香港楼/田原町、そのスリルとサスペンス
雨上がりの朝。
冷えて密度を高め、且つ湿った空気は、慢性アレルギーで鼻のとおりの悪い私にとって、それはそれで呼吸を楽にしてくれるという恩恵を与えてくれる。
昨日は久しぶりに酒を一滴もやっていない。べつにそれでとりわけ爽やかな朝を迎えることが出来るというわけでもないが、それでもいつもよりは頭が冴えているような気もしないでもない、先ずは気分上々の朝だった
<R1.12.10 田原町>
「香港楼」
花川戸から国際通りを南下してきたが、そろそろ田原町の駅にぶつかってしまいそう。
その大きな交差点の彼岸に何かを期待して何もないことは分かり切っているのだが、それでも冒険してみようという気持ちと、これ以上先に進むなという自分が葛藤し、そして冒険してみたい年頃の私が負けた。
正午の10分ほど手前、交差点手前の中華屋さん。
入店して四人掛けのテーブルは後ろめたいなあと悩んだ私に帳場に着いていた若き彼が無言で腕一本突き出してきて、どうやら一番入口近くの、一人班のような二人掛けの卓へと私を促してくれるのだが、今何故 !? 私だけ一人班にさせられるのか、その意味が分からないようでしかし、心の奥底では既に十分に了解しきっている自分の哀しい性を呪った ……
“マーボー豆腐そば+半チャーハン” @950也。
まずは麻婆ラーメンがやってきたが、これは ! チープに美味い !!
まるで杏仁豆腐の切り方を踏襲したような、菱形の豆腐に目を惹かれる(笑)。このどんぶりには、ありふれた麺と、そしてとてもじゃないけど本格的とはいえない麻婆豆腐の、しかし正々堂々というものがある。
特別偉そうな実績は何もないのだけれど、でも何一つ不正をはたらくことなく生きてきたのだ ! といった感覚に近いこの正々堂々は、今の時代において寧ろとても清々しい。
“本格”を名乗らずに、“麻婆豆腐”を名乗ることさえも避け、“マーボー豆腐そば”と、敢えて胡散臭くしているところには誠意さえ覚えてしまう(笑)。
そして炒飯が舞い下りた。
見るからに上手そうな炒飯は、そして食べるからに(そんな日本語はない !)とても美味かった
麻婆麺という料理は、麻婆豆腐の餡(という言い方はヘンですか ?)がスープに完全に溶けてしまった状態から豆腐をどう扱うのかが、非常に重要な問題となると思う。
ご存じのとおり豆腐というのは、辛さがきつい醤油と合わせたときにそれが中和されるように設計された料理、言い換えて“そのまま飲むわけにはいかない醤油を食べる”為に開発された料理であるので(また適当なことばっかり !)、それがラーメンスープを纏ったところでただ味のない、ゆるい紙粘土となってしまうのである。
(おい ! 豆腐屋さんに謝れ ! ⇒「ごめんなさい !」)
そしてそこから何が出来るかと言えば、もうスープと一緒に豆腐を啜るということだけなのだが、このことが麻婆豆腐ラーメンという料理が抱えた最大の欠陥と言えると思うが、スープのサーフェイスに浮いた辣油をそのまま吸い込んでしまって咽せるという恐怖が口を開けているということに、とりわけ注意を払わなければいけないこと !
―― いや、それはもしかしたら恐怖などではなく、実はそういった矛盾を孕む麻婆豆腐ラーメンだけに与えられた、綿密に計算され尽くされた“スリルとサスペンス”、というものなのかも知れないけど ……
香港楼/thunder gate 麗し
東京は今日もうだるような暑さ。
ここ最近クーラーをつけっ放しで寝ているのだが、睡眠が浅くなるのかちっとも寝た気がしない。けど、クーラーつけないと寝れないので、これは仕方がないこと ……
そしていつもの浅草。
今日はいつものメインストリームを外れて田原町近辺からのアプローチといこうと決める。しかし浅草通りと国際通りのクロスする大きな交差点からさほど歩かないうちに、営業中と札の返った中華屋をみつけ、一旦三歩ほど行き過ぎたんだけど、気になって踵を返してみた次第
<H30.7.11>
「香港楼」
BGM は、遠くでかすかに鳴ってる (笑)。
足を踏み込んで、こちらもギンギンに冷房が効いているのが有り難かった。そこで一寸、一人で四人掛けはなぁと躊躇していると、ホールの男性が女性二人組の隣の二人掛けのテーブルへとサインをくれた。んだけど、あまり嬉しくはなかった (理由はご想像におまかせいたします)。
午後十二時半。
この時間なのに店内がやけに閑散としているなと最初は思ったけれど、食事を終える頃になって奥から続々とお客さんが帰っていったので、案外懐の深いお店なのかも知れない
特別サービスセット
“マーボー豆腐そば + 半チャーハン” @920也。
特別サービスセットなので注文した。
何しろ“特別”なので (ほんとくどいな~、俺)。且つ、麻婆豆腐が不味くてもラーメン、ラーメンが不味くても炒飯、というバックアップがとれているのは安心だと思ったので (おいおいおい !)。
そして案外素早く料理がきて、あっ ! と思い出す。
朝の「ことば検定」での今日の問題が、蓮華の語源だったことを。すくう部分が散った蓮の花びらに似ていることが由来というのがその答えであったが (画像が出たんだけど、実に似ていた) 、それよりも興味深かったことは、蓮華をスプウンのようにふつうに掴むのはマナー違反で、正しくは人差し指を柄のくぼみに入れて、それを中指と親指で挟むように持つのだとのこと。なので情報に左右されやすいミーハーな私は早速それを実践してみるんだけど、スタジオで女子アナが訝っていたような、腕がつっちゃいそう ! なんてことはなかった。
―― ほんとオーヴァだよ、女子アナって人種は。まあ、言わされてるんだろうけど ……
麺は昔懐かしの細ちぢれ麺。
麻婆豆腐は町場の中華屋のやつで、絹ごし豆腐は都度投入しているようである。麻婆豆腐の挽肉のグレードにより、スープに希釈されつつ熱を加えられると肉の臭みを放つやつがあるが、とくに問題は感じなかった。炒飯はぱらぱらでご飯粒どうしの連帯感はなく、味も少々あっさりしすぎかなと思ったけど、麻婆豆腐ラーメンといっしょにやることを考慮してのことだとしたら、それも納得出来なくもない。
涼しい空間で思いっきりくつろぎながら、煙草一本やっつけて去ってゆく男性。
私もそれに続けとばかりに立ち上がり、国際通りの路地裏を雷門に向かって歩き始めた。このあたりはあまりうろつかないエリアだが、何もないのでとくにフレッシュさも感じない (笑)。
広い通りに出て、右手に「並木やぶ」の看板が見え、左手には雷門
餓鬼魂集(たか)ってなお麗し thunder gate
隅田川の涼風ぬける浅草通り
あなたたちの夏が、今年もきれいに咲いたね
Restaurant name |
Honkon Rou(Honkon Rou)
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Categories | Chinese、Dim sum |
Phone number (for reservation and inquiry) |
03-5828-0998 |
Reservation Availability |
Reservations available |
Address |
東京都台東区雷門1-6-7 |
Transportation |
地下鉄銀座線 田原町駅から徒歩1分 113 meters from Tawaramachi. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget |
¥2,000~¥2,999 ~¥999 |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥1,000~¥1,999~¥999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (JCB、AMEX、Diners) Electronic money Not Accepted QR code payment Not Accepted |
Number of seats |
90 Seats ( 1F30席・2F60席・和室・個室あり) |
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Private dining rooms |
OK For 10-20 people |
Private use |
OK For 20-50 people |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking lot |
not allowed |
Space/facilities |
Comfortable space,Wide seat,Tatami seats |
Occasion |
This occasion is recommended by many people. |
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Service |
Extended party hours (more than 2.5 hours) |
薄手のものながら外套を羽織ってきて完全に失敗し、体が汗ばんできた。
重要文化財である浅草寺「二天門」は改修工事も佳境に差し掛かったようで、完全にシートで養生され、その美しい姿を憐れ隠されてしまっている。
仲見世の人通りは、一時期よりは盛り返している感じがし、何より日本人の勢力がぶり返してきているのではなかろうか。これならばもうちょっと年寄りが頑張れば(今のところ若者多し)、日本人だけでいけるんじゃないないのかなぁ ? という気がしないでもないんだけど、彼の国の人たちの今の今の購買力には、これは悲しいかな、日本人では太刀打ちできないんでしょうね ……
そんな物思いに耽っているうちに雷門通りも国際通りに突き当たってしまい、仕方なく進路を南、田原町方面に切り替えた
―― 一言で言ってるけどけっこう歩いてますよ、これ。誰も褒めてくれないけど
<R3.3.16>
「香港楼」
この「香港亭」に似た屋号を持つ中国料理店には、もう何度目か。
Y~ちゃんに言わせると香港亭十条店のおじさんは香港人ではないというが、果たしてこちらのスタッフたちは如何に !
(ど~でもいいわそんなこと ! そんなこといったら北区に多い「越後屋」ってそば屋の人は全員新潟県民なのか ? ってことになるでしょ。まあそれについては、ルーツはざっくりそうらしいけどね)。
先客は近くの現場の人たち4人組。行きつけの鉄板焼き屋の用心棒のおじさんも現場仕事なので、周辺においしいお店の点在する現場にあたると非常に嬉しいらしいが、逆に辺鄙なところにあたってしまうと、泣く泣くコンビニご飯を余儀なくさせらてしまうと聞く。
そういった意味においてはこちらのお店のそれは、現場のお昼ご飯としてはもう最高に近いだろうなと思う。
余談ながら、既にインドカレー屋を避けている私だが、直近、大陸系中華居酒屋も利用する気が失せたのは、これは何故だろう。
確かに、麻婆豆腐なんかでいちいち挽肉を除けながら食べ進むのは地獄絵図だが、これまではぎりぎり我慢できたことが、もうとことん嫌だ ! となったトリガーがきっとどこかにあったはずだと思うのだが、いまいち自覚がない ……
“えびワンタン麺+半チャーハン” @950
えびという言葉に恋をして注文したそのどんぶりの中のワンタンは、、アイボリィと飴色の中間のような色彩で、透明感を纏ってとてつもなく美味そう !! そしてそれが泳ぐどんぶりに張られているのも、限りなく透明で美しいスープ。
或る意味、最近勃興している大陸系の料理とは真逆とも言える、それらとは一線を画したシンプルな美しさを纏う珠玉の料理を目の当たり、早速興奮しながら炒飯にスプウンを入れてみる。
それは比較的しっかり味の炒飯で、フルサイズやれといわれたらどうか知らないが、このくらいの量だと十分に、美味しいという印象の中で食べ切ることが出来る。
そして穢れなきワンタン麺も、昭和の町中華の庶民的雰囲気に包まれながら、それでも気持ち凛とした上品さを醸す調子のよいもの。
興味本位で懐中の一億五千万年前の塩を試してしまったが、塩本来のうま味が、このどんぶりの素性の良さをさらに引き出しているように思えた
隣についた女性が私の迷っていたエビチリと、さらに水餃子を同時注文したよう。
けっこう女性でも召し上がるものなんだなぁと感心しつつ、820円でちゃんとしたエビが来るものなら私も注文したいけど、まず無理だろう、なんて先入観に縛られてしまうのが私の悪い癖 ……
おもむろにそこかしこで沸き起こる、お茶お代わりのコール。
冷たいジャスミンティーというのが邪道かどうかを私は知らないが、私だって入店直後の汗ばんだ体にこの冷たいお茶を浸透させてとても清々しい気分が得られたので、これから高温多湿となってくる日本の気候には、とりわけマッチするものではなかろうか
最後にはなりふり構わず、蓮華を捨てて直にどんぶりからおつゆを啜った。そしたら蓮華を使って得られたそれとはまた別の、いや、また格別の ! それでは皆様ご唱和ください !
「ラーメンはねぇ、おつゆがうまいんですよ ♪」
世の中には、どんぶりから直に啜ることによってしか享受できないものがある。そして ……
―― こういうものはねぇ、うまいだけじゃいけないんだ。安くなきゃ