「馬ホルモン」 : Shigechanya

　その日、所用を済ませて某施設から退出したのがちょうど16時。近隣の「繁ちゃん屋」の開店時刻ではないか。そこは馬ホルモンがおいしいお店だと聞いていた。歩いて9～10分くらいで「繁ちゃん屋」に到着し、暖簾をくぐった。これ以上ない好機。店内に先客なし。カウンターテーブルに着いた。お母様と息子様のお二人で営まれる。交代で休憩をとるというご事情から、最初はお母様お一人がお店にでていらっしゃった。
　さっそく、「馬ホルモン」（税別500円）を焼いていただいた。
　お皿に載せて出された。腸管を焼いたものだろう。ねぎが散らされている。
　噛むと薄皮がプッチンプッチンと破裂する軽快な感触がいい。パキパキとした歯触りとでも表現したほうがいいだろうか。これが快感。
　内部はゴムのような弾力に富む。柔らかいが、ちっとやそっとでは噛み切れない。
　腸管周囲の脂肪組織も程々に含む。甘みのある旨みがたっぷり。
　風味には独特の癖がある。この癖が癖になりそう。　
　客席に用意されている油さしに入った「ホルモンのタレ」はソースがベースだろうか。おいしい。赤柚子こしょうもよく合う。ただしこれは辛みと塩気が強いから味のバランスを崩さないよう使用量に注意が必要だと思った。
　こういうものをいただくとお酒がすすむ。「生ビール」（税別500円）はキリン。「清酒」（税別350円）は福徳長を熱燗でいただいた。
　「馬刺（赤身）」（税別450円）、「馬もつ煮込み」（税別450円）もいただき、それぞれおいしかった。

　お母様によると、2018年現在このお店は、卸売業として創業してからは70年間以上、飲食店としては56年間、現在地に移転してからは37年間営業を続けられているとのこと。なお、37年前の移転は、現在の所在地のわずか2軒隣からの移転だそうだ（笑）。

　近隣の甘木市（現朝倉市）で、かつて盛んに軍馬や農耕馬や馬車馬などの交易がおこなわれていたことから、甘木とその周辺には廃馬を食する文化が生まれたと、以前から聞いていた。現在は、軍馬、農耕馬、馬車馬などの需要も供給もなくなり、甘木は馬の交易の地ではなくなっている。そこで食用馬を熊本から仕入れるなどして食文化が細々と守られているらしい。

　このお店では、2年前の熊本地震の影響で仕入れルートを失い、主力商品をほとんど提供できない苦しい時期があったという。現在は熊本の新しい仕入先を確保し、なんとか低価格を維持しながら看板商品の「馬ホルモン」や「ホルスキ鍋」などは提供できるようになったが、「馬しんぞう刺」「馬レバー刺」「センポコ」「ゆびき」など、未だ復活できないままのメニューもあるとのことだ。

　途中からお母様が休憩に入られ、息子様がお店に出られた。熱燗を追加し、締めの「ラーメン」（税別450円）を啜り、最後に持ち帰り用の馬ホルモン焼をお願いした。すっかり満喫させていただいた。
　お店から徒歩4分の今隈駅から甘木鉄道を利用して帰宅の途に就いた。