親に放置された記憶 : Tsuruya Seika

幼少の頃に住んでいた八王子は、以前は百貨店が複数あり、週末ともなれば、家族揃って買物に出かけるのが常であった。

犬のリードをつけたいくらい活発だったであろう私達兄弟は、たぶん若い両親からしてみれば、買物の際の邪魔者だったかもしれない。

そんな時は、都饅頭を一つ買い与えられ、自動の饅頭製造機の前に置き去りにされた。
買物が済むまで、飽きずに、金型が回って製造する光景を見ているからだ。

今となっては、すぐ交番のお巡りさんに通報されそうだが、買物を満喫したい親にしてみれば、暫く待たせて迎えに行く優しい笑顔を植え付けて、私達兄弟を手懐けようとしていたかもしれない。
そんな昭和の時代は、皆、寛容であったことを思い出す。

都饅頭は、白餡の今川焼きのような、金型で焼いた菓子だ。小ぶり故、小さい子でも持てるサイズ。
餡もほんのりと甘い程度で、大人でも、飽きずに何個も食べられてしまう。

今日は、30個買って、夜帰宅してキッチンに置いておいたが、家人に摘み食いされたのか、朝が来る前に、もう無い。
親子三代で、累計何個食べているのだろう。
恐らく私の子供達も、八王子に寄った際には買い続けるに違いない。私的な、ロングライフデザイン賞だ。

バラ売り可。30個売りで、¥1.35k。
となると、個あたり45円ということになる。

余談だが、この近くのラーメン屋に、やはり自動で回って茹でる、オートボイル式なるラーメン製造機を置いている古い店がある。
八王子は、町工場が作りそうな、カラクリ物の製造職人が多かったのだろうか。詳しくは分からない。