Official information
This restaurant is registered on Tabelog as a corporate member. Business information is released by the staff.
深更でもきちんとした蕎麦屋酒が楽しめる
この日は紀尾井ホールでのコンサート。
その後の食事の場として選んだのは、料理と蕎麦の双方で評判の良いこちらの店。
深夜まで営業していることを知って、伺う機会を狙っていた。
場所は数々の魅力的な店が犇めく荒木町で、車力門通りを進み「キッチンたか」の次の路地を少し奥に入った所。
コンサート終了後、席が空いていることを電話で確認した上で、いつもの連れのご婦人と二人で、四ツ谷駅に向かってブラブラと歩き出す。
地下鉄にひと駅乗っても良かったのだが、名店が軒を並べる「しんみち通り」を抜けて10分ちょっとで到着。
店内はテーブル2卓8席とカウンター6席の、こじんまりとした和食割烹といった趣。
カウンター内で腕を振るう40台と思しきご主人と、主に接客を担当する若い衆の二人で切り盛りしている。
9時半を回った時刻ながら、我々のカウンター2席以外はほぼ満席という盛況ぶりである。
まずは「生ビール」で喉を潤す。
コースも有るが、遅い時刻なのでアラカルトにする。
品数はそれほど多くないが、料理はどれもなかなか魅力的。
選んだものは、次の品々。
「カマボコとチーズの粕漬け」:粕の風味を纏わせたクリームチーズと、板わさの盛り合わせ。
アイデアとセンスの良さが感じられる。
「玉子焼き」:後ろから仕事の様子が眺められるが、手際よく焼きあげる技術は流石。
醤油も砂糖もやや濃いめの江戸前の手法で、熱々を頬張れば思わず顔がほころぶ。
「唐墨」:ソフトに仕上げた、自家製ならではの丁寧な仕事。
味付けも程良く、酒が進む。
「和牛香味焼き」:薄切りをさっと炙り、甘めのタレで仕上げてある。
思ったよりボリュームは無かったが、口に運べばとろけるような食感で、素材の良さが分かる。
添えは「葉山葵の酢醤油漬け」で、味と食感が楽しい。
酒は冷酒を注文。
まず岐阜の「百十郎 赤面」、さらにメニューに載っていないおすすめから宮城の「阿部勘」を一合ずつもらう。
いずれもなかなか結構で、ガラスの酒器も洒落ている。
蕎麦のメニューも絞られており、その中から気になった「湯葉そば」がどんなものかと聴いてみたら、ぶっかけタイプとのことで、これと基本の「せいろ」の一つずつを選択。
湯葉そばは茹で上げた蕎麦の上に、カットされた生湯葉と芽葱や貝割れ・穂紫蘇などが乗り、これに徳利のつゆを客が好みで回し掛ける。
さっぱりとした味わいが、〆として相応しい。
蕎麦は端正に揃っており、香りがある。
細かな星が見えるがざらつくようなことは無く、茹で上げが精妙のため、シャキッとした歯触りと喉越しの良さを兼ね備えた、私にとっては嬉しいタイプ。
つゆも本枯節のすっきりとした出汁が香り、かえしとのバランスも良い。
蕎麦湯も湯桶を揺すれば多少白濁する程度の自然体であるため、気持ちよく〆られることも有りがたい。
2人でシェアしてあっという間に完食してしまい、もう一つ温蕎麦を食べたい気分となった。
しかし普通の蕎麦が品切れとなっており、残っているのは季節の「変わり蕎麦」で、この日は「梅切り」とのこと。
変わり蕎麦でかけの経験は少ないが、'なかなか行けますよ'と言うご主人の言葉に従い頼んでみた。
出て来た「梅切りのかけ」は、三つ葉や紫蘇・柚子を散らした春らしい景色で、つゆの色合いも美しい。
細すぎない打ちのため、熱いつゆの中でもくっきりとした歯応えを保っている。
微かに付いていたピンク色は目立たず、熱によって酸味もほとんど消えているが、ほのかな梅の香りは生きていて、それがつゆの美味さと相俟って、奥ゆかしい味わいを醸し出していた。
料理の腕前やセンスの良さには光るものがあり、きちんとした修業経験が有ることが窺える。
それに劣らず、蕎麦の仕上がりも見事。
つゆの出来や変わり蕎麦を打つことで大体の想像は出来たが、ご主人に'蕎麦はどちらで学ばれたのですか'と聴いてみたら、案の定「一茶庵」という言葉が出て来た。
こちらは、18時から朝の5時までの営業とのこと。
この近辺の飲食店の関係者が仕事終わりに寄るケースも多いらしく、同じプロ相手となれば生半可のレベルで無いのは当然の事。
立て込むとちょっと雰囲気が慌ただしくなるが、そんな中でも筋の通った仕事が貫かれているのは立派。
珍しく深更でも満足度の高い「蕎麦屋酒」が楽しめる店として、貴重な存在と言える。
これからも機会が有れば、寄ってみたい。
Restaurant name |
Shouan
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Categories | Soba、Japanese Cuisine |
Phone number (for reservation and inquiry) |
050-5590-6804 |
Reservation Availability |
Reservations available
ランチは貸切、または要相談でおまかせ料理ご用意致します。 |
Address |
東京都新宿区荒木町3 北島ビル 1F |
Transportation |
4 minutes walk from Yotsuya Sanchome Station 206 meters from Yotsuya Sanchome. |
Opening hours |
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Budget |
¥10,000~¥14,999 |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥10,000~¥14,999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (JCB、AMEX、Diners、VISA、Master) Electronic money Not Accepted QR code payment Not Accepted |
Table money/charge |
お席料として400円頂戴いたします |
Number of seats |
14 Seats ( 8 table seats, 6 counter seats) |
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Maximum party size | 14people(Seating) |
Private dining rooms |
not allowed |
Private use |
OK Up to 20 people |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables We have a smoking area outside. |
Parking lot |
not allowed *Coin parking available nearby |
Space/facilities |
Stylish space,Comfortable space,Counter |
Drink |
Japanese sake (Nihonshu),Japanese spirits (Shochu),Wine,Particular about Japanese sake (Nihonshu),Particular about wine |
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Food |
Particular about vegetable,Particular about fish |
Occasion |
With family/children |With friends/colleagues This occasion is recommended by many people. |
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Location |
Secluded restaurant |
With children |
Kids are welcome |
The opening day |
2014.2.10 |
Phone Number |
03-3356-6626 |
「紀尾井ホール」でのコンサートの後、「まんぼう」も解禁になったため丁度良い機会だと思い予約して向かったのは、久しくご無沙汰しているこちらの蕎麦屋。
こちらの営業時間は宵の口から深夜までで、コロナ禍の影響をもろに被ることとなりどうしているか心配だった。
前回訪れたのは6年前で同じく紀尾井ホールでのコンサートの後だったが、その折は遅い時間帯でも多くの客で賑わっていた記憶が有る。
今回もそれを思い出し、数日前に22時からの予約を入れて終演後に一人で向かう。
新宿通りから荒木町のメインストリートと言える「車力門通り」を右折、「キッチン たか」の先「ちゃわんぶ」の手前の細い路地を入って数軒目に、ひっそりとした佇まいを見せている。
引き戸に手を掛けると客の姿は無く、カウンターの中から'いらっしゃいませ'の声が掛かる。
以前は助手の若い衆が居たが、現在はご主人一人で賄われているようだ。
カウンター中ほどの席に通されるが、私一人のために開けてくれるのは何とも申し訳ないような気がする。
飲み物を訊かれたのでビールを所望。
「プレミアムモルツ 樽生」が脚付きのグラスで出された。
料理はネット予約の後でお店から直接電話が入り、苦手な食材を訊かれ、夜遅いのでそんなにヘビーでない「おまかせコース」を頼んでおいた。
卓上に設えられた盆には小振りの丸い皿が置かれており、その上に小皿に盛られた料理が順次乗せられるスタイル。
次のような少量ながら手の込んだ品々が、食べごろを見計らって出され、その都度ご主人から料理の説明が添えられる。
*「前菜盛合せ」
内容は「自家製カラスミの味噌漬け・鴨ロース・バイ貝煮・鰊山椒炊き・鱈子の辛味和え・玉子焼き・白アスパラガスお浸し・蒲鉾・菜の花」で、いずれも繊細な仕事が施されており、丹念に味わうのは実に楽しい。
特に印象に残るのは、長時間煮含めた鰊、一見メンタイコのようだが良い味加減の鱈子、江戸前伝統のやや甘目の玉子焼き。
*「平貝とミル貝、椎茸の炙り」
平貝は九州、ミル貝は瀬戸内とのことで、焦げ目が付くくらいに炙られており程度の歯応えはあるが、旨味が凝縮して実に美味い。
一緒に原木栽培の肉厚の椎茸が焼かれており、こちらも噛みしめると味が深い。
さっぱりした三杯酢を使ったジュレが掛かっているが、強すぎない酢加減が好ましい。
添えはウルイとフルーツトマトだが、こちらも吟味されていることが判る。
*「金目鯛炙り刺し」
金目鯛は漁獲したその日のうちに船を戻して陸揚げされた伊豆の'日戻り金目'で、やはり通常のものとは鮮度が格段に違うとのこと。
皮目をサッと炙ってから小さ目の平造りにされており、上質のおろし山葵と土佐醤油が添えられている。
一緒に盛られているは金目鯛の生の肝に少量のあん肝を練り合わせたペーストで、これが何とも玄妙な味わい。
これも素材が新鮮で無ければ出来ないことで、これを刺身に合わせてももちろん美味い。
*「平目エンガワ」
この日は特に良い平目が手に入ったそうで、その中でも一番美味いエンガワを特別に出してくれた。
少量だが脂が乗って旨味が濃く、ポン酢と紅葉おろしで頂く。
*「若竹椀」
丁寧に下処理された筍は歯触りを生かす程良い厚みにスライスされ、それに合わせる生若芽もシャキッとした食感が保たれている。
出汁は昆布と鰹だが、素材がシンプルな場合はより濃い出汁を用いるとのこと。
清澄ながら深い味わいに、身体が浄化されるような心持ちになる。
*「珍味二種」
「クリームチーズの粕漬け」は、マッタリした舌触りと濃厚な旨味が秀逸。
「水雲と新生姜の和え物」は在り来たりの酢の物とは異なり、それぞれの食感と持ち味が生きている。
酒についてが後になったが、料理に合わせてご主人にお任せする。
出されたのは「十九」を醸している、長野の「尾澤酒造場」という小さな酒蔵で造られている2銘柄。
「戯画狼」は、疫病退散の願いを込めて名付けられたそうで、辛口のしっかりしたボディが特徴。
「Snowflake おりがらみ」は、フルーティーで爽やかだが後味はすっきり。
いずれも料理の美味さと相俟って良かった。
*「もり蕎麦」
「常陸秋そば」とのことで、微粉に挽いてつなぎなしの十割で打たれている。
少し太めだが香り高く、舌触りの良さとしなやかさを兼ね備えた優れた仕事。
つゆは「一茶庵」の流れが窺える、高潔でバランスの取れた仕上がり。
薬味に辛味大根のおろしが付くのも喜ばしい。
多少量はセーブされていたが、スルスルと完食。
蕎麦湯は別仕立てだが自然体に近く、すっきりと伸びて気持ちよく〆られた。
*「甘酒と白味噌のアイスクリーム」がデザートで出された。
自然の甘さに白味噌が隠し味になった、乙な味と舌触りが印象に残る。
繊細な技とセンスが溢れる料理は、極めて満足度が高い。
単身客にこれだけの品数を揃えていてくれたことに、頭が下がる思いである。
一品ごとの量はそれほどでは無いが、トータルするとかなりのボリューム。
実はコンサート前に軽く入れて置こうと立ち寄ったハンバーガーショップが、思いの他にボリュームがあり、正直言ってそれほどお腹は減っていなかった。
しかし次々と繰り出される目にも舌にも楽しいバラエティに富んだ品々を前にすると、難なく平らげてしまった。
最近は年齢的に夜遅くの食事は控えるように心掛けているが、この日ばかりは多めと見ようと自分に言い聞かせる。
ご主人からは料理だけでなく、色々な話を伺うことが出来た。
やはりこのご時世は深夜営業が主体だったこちらには痛手だったようで、荒木町全体も一時は火が消えたような状態だったそうだ。
マンボウはやっと解除となったが、人々の生活様式が完全に元の戻ることは考えにくく、営業パターンも今まで通りとは行かないと思われる。
勘定は13,000円ほどだったが、充実の内容からすれば極めてリーズナブルである。
支払いはもちろんカードの利用も可能だが、敢えて現金で支払う。
カード利用と現金払いで客への請求額を変えることは規約違反であるが、お店にとってはカードの場合は5%ほどの手数料を取られる分収入が減るわけで、こんなご時世でもあり3万円以下の場合はなるべく現金で払うようにしている。
頑張っている店を応援する気持ちが有るならば、手数料を取られ、しかも入金までに2.3か月を要する手形決済のようなカード利用は、控えるのが思いやりである。
キャッシュレスが主流となる世の動向には逆行しているが、考えて見ればキャッシュレス決済が増えれば利益が目減りする分、店側は一律値上げせざるを得なくなるのは必定。
現金払いしか対応していない店は、むしろ良心的な店と捉えるべきである。
お店側からは中々言い出せないことだが、この点は多くの皆さんに実情を知って頂きたいと思う。