精妙、玄妙なイタリアン : Unfalo

日本に戻り、約一か月半。家人と過ごせるのも残り少しだが、所詮、日本国内での別居である。さして遠くない。Door to Door で４時間程。バングラデシュや中国やマレーシアの様に半日程使うことはもうないのだ。なので、その一緒の日々を慈しむ様に、貴重なものとして過ごそうとするものでもないが、一緒に外食となると、離れればそれは叶わぬ。家人が一人で外食をすることも先ず無いので、ならば、一緒にいる間に豪華ではなくとも楽しく過ごせる様に、色々と手練手管を講じる訳ではないが、あれが食べたい、此れも食べたいと思案、躊躇、呻吟、決断、実行とするのが楽しいのである。

今回、この店も、そうした経緯で訪れた。その後、芦屋の谷崎潤一郎記念館に20年程になるか、再び訪れた。
この店、OPENしたのは然程昔ではない様だ。イタリアンにカテゴライズされているが、店主曰く「薪火レストラン」ということで、所謂、調理法に拘ることを示唆しているのだろうが、今回、訪れて、それは、単にその部分のみならず、全てのプレートにそうした何らかの確信、拘泥をもった工夫が為されており、所謂、フージョンだとか分子ガストロノミーではないのだが、種々の料理法に精通した店主及びスタッフが「和」の要素も取り入れながら、素材の良さを生かした料理と統括出来そうだ。

勿論、供される度に、きちんと説明が為されるのだが、構成されている素材もそうだし、調理法や料理の性質も丁寧に説明をしてうれるので、その際には、ほうほうと頷き、食べて納得、得心して踏む踏むの繰り返しで、一つ一つを既に、一ヶ月ほど経過した今、思い出すのは最早不可能である。「蘇」という古代チーズを再現したものもあった。初めて聞く。

パスタも冷製のものが出たがほんの少しの量で、薪火と謳う部分は、メインの豚肉料理であった。白トリュフをふんだんに使った鰆のグリルは、かなり「和」に近かったが、楽しめた。狭い動線の悪い調理場で3人の男性と1人の女性がそれぞれの役割を慌ただしくテキパキとする様は、些か、見ていて決して落ち着けるものだが、水面下の白鳥の足の如き、美味しい料理を供するのその裏舞台は鉄火場なのである。えてしてそういうものだ。

5,000円のランチコースに、緊急事態宣言下だったので、ノンアルコールスパークリングワイン（邪道だが、味は其れに相違無い）に、後は「能勢ジンジャエール」という品の良いジンジャエールを飲んだ。勘定は〆て、13,200円。
小さな店だが、二階もある。風変わりというのでない。変に技巧にも走ってない。料理への工夫が見られる。そういうイタリアンで凡百のそれとはかなり重きが異なる。ふむ、楽しめた。