"擬制(もどき)羊肝(ひつじのきも)"+"擬制(もどき)羊羹(ひつじにくあつもの)肉凍(にこゞり)"ーーー→混淆(まぜこぜ)に
向島(むかふじま)『青柳 正家』:
宮家(みやけ)より屋號(やがう)に「正家」の二字(ふたもじ)を下賜(たまは)り、
多惶(おそれおほく)も、菊花紋(きくのもん)まで、、。
東都(えど)の餜子舗(くわしや)としては由緒(すぢめ)あり。
淺草松屋百貨店(あさくさまつや)にも肆(いちくら)存在(あり)!
と發見(みいだせ)しは今夏(このなつ)のこと。
沽(かひもとめ)たるは餈餜子(もちぐわし)二品(ふたしな):
"杏餠(あんずもち)=杏餈(からもゝもち)"に"栗餠(くりもち)=栗餈(くりもち)"。
これがなかなかに甘美(あぢよ)く、
肆(いちくら)にて餜子(くわし)鬻(う)る娘(むすめ)も手弱女(たをやめ)。
かくて、久方(ひさかた)ぶり、淺草松屋百貨店(あさくさまつや)に、、。
かの"羊肝餠(やうかんもち)"を前(まへ)に煩惱(おもひなや)むこと霎時(しばし)。
正德二甲辰歳(しやうとくにかのえたつどし、=1712)頃(ごろ)、
"倭漢三才圖繪(わかんさんさいづゑ)"、コマ番號【911/921】には、
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■羊羹(やうかん):
按(あんずるに)、"羊羹餠"造法は、
赤豆(あづき)を煮て皮を去り、
水を絞りて、粉を用ゐて麪(こむぎ)の粉(こ)を和(なご)ませ、
沙糖の煮汁を以て洩之(これをこね)、甑(こしき)に蒸す。
色、黑者(くろからんとは)要する。
玉沙糖を用ふ。
或は、鍋底(なべすみ)に入也。
味甘美を賞し、「羊羹」と曰ふ乎(か)?
"玉燭寶典"に、"羊肝餠"の名有り。
卽、此類也。
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圖繪(ゑ)には"羊肝餠(やうかんもち)"とあり、
"羊羹(やうかん)"="羊肝餠(やうかんもち)"と爲(な)す田樂(でんがく)。
他方(かたや)、"倭漢三才圖繪(わかんさんさいづゑ)"を泝(さかのぼ)ること、
幾百年(いくもゝとせ)"庭訓往來(ていきんわうらい)"には、
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"點心"者(てんしんは)、
水纖(すいせん)、温糟(うんさう)、鶏鼈羹(けいべつかん)、羊羹(やうかん)、
豬羹(ちよかん)、驢膓羹(ろちやうかん)、笋羊羹(しゆんやうかん)、
砂糖羊羹(さたうやうかん)、温飩(うんどん)、饅頭(まんぢう)、素麪(さうめん)、
基子麪(きしめん)、卷餠(けんびん)。
"菓子"者(くわしは)、
柚(ゆ)、柑々子(かうかうじ)、橘(たちばな)、熟瓜(じゆくゝわ)、
澤茄子(さはなすび)等(とう)、可隨時景物也(ときのけいぶにしはがふべきなり)。
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さらに、
"尺素往來(せきそわうらい)"、"庖丁聞書(はうちやうきゝがき)"を引用(ひき)つゝ、
文政十三庚寅歳 (ぶんせいじふさんかのえとらどし、=1830) 、
"嬉遊笑覽(きいうせうらん)には、
コマ番號【237/359】:
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「"尺素往來"にも、、(畧)、、
禪宗行はれて、是等の食物の法も傳へたるなるべし。
但、もとは、魚獸の肉を用ゐしを、僧家には是を除きて製法をかへ、
又、こゝの人の口にかなふ樣になし、
又は、其物の形色の似たるによりて名ある物も有べし。
後には、名のみ同くて、物のいたく替れるも有とみゆ。
今の"羊羹"抔(など)これなり。」
「"庖丁聞書"に魚羹とは、かんを魚の形にして盛、龜足指す也、
惣じて羹は、四十八かんの拵や有、といへ共、其多は其形によりて名有も云々」
「"鼈羹"は、摺立の山の芋一升に、砂糖一斤、赤小豆のこし粉一升、小麥の粉五勺、
煉合せ蒸て、龜甲の形に切なり。」
コマ番號【245/359】:
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「今の羊羹は昔の法にあらず。
明人は"豆沙糕"といふとなり。
[宋書]に....とあるは、羊肉のあつものなり。
菓子の"羊羹"は、"羊肝羹"なり。
求肥も、もと"牛皮糖"なると同じ。
獸を不潔とする故、これらの字を書改めし、ならめど
羊字をかへさるは、いかゞ?
又、"羹"は"糕"と同音なる故、"糕"といふべきものを誤りて"羹"とかけり。」
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明治(めいじ)~大正期(たいしやうき)、
"續群書類從(ぞくゞんしよるいじゆう)"中(のなかの)、
"食物服用之卷(しよくもつふくやうのまき)" 、駒番號【166/268】にも、
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一、"龜羹"は、あし、て、尾、くびをのこし、かふよりくふ也。
一、"豬羹"は、くびよりくふ也。
一、"鶏卵羹"は、ふとき方よりくふ也。
一、"海老羹"は、ひげを殘しくふ也。
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とあり、
往古(いにしへ)の"羊羹(やうかん)"とは、
羊羹(ひつじにくのあつもの、あたゝかきしる)の肉凍(にこゞり)を象(かたど)り、
素食(しやうじん)にて摸擬(まね)たるは明白(あきらか)。
漢土(もろこし)に「牛脾羊肝(ぎうひやうかん)」、
i.e.,(すなはち)、
牛(うし)の脾臟(ひざう)、羊(ひつじ)の肝臟(かんのざう)を、
歎賞(おほきにほむ)る成語(ことば)ありとか、、。 ※要確認(しらぶるべし)
"羊羹(やうかん)"とは另(べつ)に、
"羊肝餠(やうかんもち)"("羊肝餈(やうかんもち)"?)、
すなはち、羊肝臟(ひつじのきも)を象(かたど)りたる餈(もち)があり、
混淆(まざあはさり)て、名(な)のみ"羊羹(やうかん)"に、、。※要調査
本來(もともと)の"羊羹(やうかん)"、
i.e.,(すなはち)、羊羹(ひつじにくのあたゝかきしる)の肉凍(にこゞり)は、
旣(すで)に絶滅(ほろびぬ)、、、、。
と邯鄲之夢(とりとめもなく、あれやこれやとはけのわからぬことをおもふ)。
赤貧如洗(あらふがごとくまづし)き老翁(おきな)には、
「高嶺(たかね)の葡萄(えびかづら)」
と、向諦(あきらめ)んとする折(をり)しも、
半棹(はんさを)の"栗羊羹(くりやうかん)=栗羊肝餠(くりやうかんもち)"!
かくて、清水寺舞臺(きよぶた)、瘡蓋(かさぶた)、團栗豕(どんぐりぶた)、
"栗羊羹(くりやうかん)=栗羊肝餠(くりやうかんもち)"半棹(はんさを)、
"杏餠(あんずもち)=杏餈(からもゝもち)"に"栗餠(くりもち)=栗餈(くりもち)"。
對價(あたひ)、二千二百八十九圓也(にせんにひやくはちじふきふゑんなり)。
扨(さて)、"栗羊羹(くりやうかん)=栗羊肝餠(くりやうかんもち)":
その姿(すがた)、
慥(たしか)に、"羊羹(ひつじにくあつもの)が肉凍(にこゞり)"と云ふより、
"羊肝(ひつじのきも)"に彷彿(さもにたり)。
小人(それがし)、
幼少期(いとけなきみぎり)以來(よりこのかた)、
この類(たぐひ)の餜子(くわし)・茶請(ちやうけ)は、
かの『とらや』を含(ふく)めて得手(えて)とせず。
年齢(とし)の所爲(なせるわざ)歟(か)?
南蠻紅毛(あちら)の餜子(くわし)・茶請(ちやうけ)より、
東瀛(ひのもと)の餜子(くわし)・茶請(ちやうけ)に惹(ひ)かれ、
今(いま)や、"羊羹(やうかん)=羊肝餠(やうかんもち)"にも色目遣(いろめづか)ひ。
"栗羊羹(くりやうかん)=栗羊肝餠(くりやうかんもち)"を一刀兩斷(たちきり)、
熟々(つらつら)、その味(あぢ)を吟(あらた)むるに、
栗(くり)も、荳沙(あづきあん)も、茗茶(ちや)に最適(よくあふ)。
實(げ)に、「梅(むめ)に鶯(うぐひす)」、「唐獅子(からじゝ)に牡丹(ぼたん)」。
次(つぎ)に控(ひか)へし、
"杏餠(あんずもち)=杏餈(からもゝもち)"に"栗餠(くりもち)=栗餈(くりもち)":
前囘同樣(まへにおなじく)、頗(すこぶ)る美味也(よきあぢ)。
因(ちな)みに、"倭漢三才圖繪(わかんさんさいづゑ)"、コマ番號【901/921】に、
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■餈(もち) :
俗云(ぞくにいふ)、"もちひ"。
言(ことば)は、黏(ねば)り滑(なめ)らかるなること"黐(もち)"の如し。
故に、"黐飯(もちいひ)"と爲乎(なすか)?
今、俗に多用"餠"字。
"餠"は、乃ち、雜穀潯之粉(ざつこくふちのこ)を蒸して撏(こぬる)也。
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
Restaurant name |
Kasyou Aoyagi Seike
|
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Categories | Japanese sweets |
Phone number (for reservation and inquiry) |
03-3842-1111 |
Reservation Availability |
Reservations available |
Address |
東京都台東区花川戸1-4-1 松屋浅草 1F |
Transportation |
186 meters from Asakusa. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget(Aggregate of reviews) |
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Method of payment |
Electronic money Accepted |
Non-smoking/smoking |
− |
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Parking lot |
OK |
Occasion |
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Website |
漸(やうや)う水温(みづぬる)みかけたるこの頃(ごろ)。
梅花(むめ)向散(ちりな)んとし、
軈(やが)ては櫻花(さくら)も綻(ほころ)ぶ氣温(あたゝかさ)。
甘(あま)きもの販(う)る肆(いちくら)には旣(すで)に"さくらもち"の姿(すがた)。
周知(あまねくしら)るゝがごとく、"さくらもち"に二種(ふたくさ)あり。
一(ひとつ)は"長命寺(ちやうめいじ)"、いま一(ひとつ)は"道明寺(だうみやうじ)"。
東國(ひがし)"長命寺(ちやうめいじ)"は麪(むぎのこ)、
西國(にし)の"道明寺(だうみやうじ)"は糯稻 (もちごめ)と云ふ相違點(たがひ)。
"長命寺(ちやうめいじ)"も現今(いま)でこそ麪(むぎのこ)なれど、
往古(そのかみ)は粳米(うるのこめ)、そこから葛粉(くづこ)と化(な)り、
さらに、麪(むぎのこ)へと變成(かはりぬ)とぞ。
文政十三年(=1830)、【嬉遊照覽】には、
【嬉遊照覽 卷十上】 (241/359)
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「近年、隅田川"長命寺"内にて櫻の葉を貯へ置て、"櫻餠"とて柏餠のやうに葛粉にて作る。
始めは粳米にて製りしが、やがて、かくかへたり。 」
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同(おな)じ【嬉遊照覽】には"道明寺(だうみやうじ)"の説明(はなし)として、
【嬉遊照覽 卷十上】 (238/359)
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「燒米かれ飯の上品なるを河内國"道明寺"にて製する故、
"道明寺"といへば、そのことゝなる。」
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"畫蛇添足(だそく)"ながら、かゝる記述(もの)も、、。
【嬉遊照覽 卷十上】 (238/359)
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「中頃の名に隨へば、"蒸菓子"はみな"點心(てんしん)"に屬し、
"干菓子"は"茶子(ちやのこ)"といふべけれど、そのかみは、さにあらず。
なへて"くだもの"といへり。」
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室町後期(むろまちのみよのなかばよりのち)【尺素往來(せきそわうらい)】には、
"點心(てんしん)"、"茶子(ちやのこ)の具體例(ぐたいれい)として、
【尺素往來】(246/412)
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「"點心(てんしん)"者、
先、"集香湯"を點(たて)、而後、碎蟾糟、雞鮮羹、豬羹、驢膓羹、笋羊羹、海老羹、
白魚羹、寸金羹、月鼠羹、雲鱣羹、葚鼈羹、三峯尖、碁子麪、乳餠、卷餠、水晶包子、
砂糖饅頭、<食半><食當>、饂飩、等。」
「"茶子(ちやのこ)"者、
荔枝、龍眼、胡桃、榧實、榛(はしばみ)、栗子(くり)、梧桐子(きりのみ)、
烏芋(くわゐ)、海苔(あまのり)、結昆布、蕷子(ぬかご)、刺薢菱(さしところ)、
菱、串柿、挫栗(かちぐり)、干松茸、干竹笋、乾胡盧、乾蘿蔔、炒附、引干、
苔大菽(こけまめ)、興米(おこしごめ)、炙麩(あぶりふ)、油物、等。」
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閑話休題(それはさておき)當家(こちら)の"さくら餠":
仔細(つぶさ)にその成分表示(なかみ)を檢(あらた)むるに、
皮(かは)には、
"麪(むぎのこ)"、"羽二重粉(はぶたへこ)"、"上南粉(じやうなんこ)"歟(か)?
荳沙(あづきあん)は漉餡(こしあん)。
皮(かは)にてこれを袱紗包(ふくさづゝみ)とし、櫻葉(さくらのは)ごと啖(くら)ふ。
典型的(よくある)東都(えど)の"長命寺(ちやうめいじ)"とも、
華洛(みやこ)の"道明寺(だうみやうじ)"とも異(こと)なる貨物(しろもの)。
向島(むかふじま)『青柳正家』にても啖之(これをくら)ひし例(ためし)あり。
その味(あぢはひ)、不錯(あしからず)!
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)、三倉佳奈(みくらかな)。
「カナカナ」と、晝(ひる)なほ五月蠅(うるさ)き甲斐(かひ)の茅蜩(せみ)。
扨(さて)、"わらび餠":
およそ、巷(ちまた)に溢(あふ)るゝ"わらびもち"を嘯(うた)ふもの、
蕨粉(わらびこ)のみ用(つか)ふは稀有(まれ)。
「顏色(いろ)白(しろ)きものが過半(あらかた)」と斷言(いひきる)ほかなし。
倩(つらつら)その斷面(きりくち)を觀察(うかゞ)ふに、
世(よ)の"わらびもち"とは異(こと)なり、は顏色(いろ)尤(いと)玄(くろ)く、
"蕨粉(わらびのこ)"を想像(おもは)す。
その眞相(ことのよし)、"荅(あづき)"+"蕨粉(わらびこ)"の合力(あはせわざ)?
餡(あん)の成分表示(なかみ)は、
"荅(あづき)">"餹霜(しろざたう)">"蕨粉(わらびのこ)">
"寒天(かんざらしのところてん)">"鹽(しほ)"、と云ふふもの。
i.e.,(すなはち)、"蕨粉(わらびのこ)"より"荅(あづき)"が多量(おほめ)。
薇蕨粉(わらび)の(こ)ばかりで"蕨餈(わらびもち)"となると、
その潰(つひえ)、幾許(いくばく)ぞ?
堅香子(かたかご、かたくり)ばかりの"淀粉(かたくりこ)"なきに同樣(おなじ)。
現今(いま)は馬鈴薯(じやがたらいも)より製造(つく)るが常道(つね)。
原來(もとより)、
薇蕨(わらび)の粉(こ)ばかりにて製造(つく)るもの。
その證左(あかし)として、
文政二(1819)年【餠菓子即席/手製集】には如下(つぎのとほり)。
【餠菓子即席/手製集】(18~19/36)
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"蕨餠":
「"わらびの粉"一升、水二升入、よくとき、水にして、"すいのう"にてこし、
火にかけてねり、是に砂糖かけて食すべし。 」
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4