、おかめには欠かせない小粒のどんこ椎茸や焼き麩もきちんと煮含められている。
他に貝割菜や白胡麻が散らされ、葱と山葵も予め乗っており、つゆもかかった状態で出て来た。
'冷やし'なので蕎麦がすぐに伸びることも無いため、蒲鉾に山葵をつけて「板わさ」で食べたり、他の具材を摘みながら「冷酒」をちびちびやっていく。
蕎麦は子供の頃、家の近所の店から出前で取ったのを思い出す、機械打ちの白っぽいタイプ。
今時の蕎麦オタクや、野趣のある田舎蕎麦がお好みの方からすれば、取るに足りない蕎麦であるが、程良いコシとつるっとした喉越し重視の東京人には、最も馴染み深いスタイル。
やや甘めの「つゆ」も普通の出来だが、これで十分。
山葵が粉を練ったタイプなのがむしろ懐かしい。
蕎麦湯は当然自然体で、後の丼に注いで余さず飲み干した。
懐かしい町場の蕎麦屋の良さを、銀座の中心地で楽しめるのは嬉しい限り。
この時間帯だからかも知れないが、客は結構今どきの若者が多く、そのほとんどが常連のようだ。
豊富なメニューと気の置けないサービスと雰囲気が、幅広い客層に支持されている要因であろう。
Restaurant name |
Taimeian(Taimeian)
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Categories | Soba、Donburi、Izakaya (Tavern) |
03-3571-0840 |
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Reservation Availability |
Cannot be reserved
飲酒ありのみ13:30以降予約可 |
Address |
東京都中央区銀座6-3-14 |
Transportation |
東京メトロ丸の内線・日比谷線銀座駅から徒歩2分 303 meters from Ginza. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget |
¥1,000~¥1,999 |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥1,000~¥1,999
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Method of payment |
Credit Cards Not Accepted Electronic money Not Accepted QR code payment Not Accepted |
Table money/charge |
サービス料なし |
Number of seats |
52 Seats ( テーブル52席) |
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Private dining rooms |
not allowed |
Private use |
not allowed |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables 喫煙室なし |
Parking lot |
not allowed 近隣に有料Pあり |
Space/facilities |
Comfortable space |
Drink |
Japanese sake (Nihonshu),Particular about Japanese sake (Nihonshu) |
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Food |
Particular about fish |
Occasion |
With family/children |With friends/colleagues This occasion is recommended by many people. |
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Location |
House restaurant |
With children |
Kids are welcome |
都心に出かけた帰りに久々に訪れる。
雨模様の月曜日、時刻は17時少し前。
人気店が並ぶ数寄屋通りとコリドー街に挟まれたこの道筋だけに、相変わらず'昭和の銀座'が残っている。
格子戸に手を掛けると、5卓のテーブルが窮屈そうに並んでいる1階はまだ空いていた。
しかし私と相前後して一人客が次々と入店し、'混んできたら相席をお願いします'の声を耳に、4人掛けのテーブルの一つに席を占める。
2階席には全て予約が入っているようだ。
まずはビール(黒ラベル中瓶)をもらう。
品書きは相変わらず正面カウンターの上方と左右に、びっしりと短冊状の紙片が貼られている。
多岐にわたるが、やはりこちらでは天ぷらを頼みたい。
珍しい「ほうぼう」の文字を見つけて頼んでみた。
少し時間が掛かったが、運ばれた皿にはやや大き目のそぎ切り3個が'蕎麦屋の天ぷら'の手法で揚げられており、添えは茄子とピーマン。
注文の際に塩か天つゆのどちらかを訊かれ後者を選択したが、生姜と大根おろしを加えた温かい天つゆが良く合う。
最近は何でもかんでも塩で食べることが'通'などと思い込む輩が多いが、江戸前四大料理の味の基本は全て醤油であり、天ぷらでも揚げが江戸前ならば天つゆで食するのが相当。
酒も右手の壁に掲示されており、その中から「黒帯 悠々」を1合。
客の目の前で一升瓶からグラスへ、下の受け皿も溢れんばかりに注いでくれる。
これで暫しの時間が流れる。
当初はもう少しゆっくりするつもりだったが、インバウンドの家族連れなど後客がぽつぽつと入店。
2階へは予約客が次々と上がって行くやや慌ただしい雰囲気のため、早めに蕎麦を注文。
最近こちらでは芹蕎麦の人気がとみに高い。
昔からメニューには有ったとは思うが、ここ数年のレビューではこれに関するものが多く、信頼のおけるマイフォロアーさんも試して高評価されている。
芹が入るのなら温蕎麦が良いだろうと「せりカレーそば」と迷ったが、無難に「せりかしわそば」を注文。
'根っこ入れますか'の問いにはもちろん同意。
5.6分で登場した大振りの丼の景色は煮込まれた芹と鶏肉が上面を覆い、さらに貝割れ菜と葱がこんもりと盛られている。
箸を差し入れて蕎麦を手繰るにも、少し力が要るくらいの具沢山。
それくらい芹がたっぷりで、通常スーパーなどで売られている1把以上が入っていると思われる量。
シャキシャキとした食感と香り、それに微かな苦みが心地よく、歯応えの良い根っこも実に美味い。
鶏も腿肉の角切りが数多く現れ、蕎麦よりも具材の方が多い印象。
蕎麦は白っぽい細目の機械打ちだが、熱いかけつゆの中でもある程度のコシは残している。
歯応えの良い芹を咀嚼しながら啜れば、かなりのボリュームながらスルスルと入っていく。
つゆは江戸前らしい奥行きは今一つながら芹と鶏の旨味が加わっており、それほど濃くないので最後は丼を傾けて飲み干して完食。
ほうぼうの天ぷらで楽しむ蕎麦前も良かったが、何と言っても「せりかしわそば」の迫力に圧倒された。
芹は以前は季節物だったが最近は年間を通して出しているようで、出盛りの時期は限られるため、毎日大量に消費するにはきちんとした仕入れルートがあるものと思われる。
こちらの名物と呼べる逸品であり、次回は「せりカレーそば」を試してみたい。