天ぷら版カノッサの屈辱! 店主のエンドレスな天ぷら語りがむちゃくちゃ面白い。
店主は元々アマチュア天ぷらマニア。それが天ぷらにハマって、日本中の凄い天ぷら屋を訪問するうちに、名店それぞれのキャラがわかってきて、もはや「天ぷら屋さん図鑑」みたいな本が書けるかもしれない状況。かつ、こちらの店舗で相棒と二人でありとあらゆるネタを毎日毎日揚げ続けたんだとか。なぜオマール海老は天ぷらにしないのか? 伊勢海老はどうか? やってみて初めてわかることもある。
天ぷらとは、油の温度と揚げ方の違いだけで「蒸し」や「焼き」的な調理ができるとプロは皆いう。思いっきり「焼き」に振ったのが人形町の晋作さん。確かに焼き付けたような香ばしさと中のホクホク感の両立が晋作さんの良さのように感じる。天ぷらで使う魚って皮目にヌルヌルがあって、下手な調理だとそのヌルヌルの臭みが抜けず、恐怖の激クサ揚げもの爆弾になる。イタリアンのフリットでそういう事故が多い。だが、うまく「焼き」の技術を使うと、臭みを抜いて旨みのみ残すというマジックのような事ができるんだよねー。メゴチとかギンボとか、天ぷらでだけ活躍する魚っている。それはそういう事情なんだよ。皮目はカリッと香ばしく、中はほっくり蒸したように水分が閉じ込められている。あれが天ぷらの真骨頂なんだ。
こちらはその「焼き」要素を強くしたり、「蒸し」要素を強くしたり、まるでマトリックスの中の座標を選択するかのように調理する店。座標を明確にする事で職人技をブラックボックス化せず、再現性を担保する。たぶん将来の多店舗展開を見据えてやってるんだと思う。
そして、通常は黙って食うのみの我々も、ある種の天ぷら劇場に参加しているような楽しさがあるのが面白い。こちらは通いたいな。
Restaurant name |
CHIKAMINE(CHIKAMINE)
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Categories | Tempura |
Phone number (for reservation and inquiry) |
03-6421-0808 |
Reservation Availability |
Reservations available
※WEB予約のみ |
Address |
東京都渋谷区渋谷3-13-7 五常ビル B1F |
Transportation |
535 meters from Shibuya. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget |
¥15,000~¥19,999 |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥15,000~¥19,999¥3,000~¥3,999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (VISA、AMEX、JCB) Electronic money Not Accepted QR code payment Not Accepted |
Table money/charge |
無し |
Number of seats |
9 Seats ( 全席カウンター) |
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Private dining rooms |
not allowed |
Private use |
not allowed |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking lot |
not allowed |
Space/facilities |
Counter |
Drink |
Japanese sake (Nihonshu) |
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Food |
Particular about vegetable,Particular about fish |
Occasion |
This occasion is recommended by many people. |
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The opening day |
2022.12.6 |
天ぷら店の二極化が凄まじい。予約席は瞬間蒸発。価格も30000〜50000円は当たり前というトップ層の店が結構出てきた一方で、街場の昔ながらのお店は減少の一途。一途な職人さんが「素材をただ揚げてるだけですから」と言って、鮨屋よりは少し安い価格帯で勝負されていた時代を知る身としては色々と思う所はある。
ただ、天ぷらという調理は世界でも珍しい技術だ。揚げる温度を変えるだけで、同じ一つの鍋の中で、焼く、蒸す、煮るという様々な火入れができる。この凄い技術を、カウンターで真近に見られるというエンタメ性も強い。また、今となっては希少な江戸前素材のもっとも旨い食べ方でもある。インフレする世界に棲む、海外のフーディから見たら三万円は安いのかもしれない。
そこでこちらの店は、酒を入れても一人二万円を切る価格で本物の天ぷらを出すという実験を日々行っている画期的なお店なのだ。
おもしろいのはまずよくある江戸前素材は使わないという点。定番素材を使うならば、河岸を牛耳る有力仲買いにイニシアチブを取られ、どうしても高コストになる。惚れた素材を自分の目で選んで買ってくる古いタイプの職人が絶滅し、セリフすら振り付け通りの仲買いの操り人形みたいな調理師が増えてきた昨今、有力仲買いを通さない独自仕入れのため、「えっ、此れ揚げちゃうの!?」というサカナだらけなんだよ、この店は。
それで言うと今日の白眉はホッケとカワハギ。そしてハマグリ。挙げ句の果てはキンキ! 「えっ、此れ揚げちゃうの!?」でしょ? 前回なんてみどりふさあんこう出てきましたから!
ホッケと言っても北海道でこの2週間しか獲れない幻の1.5キロのヤツ。これが旨い。カワハギはね、俺ら釣り人にとっちゃ常識ですから。揚げたら激うまってね。いずれにしてもなんで旬じゃないのに鱚? という話なのだ。河岸に10本しか上がってないような旬じゃないのに状態がいい魚を買っちゃうからバカ高くなるわけなので、ここんちのように天ぷらで旨い魚を日本中で探して直送してもらうというのはおもしろい試みだと思う。漁師のInstagramを必死で探すんだって。江戸前でもサスエ前田の静岡前でもなく、インスタ前だよ。
海苔の天ぷら雲丹キャビアイカ載せ→茶碗蒸し→ニンニクの芽→と来て、次の巻物のようなケンサキイカが秀逸だった。海苔で巻く事でイカ自体は半生に。トロリと旨い。
その他は写真を見てください。