シンプルに凝縮された斬新な才気、大胆かつ繊細な富山イタリアン
ひまわり食堂は、富山の食材を自由な発想で駆使し、力強さと繊細さを兼ね備えた、鮮明で驚きのある独創的な料理を生み出すイタリアンの名店。変化に富み、きょうはどんな料理なのか、次のお皿は何が出てくるのかと、心楽しい期待を膨らませてくれる。
【料理、味】
9月に訪店したときは、遊び心あふれるフュージョンだったが、本日の料理は、かなり真っ向勝負の正統派富山イタリアン。服装も、前回はオリオンビールのTシャツ姿で、きょうは、ちゃんとした白い調理服に黒いエプロン姿だった。
この店の料理の特徴の1つは、見た目のシンプルさだ。お皿の真ん中だけ使い、丸か四角かセルクルにほぼ収まる。あれこれ1皿に盛り込まず、飾りの花やソースを散りばめたりもしない。一見、素っ気なく物足りない印象も受ける。が、そこにシェフの研ぎ澄まされた斬新な才気と感性と技が凝縮している。
コースは、9,000円、13,000円(税込み)の2種類(別途、席料700円)。9月には11,000円だったものが13,000円にグレートアップした。今回は13,000円を選択。隣りの客の9,000円と見比べたら、共通するものも結構あるが、13,000円の方が、田中シェフの独創性と富山の食材のよさをより存分に味わえそうだ。
1.毛ガニとカブのスフォルマート
スフォルマートは、イタリア風の茶碗蒸しで、スプーンでいただく。
やさしく淡い茶碗蒸し風の味と食感で、オムレツの中の玉葱のようにカブを細くスライスしたものが入っている。カニはしっとりしてやさしい甘みがあり、鮮度のよさも感じられる。一番下には、ゴーヤのような風味のカブの苦みと甘みにオリーブオイルを合わせたスープをはっている。
2.アオリイカと大根、春菊の前菜
緑色の大根は、きしめんのようにスライスして巻き、青竹のように並べ、その中に、イカそうめんのように細切りにしたアオリイカを、ピューレ状の春菊をからめて詰めた。大根のシャキシャキした歯ごたえと、イカのとろみと弾力のある歯ごたえ、カイワレの辛味と春菊の風味などが入り乱れる。見た目も斬新で美しい。
◇パン
外側も中の生地ももっちりしていて、熱々で甘みがあり、小ぶりながらずっしりした重量感がある。
3.タコと里イモの春巻き
ゆでダコと上市の里イモ、ネギを入れて揚げた春巻き。ソースはバーベキューソース。
春巻きの断面は、たこ焼き風で、里イモのクリームの中にぷるぷるに柔らかいタコの身と繊維状の細切りでしんなりしたネギが、パリパリの皮に包まれている。BBQソースは、やさしい甘みとカドのないマイルドな酸味で、力強いがくどくない、さっぱりした味わい。
4.カツオのたたき、赤タマネギのソテー添え
富山湾の迷いガツオを軽くワラで炙ったもので、火の通った部分は、燻した香りと風味がしっかり入って、香ばしく力強い旨味を感じる。半生の赤い身の部分は、口当たりが滑らかでみずみずしく、赤身のしっかりした味わいがある。シャキっとして少し酸味を加えた赤タマネギが、カツオの旨味を引き立てる。一般的なカツオのたたきのイメージを超えて、マグロにも負けないうまさだ。
5.白トリュフのリゾット
リゾットの米は、ピエモンテのリゾット米。日本の普通の米よりも2回りぐらい大粒で、粘りがなく水分が少なく、粉っぽいアルデンテの味と食感。大粒だから一粒一粒をかんでいる感覚で、トリュフとバターの香りと濃厚な旨味がしみわたっている。
6.ジャガイモのガレット、平目と香草のタルタル
富山県の山田村で作っている「とうや」のジャガイモを糸状に細切りして、ヒラメを包んで焼いた。外側のジャガイモはサクサクで甘みがあり、中のヒラメはやわらかくで、やさしく淡泊な味わい。香草のタルタルは、甘くとろみのあるソースの中に、細かく刻んだ大根のぬか漬けが入っていて、「たくあん」のようなこりこりの歯ごたえが楽しい。
7.池多産のジャージー牛
富山市の池多ファームで育ったジャージー牛のサーロイン。
岩の塊のような迫力ある見た目とサイズ。サーロインだが脂身はほとんどなく、きれいな赤身。柔らかいがしっかりした肉質で、ナイフを入れると、つぶれずにスっときれいに切れる。池多の牛らしく、赤身の旨味と肉の力強さを味わえる。ジューシーという感じでなくても、かんでいると、きれいに溶けてなくなっていく。
8.キジのスープのパスタ
立山町で獲れたキジからとったスープのパスタ。
キジのスープは、黄色みがかっていて、ニワトリとは違う、どこか野性的で少しクセのある濃厚な脂を感じた。麺は、キジのスープの力強さに合わせるように、もちもちの中太で、噛むのに力がいる固めのアルデンテ。麺とスープ以外に、具材は何もない。キジをしっかり味わうための、大胆な演出だ。
ちなみに、富山市内には野生のキジが住宅地近辺に棲息していて、去年、私の家の庭にも、赤青緑の3色の彩りが美しいオスのキジが2度飛来し、ニワトリみたいに地面をつついてエサを捜していました。
9.デザート(ティラミス)
甘さ控えめでなめらかなクリームに、土台のスポンジに染みこんだエスプレッソと表面のココアパウダーのほろ苦さが調和して、後味のすっきりしたティラミスになっている。
10.飲み物
エスプレッソ、アメリカーノ、アールグレイ、カモミールから選択。
アルコール、ノンアルコール類は、ビール700円、ジュース類600円、カクテル800円~、ワイン900円~など、全般に良心的な価格。
【雰囲気など】
店の造りは、間口が狭くて奥行きが長く、厨房の面積に対して客席がえらく狭い。狭いから、隣りの客の会話が全部聞こえる。わりとカジュアルな感じだが、それなりにしっとりした雰囲気もある。
シェフはかなり変わった人のようで、客と接することはほぼない。料理の助手の若い女性スタッフは非常に感じがよい。
【CP】
2,000円値上がりしたが、依然としてコストパフォーマンスはよく、満足できる。
【総合評価】
富山の食材を生かし、シンプルに研ぎ澄まされた料理は、独創的で自在なインスピレーションにあふれる。それがリーズナブルに楽しめ、富山を代表する名店の1つとして、県外の人にもお薦めできる。
前回は、首都圏などで緊急事態宣言、富山でもまん延防止措置適用中で、客はカウンターとテーブルに1組ずつでしんみりしていたが、本日は満席で、活気とにぎわいが戻っていた。イタリアンのお店は、やはりこうでないと。
研ぎ澄まされた鮮明で独創的なイタリアン、天衣無縫のフュージョン
ひまわり食堂は、富山を代表するイタリアンの名店であり、言わずと知れた人気・実力店だ。富山の食材も駆使し、イタリアンの枠組みを超えた自由な発想で、力強さと繊細さを兼ね備えた、鮮明で驚きのある独創的な料理を生み出している。イタリアンには厳しいとされるミシュランで、2021年に1つ星を獲得、「ゴ・エ・ミヨ2021」でも3トックを獲得した。
【料理、味】
料理は、おまかせのコースのみで、9,000円と11,000円の2種類(税込み。別途サービス料に代わりに席料700円を加算)。他のレビュアーや金沢のフードアナリストのあすかさんのレポなどを見ると、メニューは変幻自在に変わり、訪れるたびに新鮮な驚きに出会えるようだ。研ぎ澄まされて一見シンプルに見える料理でも、手の込んだ多くの作業を施しているのが垣間見える。
今回は、11,000円のコース。富山の魚介や牛肉を使い、さらにアジア(グリーンカレー)、沖縄(ゴーヤ)、日本の秋(キノコのスープ)、大阪(たこ焼き)、フレンチのテイストも盛り込んで、夏の名残と秋の始まりを感じさせる自由自在なフュージョンのイタリアンだ。(シェフは、沖縄のオリオンビールのTシャツを来て料理をしていた)
1.青バイとマコモダケ
青バイ貝、マコモダケ、エノキダケを梅肉のソースで和えたもの。甘唐辛子のパウダーをまぶした。
3種類の異なる歯ごたえと梅肉の甘酸っぱいさわやかさが印象的。
◇パン 非常にもっちりとした生地で、柔らかく温かい。
2.炙りアジ
炙ったアジの下にハッシュドポテトを敷き、スパイスをきかせたタマネギのソテーを挟んだ。
一番上には、細かく刻んだトマトと酸味のある白いマヨネーズ的なソースと香草が乗っている。アジは、半分透き通るようにきれいな断面で、炙った香ばしさと複雑な塩味があり、鮮度感のある繊細な口当たり。ハッシュドポテトは、外はカリっとして、中はしっとりして甘い。これに、タマネギの歯ごたえ、香草の香り、ソースの酸味などが重なる。全部いっしょに口に入れると、重層的な味わいになっている。
3.オムレツ
オムレツは、発酵トマトに、ゴーヤのアンチョビソテーとともに。
オムレツは、明るくきれいな色合いで、ふんわりきめ細かな口当たり。やさしい甘みにほんのり塩味とオリーブオイルが絡む。雑味のないシンプルでやさしい味わいに、ゴーヤの苦みがアクセントになっている。
4.焼きナスと牛肉のグリーンカレー、ミルフィーユ仕立て
焼きナスは、焦げ目がなくさっぱりした味わい。薄くスライスした牛肉は、しっとして柔らかく、燻製のような風味を感じる。グリーンカレーは、よくあるココナツベースではなく、ほぼパクチーでできている。鮮やかな色とパクチーの刺激のある味と香りがストレートに出ているが、これがパクチーかと思うほど、意外と食べやすい。
5.きのこのスープ
きのこは、天然のマイタケとハナイグチの2種類。
余計なものを加えず、きのこのエッセンスを抽出した味わい深く上品かつ力強いスープ。マツタケの土瓶蒸しのような、和を感じる一品。ハナイグチは、ナメコのようなヌメリとシャクシャク、シコシコした食感。
6.タコボール
タコ焼きをイメージしたもの。中には、ゆでダコと、タコのゆで汁とサトイモを混ぜたものが入っている。トマトベースで醤油の入ったバーベキューソースでいただく。
カリっと揚げた中には、やわらかいタコがごろごろ入っている。たこ焼きのタコよりも小さく食べやすく刻んであり、タコの旨味とサトイモの甘みがうまく溶け合う。ソースは、トマトの旨味と醤油ベースのソースとがバランスよく合わさって、しっかりした旨味がありながら、くどくなくさわやかだ。タコ焼きが、こんなにおいしくなるのかという一品。
7.池多牛のランプ肉の炭火焼き
かなり迫力のあるボリュームがすごい。非常に柔らかく、断面の色合いがきれいだ。ぷるぷるしているが、つぶれずナイフできれいに切れる。全体の半分ぐらいは、弾力があり、噛んでいると疲れるぐらい肉質がしっかりしていて、残り半分は、池多牛らしいジューシーな口溶けだった。
8.パスタ: タチウオと発酵パプリカのスパゲティー
麺の分量は、普通は40グラムで、お腹の具合に応じて調整してくれる。硬めのゆで加減で、小麦粉を感じるしっかりした歯ごたえ。タチウオは非常に柔らかく口の中で溶けるから、パスタとソースと具材の旨味が、口の中で一体化する感じになる。
9.デザート: 黒糖のクレーム・ド・ブリュレ
キャラメリゼした表面を破ると、普通のカスタードよりもコーヒー色がかったクリームが現われる。黒糖風味のデザートは、ともするとくどい感じになりやすいが、このクレームブリュレはやさしい黒糖風味で、しっかりした甘さだが、くどくなく、大人の味わいを感じた。
10.飲み物
エスプレッソ、アメリカーノ、カモミールなど4種類から選択。
なお、アルコール、ノンアルコール類は、全体的にかなりリーズナブル。ノンアルコールのスパークリングワインは、355mlの瓶が1,300円(税サ込み)で、これ1つでグラス3杯飲めた。
【雰囲気】
富山市中心繁華街と住宅街との境目の通りに面して、間口が狭く奥行きが深い造りになっている。入り口を入ると、すぐ右手にカウンター4席があり、奥に向かって厨房が続き、厨房に面した狭い通路を抜けた奥に、テーブル席のダイニングがある。カウンター席は、目の前がついたてと食器類で遮られ、座ったままでは厨房の中はよく見えないし、厨房との会話は全くできない。狭くてやや閉鎖的な空間で、物理的に、あまり居心地はよくないが、食事に集中できる(東京・御徒町のとんかつ・洋食の名店「ぽん太本家」のカウンターも、配置がこれに似ている)。
【サービス】
店の方はすごく丁寧で温かみがあって感じがよく、気持ちよく食事ができた。
【CP】
コース料理は、9,000円と11,000円(税込み)で別途席料が700円。名店の料理が、この値段で楽しめるのは非常にありがたい。
【総合評価】
イタリアンの枠組みを超えて、インスピレーション豊かで、富山の食材も取り入れたハイレベルな料理が、リーズナブルに楽しめ、サービスも気持ちよく、満足度が高い。県外の人にもお薦めできる名店だ。
【参考情報】
ひまわり食堂という店の名前は、シェフがイタリア修行中にサルディニア島で見たひまわり畑に由来するそうだが、修行中の経験から、店名は短くてわかりやすい方がいいと思ったというのも理由の1つとのこと。芸能界の元グルメ王W.Kも来店している。
Restaurant name |
移転Himawarishokudou
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Categories | Italian |
Address |
富山県富山市石倉町1-30 1F |
Transportation |
532 meters from Aramachi. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥15,000~¥19,999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (JCB、AMEX、Diners) Electronic money Not Accepted |
Table money/charge |
コペルト代 300円/1人 |
Number of seats |
14 Seats |
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Private dining rooms |
not allowed |
Private use |
OK |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking lot |
OK 5台 |
Space/facilities |
Stylish space,Comfortable space,Counter |
Drink |
Wine |
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Occasion |
This occasion is recommended by many people. |
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Location |
Secluded restaurant |
Website | |
The opening day |
2013.4.30 |
ひまわり食堂は、富山随一のイタリアンの名店。イタリアンと言いながら、国境やジャンルの枠組みを超えた多様性と独創性がある。店を訪れるたびに、料理は自由自在・天衣無縫に姿を変え、毎回新たな魅力と驚きに出会えて、期待を裏切らない。
【料理、味】
一般的に、コース料理のスタイルは店によって違い、基本パターンに沿って少しずつアレンジを加えるやり方、いくつか定番メニューを柱にしてそれ以外のものを随時入れ替えるやり方、季節や月によって替えるやり方などさまざまだ。ひまわり食堂の料理は、あまり型を決めずに七変化しているように見える(実際には、そう頻繁に変えているわけではないそうですが)。シェフの頭の中に多彩な引き出しがあって、即興的に湧いてくるアイディアを素早く緻密に組み立て、細かい丁寧な仕事が施し、一つひとつ高い完成度で仕上げているようにも思われる。日本で唯一の2つ星イタリアン「プリズマ」(東京・南青山)の斎藤智史シェフは、試作も試食もせずに本番一発勝負で新作料理を出すと、NHKの番組で紹介されていたが、もしかすると、ひまわり食堂の田中シェフもそれと似たようなことができるのではと想像してしまう。
料理は、おまかせのコースのみで、9,000円と12,000円の2種類(税込み。別途サービス料に代わりに席料700円を加算)。本日は12,000円を選択。隣りの客の9,000円と比べたら、12,000円の方が1品多く、グレードの高い食材を使い、パスタも違っていた。この店の本領を知るには、やはり12,000円の方がお薦め。
1.イワシのマリネ
下にはポテト、間に赤タマネギのソテーとヨーグルトを挟んだ。カットして全部いっしょにいただく。
イワシは、赤身と白身の2色に分かれた切り口が美しい。鮮度感があり、脂が乗ってとろける旨味と程よくやさしい酸味がバランスよく混じり合う。さらに、イワシ、タマネギ、ヨーグルトが三位一体となって奥深い味わいになっている。ソテーした赤タマネギは、しんなりした部分とカリカリになった部分と2つの食感が楽しい。
◇パン
やわらかくてもっちりして、噛んでいると旨味が出てくる。小さいながらもしっかり身が詰まって腹持ちがよい。
2.エノキとカリフラワーに豚タンの煮込みを挟んだ冷菜
カリフラワーは、細かく薄くスライスしてシャキシャキの歯ごたえ。エノキは、しんなりソテーしてとろみのある食感。豚タンは、薄くスライスして、柔らかくて濃厚な風味と塩味でしっかりした味わい。
3.ホタルイカと餅米のサラダ仕立て
パリパリの皮の器に餅米と細かく刻んだ野菜を敷き、その上にホタルイカを乗せた。手で持って丸ごと食す。
ホタルイカは、すごく柔らかくて、臭みや雑味のない優しくすっきりして上品な味わい。細かく丁寧に下処理されている。かんでいるうちに、ホタルイカらしいほのかな苦みや風味が奥の方から出てきて、春の香りを感じる。パリパリした皮とホタルイカの柔らかい食感の対比も楽しい。
4.マスのパンケーキ
パンケーキの上にウイキョウ(フェンネル)のソース、マスの身と小粒のイクラのような卵を乗せたもの。マスの身は、持ち上げるとほろりと崩れそうなほど柔らかくて、しっとりして肌理細かくやさしい味わい。マスの卵は、きれいなオレンジ色に輝き、塩気控えめで繊細な味わい。ウイキョウのクリーム状のソースは、ミントのようにスっとする爽やかさ。パンケーキは、よくあるデザートのパンケーキよりも甘さ控えめで玉子の味が濃いめ。ややオムレツ寄りの味わいで、デザートではなく料理として成り立つ絶妙なバランスになっている。そのパンケーキのやさしい甘み、マスの卵の塩味、ウイキョウの爽やかさ、しっとりしたマスの身が口の中で混じり合う。この店らしいオリジナリティーがよく出ている一品。
5.鹿肉と発酵キャベツのオーブン焼き
ハンバーグ状にまとめた鹿肉の下に発酵キャベツを敷き、天然のアサツキとキクラゲのソースをはった。鹿肉は、全く焦げ目のないきれいな焼き上がりで、外側はぷりんぷりんの弾力があり、内側は柔らかでふくよかな旨味が詰まっている。ハンバーグよりも水分が少なくて肉々とした感じ。断面は、ほんのり赤い部分もあるが、ほぼきれいに火が通っている。しんなりして程よい酸味の発酵キャベツと、どこか中華のテイストのアサツキとキクラゲのソースが、肉の旨味を引き立てている。ちょっとしたメイン料理のような満足感があった。
6.エイヒレのムニエル
エイヒレのムニエルに、富山で作っているプンタレッラを乗せ、ビネガー、アンチョビ、ケッパーなどを使った酸味のあるソースでいただく。
エイヒレは、コリコリの歯ごたえの食感とジューシーで柔らかい肉質が旨い。きしめん的なパスタ状にスライスしたプンタレッラも、小気味よい歯ごたえ。
7.黒毛和牛とブラウンスイスの交雑種(池多産)の炭火焼き
肉は、塊のまま網の上でじっくりと炭火焼きした。弾力があってしっかりとした肉質で、ナイフを入れようとすると最初は少し固いと感じるが、ひとたびナイフが入るとスっときれいに切れる柔らかさ。池多牛らしく、ジューシーな旨味としっかりした肉感があり、口溶けもきれいでバランスがよくて満足感の高い肉。今回が3回目の訪店だが、同じ池多産の肉でも、毎回、牛の種類や肉の部位が変わっている。
8.イワシの出汁のパスタ
イワシから出汁を取ってパスタにしっかり吸わせたシンプルなパスタ。
パスタの麺は、粉を感じるぐらいに噛み応えのあるアルデンテで、イワシの出汁の味わいでイタリアの海の香りを感じるような気がする。さらに、アンチョビなどで味つけした細かいパン粉をまぶして、食感と風味を加えている。具のないパスタだが、だからこそパスタとソースの旨味をストレートに味わえ、見た目を超える満足感が得られる。
9.黒糖のクレーム・ド・ブリュレ
キャラメリゼした表面の程よいほろ苦さと、色も風味も黒糖というよりキャラメルを感じる滑らかで甘さ控えめの滑らかなクリームが、食後の満足感をまとめてくれる。
変幻自在のコースの中で、デザートだけは、このところクレーム・ド・ブリュレかティラミスのどちらかで固定しているようだ。
10.飲み物
今回はアメリカーノを選択。
【雰囲気】
“食堂”と称するぐらいで、トラットリアに近い親しみやすい内装ながら、少し照明を落として落ち着いた雰囲気がある。出入り口にあるカウンター席も、料理のおいしさに没入していると気にならない。
【CP】
クオリティーが高くて満足感も高い料理が税サ込み12,700円は、非常にリーズナブル。食材が高騰している中、4カ月前の訪問時よりも1,000円安くなっていた。
【総合評価】
イタリアンの枠組みを超えて、インスピレーション豊かで、富山の食材も取り入れたハイレベルな料理が、リーズナブルに楽しめ、サービスも気持ちよく、満足度が高い。しかも、訪れるたびに違った料理に出会えるから、何度でも再訪したくなる。