池袋では安心できる蕎麦屋
昼に池袋に出向く用事があり、ランチの場として西武8階のこちらに久々に立ち寄る。
この日は'土用の丑の日'で、このフロアーにも「伊勢定」が入っており、昔から何度か通い決して悪い印象はないが、わざわざ寄ることはしない。
'丑の日の鰻屋'と'大晦日の蕎麦屋'は避けるのが得策である。
老舗の中にはこの日には敢えて閉めている処もあるが、その方が良心的と言える。
11時半前に入店したため、まだ立て込んではいない。
奥の方の2人掛けのテーブルに通された。
品書きを眺めると、ランチ向けのお得なセットが目を引く。
一方「蕎麦屋酒」のための一通りの肴類も用意されているが、あまりゆっくりも出来ないので、酒はビール(スーパードライ中瓶)だけにして、すぐに食事メニューを注文。
選んだのは「海老とアスパラのかき揚げ天せいろ」。
お通しの「蕎麦味噌」を舐めながらビールのグラスを空けるうちに、5.6分でかき揚げの皿と蒸篭に盛られた蕎麦が登場。
かき揚げは大きめに纏められた一個で、角切りの海老と薄切りのアスパラが結構ふんだんに入っている。
食感は硬めで少し揚げ過ぎとも思えるが、その分きちんと中まで火が通っている。
食べやすいように2つにカットされており、中から顔を出す海老の旨味も抜けていない。
塩とレモンは付くが天つゆは無く、蕎麦と一緒のつゆで食べさせるスタイルは好ましい。
蕎麦はやや太めに打たれており、割としっかりと歯応えで野趣を感じさせる点が面白い。
高温多湿のこの時期は蕎麦屋にとって厳しい時期だが、それに合わせてか多少打ち方を変えていると思われる。
こちらは昔から、かなりの大きさの正方形の蒸篭に薄く広げるように盛られており、水切りは良いものの特にこの季節は劣化の速度も早いが、それなりの工夫が施されているように見受ける。
事実、ゆっくり目に食べ進めても、味や食感への遜色はほとんど無かった。
つゆは相変わらずバランスの取れた仕上がり。
かき揚げを浸して旨味を溶け込まし、蕎麦に絡めるように食べることでより一層旨みが増した。
蕎麦湯はさらりとした自然体で、気持ち良く〆られて後味の印象も良好。
池袋には昔からこれぞと言う蕎麦屋は少ないが、その中ではこちらは無難と言える。
値段はやや高めだが、それなりの満足感は得られる。
好みも有ろうが、同じデパートへの出店でも東武の「N坂更科」よりは、格段に良いと思う。
本店に比べれば雰囲気やサービスなどで多少の見劣りは否めないが、安定した実力は備わっている。
宴会での利用だが、味もサービスも案外しっかり(2014年正月)
恒例となっている親戚での新年会。
毎年場所は変わり今回の幹事は私ではなかったが、今年は便の良さも考慮してか期せずしてこちらが選ばれた。
正午開始であるために遅れずに到着しようとエレベーターで上がってきたが、連休中のデパートの食堂街は大変な人出で、人気の回転ずしやには2.30人ほどの待ちが出ている有様。
この店の外にも数人の客がベンチに腰をおろしている。
我々は予約してあったので奥の横長に仕切られた個室スペースを、幼児を含め15人ほどで利用。
料理は3,900円のコースのようで、内容は次の通り。
「八寸風の前菜盛り合わせ」:青菜と茸の白和え・蟹のてまり寿司・豆腐真丈の八幡巻き・銀杏素揚げなど6品で、丁寧な仕事は認められ、盛り付けも洒落ている。
「刺身」:鯛と鮪各2切れずつ。素材は特筆することは無いが、つまやあしらいに気が使われている点は褒められる。
「焼き物」:鱸の杉板焼きで、パリッとした皮目と脂の美味さはなかなか。
「天ぷら」:小振りの海老2尾と舞茸・しし唐と言う内容で、味は普通だが揚げ立てだったのは良かった。
「蕎麦」:「せいろ」か「かけ」が選べるが、全員「せいろ」にした。食感が損なわれることもなく、まずまずの出来に安心。
「甘味」:ブルーベリーのムースが小鉢で供された。
これらが間が空くこともなく、また急かされることもなく、頃合い良く出されたのは好感。
飲み物は各自好みのものを注文したが、サービスに遺漏は無かった。
さらにオプションで「玉子焼き」やらデザートやらを好き勝手に追加したが、慌てることもなく応対ぶりは落ち着いていた。
会費は飲み代を含めて5,000円であったが、実質7,000円くらいだったと思う。
足の出た分は、羽振りの良い幹事が負担してくれたようだ。
この日時でありながら外の喧騒をよそに、案外ゆっくりできたのは有り難かった。
≪2011年7月のレビュー≫
きちんとした蕎麦屋は、デパートの食堂街や繁華街のビルのテナントには出店したがらないもの。
雑多な客層を相手に、中休みなしに斑の無い仕事を維持することは、人手の確保も含めてなかなか難しい。
接待や宴会での利用は見込めず、食事主体の客ばかりでは客単価は頭打ちで、一見賑わっているように見えても、買い物帰りの客を呼び込み回転率を上げるだけの商売では、おざなりの仕事になってしまう虞がある。
こちらが新装なった「池袋西武」に入ったことは、元々の発祥が「練馬 豊玉」であったことに懐かしさを覚える客を当て込む思惑が有るのかも知れないが、固定客をつかむまでには地道な努力が必要であろう。
デパート内の蕎麦屋で成功しているのは「吉祥寺東急」の「まつや」くらいのものだが、あそこも落ち着くまでには相当の期間を要したと聞く。
方々でやたらと見かける「N坂更科」などには、ここを目指して訪れたい気持ちを起こさせる魅力はほとんど無い。
さて先入観ばかりの物言いでは失礼と思い、意を決して平日の11時半ごろに寄ってみた。
夏休みに入っためか、同じフロアーの人気店にはすでに長蛇の待ち客がいる。こちらは外で待っている客はいなかったが、ほぼ満席状態。
2人掛けの卓に案内されたが、全体のスペースの問題なのかテーブルがやけに小さい。食事だけでさっさと帰る客には構わないだろうが、「蕎麦屋酒」でゆっくりという向きにはこれではせせこましい。
味の方はあまり期待しないつもりで、昼限定の「ランチ天せいろ」を注文。
酒は‘おすすめ’から「神亀 ひやおろし」を1杯だけ。陶器のグラスで、量は7勺程度であろうか。
お通しの「蕎麦味噌」がちょこっと付くが、これを舐めながら一息つく。
余り待たされることも無く「天せいろ」が登場。
蕎麦は切りがやや不揃いだが、茹で具合はまずまずで食感は悪くない。盛りは食事のみの目的では少ないだろう。
「つゆ」は中庸な加減で丁寧な仕上がり。
「天ぷら」は素材も出来栄えもいまいちだが、蕎麦屋の仕事としては不満の無い範囲。
その他良かった点は、「天せいろ」が蕎麦のつゆで天ぷらも一緒に食べさせるところ。
最近は「天せいろ」を注文すると、ご丁寧に「天つゆ」を別に添える蕎麦屋があるが、これは「天せいろ」本来の趣旨とはかけ離れた所業。
そもそも「天せいろ」とは「つゆ」を仲立ちにして、蕎麦と天ぷらの相性の良さを楽しむために考案された種物で、別々のつゆで食したいのであれば、はなから「盛りそば」と「天ぷら盛り合わせ」を個々に頼めば良い話である。
中には‘いっしょのつゆでは天ぷらの油が蕎麦つゆに混ざるから嫌だ’などと宣う御仁もいるが、この種物の誕生の意味を理解していない言動である。
「蕎麦湯」がさらりとした正統的なもので、昨今の流行りのドロドロ・ベタベタでなかったことも救い。
接客は結構年配の女性が主体で、浮ついた所が無いのが良かった。
疑問に思ったのは、「薬味」の葱が水に晒した後に堅く絞ってあるため、苦味が出てしまっていたこと。元々この店では江戸前の白葱ではなく青葱を使っていたが、この手法は理解に苦しむ。
オーダーの際‘蕎麦でよろしいでしょうか’と尋ねられた。‘ここは蕎麦屋だろう’と言い返したくなったが、見回すと4人に1人くらいの客は「うどん」を注文している。やはりこれも場所柄か。
席に着くなり「冷たい緑茶」が出された。‘江戸前の蕎麦屋では茶は出さないのが流儀’などということは、最早「神話」に近いようだ。
Restaurant name |
Meigetsuan Ginza Tanakaya
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Categories | Udon (Wheat noodles)、Soba (Buckwheat noodles)、Izakaya (Tavern) |
Phone number (for reservation and inquiry) |
03-6912-5689 |
Reservation Availability |
Reservations available |
Address |
東京都豊島区南池袋1-28-1 西武池袋本店 8F |
Transportation |
池袋西武デパート内 97 meters from Ikebukuro. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥1,000~¥1,999¥2,000~¥2,999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners) Electronic money Accepted QR code payment Accepted |
Table money/charge |
なし |
Number of seats |
50 Seats |
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Private dining rooms |
not allowed |
Private use |
not allowed |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking lot |
OK |
Drink |
Japanese sake (Nihonshu),Japanese spirits (Shochu),Wine |
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Occasion |
With family/children |With friends/colleagues This occasion is recommended by many people. |
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With children |
Kids are welcome |
Website | |
The opening day |
2010.9.7 |
土曜日の夕刻、夜の用事を前にしてちょっと入れて置こうと向かったのは便の良い池袋西武8階のレストラン街。
16時過ぎの半端な時間帯ながら、人気の回転寿司屋の前には10人ほどの待ち客が居る。
こちらは半分くらいのテーブルが塞がっており、雰囲気は落ち着いている。
奥の方の2人掛けの卓を選ぶ。
今回は「角ハイボール」で始める。
肴には焼鳥を頼もうとしたら時間がかかるとのことで「板わさ」をもらう。
メニューには仰々しく「小田原上板かまぼこ」と記されており、実際に出てきた皿には厚めに切られた2枚が半分にカットされた「かんだやぶ」や「まつや」と同じようなスタイル。
質は前述の2軒と同じくらいだが980円の価格はより高額で、山葵も上物では無くはっきり言って高いと思う。
燗酒が欲しくなり「菊正宗」を貰う。
あまりゆっくりもしていられないので早々に蕎麦に移り「鴨せいろ」を注文。
鴨汁には厚からず薄からずの抱き身5切と葱が煮込まれており、三つ葉が色を柚子皮が香りを添えている。
鴨はしっかりした火通りでその分旨味は抽出されており、濃厚な味わいに仕上がっている。
'二八'で打たれた蕎麦は中太に揃っており、香りが有り食感も良好。
どっぷりと沈めることなく軽く浸して啜れば、なかなか美味く燗酒と良く合った。
さすがに蕎麦については安定感がある。
蕎麦湯は定法通りの釜湯のままが提供される。
空の蕎麦猪口と蓮華が添えられているが、どうせ全部飲み干すつもりなので私は鴨汁の小鉢に直接注ぐ。
サラッとした自然体なので気持ちよく伸び、最初はやや味が濃いが少しずつ加えながら味の変化を楽しむ。
味についての満足感はまずまずで、概ねハイレベルな仕事は維持されている。
支払いは4,500円ほどで、このご時世で全体的に値上げされているようだが、今回は以前にも増してCPの悪さを感じてしまった。
同じデパート内の支店でも「銀座松屋」ではそれほど気にならないが、やはり池袋では割高に感じてしまう。