越年感謝。ザギンの年末
Covid小康状態のザギンは今やまさに年末進行。
往来を善男善女が徘徊し、忘年会へ向かうらしい団体とも多数すれ違う。
先日、再生なったモンドバーに行ったら、モンド出身である佐々木店長の顔が見たくなり、久しぶりに古い雑居ビルのエレベータをガタガタ言わせて4階に至り、会員制の銘板も眩しい扉を開き、中を覗く。1730時。
「こんぬつわ、いいですか」
「あ……予約でいっぱいで、いや、でも7時までなら。」(ココモネンマツシンコーネ)
「ええ、全然大丈夫、オレ、速いから」
と、「ファッショナブルな按摩業界? 」なら、大いに歓迎されそうなうわ言を呟き、厨房の真ん前に当たる、向かって左端のカウンタ席に腰を下ろす。
飲み物は「いつもの」スーパーニッカ・チルド・ハイボール。
ここで飲むとスーパーニッカは炭酸割りのために開発されたんじゃなかろうか? と妄想する程度にダブル処方のそれは調子が高い。
「口に入るもの」はシマアジのカルパッチョ、そして塩焼きそばを所望。
実質のあじ、善き哉。
しばらく来ずにいたら、いつの間にやら、お運びと調理助手に、少年と言っていい見た目のバイト男子がふたり。
聞けば学生さんだという。
「どう、面白い? 」
「はい、目上の方ばかりがお客さまなので大変ベンキョーになります」
「うん、こういうところで接客なり、追い回しなりを経験するとさ、気働きが利くようになり、社会に出ても、諸々の場面で段取り上手になると思うゼ」
と、偉そうな先輩風をつい吹かしたくなってしまうのはやはり、こちらも若い時に飲食のバイトにほんのちょい足を突っ込み、その後、周りと共同でものづくりをする商いの道に進んだからなのかな、と、好々爺よろしく思わず目尻が下がらない、事もない。
尚、具体的な御菜の詳細は、別掲のシャシンないし、シャシンのコメント欄に当たって頂きたい。
オトナげない大人のクリームソーダ♡
某日、謎の迷惑集団「チームみますや」合同会にて。
「チームみますや」とは、かつての食べログコミュニティ「ハムカツ部」の部長、次長、そしてとりから課長(オレだ! )の三人で構成されている、社会通念上の「身もふたもない」寄合。
集まると話題は豊富だが、無駄に豊富すぎ、さらに申せば遠慮がなく、ついつい内容がオゲ・レーツ、或いは/及び尾籠方面に陥ってしまいがちな事と、中高年の集まりだけに「息をするように」ダジャレをかまし、
「ん、ビロウ? 俺のナショナルマーケット、又は都立中央図書館! 」
と、周りにいる人々がアタマを抱えるようなウワ言ばかりを宣い、当然、酒品も「この下もなく」低い。
この日もハム・カツの棲息調査を言い訳にロックフィッシュへ集合、素直に御菜だけを食べていればいいものを、名物の角ハイボールをひとり三杯ずつ(とは言えさすがにシングル・ショットの通称「ウィークネス・スタイルで」)喫し、そうすると急速に脳と座が温まり、それと同時に部長が
「腹減ったなあ、あ、そーいえばオレ、カモメセラーって行った事ないス、連れてってプリーズ! 」
と、セッタイを伴わない飲食を所望しだす。
義を見てせざるは勇なきなり、スウェーデン食わぬは、侠のハジ!
部下たるわたくし、懐からスマート・フォンを取り出すや、一度戸外に出て
「これから三人、よござんす? 」
と尋ねる、と、いままさにノーゲスト、との応え。アリガタヤ。
すばやく勘定を済ませ、ビルを出て、並木通りを東側に向かって歩き、空也のもなかの並びのビルにたどり着き、エレベータの釦を指の第一関節でぽちょんと押し、4階に至り、「会員制」の看板が禍々しい、扉を開いて、中に入る。
ここでもハイボール、但しこちらは大日本果汁牌「スーパーニッカ」ベースがお決まり。
歩いてきて喉が渇いていたこともあり、これをそれぞれ二杯ずつ(しかもここではしっかりダブル・ショット)喉を鳴らして飲み込む
...と、御馴染み「もうぞ食い」或いは/及び「もうぞ飲み」状態に至る。
以降の飲み食いの詳細は、別掲のシャシンないしシャシンのコメント欄を当たっていただきたいが、やっぱり人間って、タガが外れると、普段は見栄だの外聞だのでガマンしている、トンでもないもの、頼んじゃうんだねえ、と、翌朝、ケータイのアーカイブに残る、そそり勃つ「大人のクリームソーダ」の画像を目の前に、暗然としない、事もない。
オイルサーヂンと酒場。
『河岸が開いても漁師は海に出ていないから正月十日以前というのは "外食" でも "内食" でもロクな食事ができないと思います。』
…という「天の声」を聞いたからには、海で泳いでいないもの、或いは/及び、海産物でも鮮度にカンケーない、すでにお陀仏、荼毘に付されもとい加熱保存されている「缶詰」をもって臨む、という姿勢が年始酒場での肴選択における大前提となる、というのが合理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©️副島隆彦)である事、いうを待たぬ。
オイル・サーヂンはバーフードでも最も安直にして一般的なもののひとつである、が、仮にも「厨房酒場」と冠するコチラである、そのままでは出さぬ。
佐々木店主自らが予め薫製をかけておいたのを、注文毎に螺旋型卓上電気ウォーマーで軽く炙ったソレは、「ありそうでない」一品で、シャレているし、見た目がなんだか岸田劉生の油絵に出てきそうな貫禄、佇まい。
いやが上にも名物△20℃に冷やしたスーパーニッカ・ハイボールがすすむ。
もう少しつまみたくなり、ドライカレーという名のカレーチャーハン。
ややもったりとくるやつを箸でチマチマと摘みながら、水割りに移行したグラスの中身をすすっていると、晩酌と食事が「いつのまにか」済んでしまい、あゝ経済だし時短だし、こりゃ「飲み方改革」元年だネ、はは、と、甚だ生産性の向上しない与太を飛ばさない、事もない。
楽しい夜更かし©️大瀧詠一
BGMはコチラ https://youtu.be/8tCNHwXuOsk
海外出張中の開催予定で不参加を決め込んでいた会が、週末の台風禍で順延。今夜に変更しましたけどどーですか? と連絡が来て、それなら! と帰郷を1日伸ばして出席。
終われば2100時。
いつもなら晩酌も済み、目蓋が重くなる頃合いだが、素面である。
さて、短期決戦でいっぱいやっか、という事になれば、足は自然こちらに向き、ドーハンとアフターの狭間、ぽっかりとお客の姿が消える時間帯の店に入り、佐々木店主にどーもどーもと手刀を切りつつ、カウンタ席に腰を下ろす。
おなじみ「ココではアレ」なスーパーニッカ氷無しのチルド・ハイボール。相変わらずのうまさ。こうでなくっちゃ!
いつも沢山のメニュが書き込んである壁の黒板にある「本日のオススメ」に目を走らせる。
え、三陸の牡蠣、もう出てるんですか?
いえ、冬牡蠣はまだちっちゃいんで「名残の夏ガキ」です
いいなあ、コレはナマで?
いえ、蒸しで。
うん結構。一皿四個のハーフサイズ、二個でプリーズ!
かしこまりました。
…程なく目の前に現れた「蒸し」は、内側からパンパンに膨らみ、さあ、食べて頂戴な、といった風情。
添えられたカットレモンには手を出さず、殻ごと持ち上げそのままツルリ!
口腔一杯に広がる、熱で活性化された磯の香りが素晴らしく、ここで追いかけるようにウヰスキー・アンド・ソーダ・ウォータを含むと、この時間、酒場の片隅で口にするモノで、これほど気の利いたモノが他にあろうか、いや、ない、と、古文の定法「二重否定は強い肯定」で感銘を受け、目尻もつい、ふにゃりと落ちる。
と、同時に腹がぐうと不満の声を上げ、遅い時間に「あんまり」よかないな、とは思いつつも、手製のメンチカツをひとつ。
揚げたてのヤツを箸でひとくちに割り、ふうふう言いながらパクつき、先の台風で故郷の三陸はいかがでした? あゝ無事でしたか、よかったですね、あの辺りはリアス式海岸ですからもともと河川の流れがキツいんですよね、そーいえばリアス式海岸といえばこないだスウェーデンとノルウェーに行きました、あそこら辺ってやはり気候は厳しいし、人口も少ないから、人を大事にするために消費税率が高い、なんて言いますけど、よく聞いてみたらその海岸を形成する氷河の流れで電気は水力で95%まかなえ、しかも沿岸には北海油田があってその権益で稼げちゃう、つまり上から降ってくるものと、掘れば下から湧いてくるもので暮らしは安泰っていうんですから、Y=C+I+G+(X-M)のMの心配しなくていーわけで、口は悪いけど八百長みたいなもん。そりゃ税率高くてもかまいませんよね、これを何にも出てこない日本に当てはめて、人に篤い社会保障とかいってもそりゃ無理がある、ニッポンの場合はC+Iで全体の6割なんだから、VATあげるなんてのは愚の…え? 中間予定納税の時期だから機嫌が悪いんでしょって? あはは、わかっちゃったソーリィ
と、バカ話は尽きず、普段は早寝早起きが身についてしまったけれど、たまには夜更かしも悪くないよね、と、嘯きつつ、あゝでも明日の朝は、多分胸焼けで目がさめるんだろうな、と、我が中高年のわがままボディの行末に、嘆息を漏らさない、事もない。
シリーズ「東興園のカレーチャーハンを偲ぶ」レストラントバーにて。
その昔…たしか昭和から平成になるかなったかの時期のお話。
今のバー「ロックフィッシュ」の移転先「ニューギンザビル一号館」の近くに路地があり、そこに「東興園」という小さな中華料理屋があった。
なんでも映画監督の小津安二郎氏が贔屓にしていたとかなんとか、ただ当時小僧だったわたくしは、そんな事はつゆも知らず、日比谷にあった、あるプラントメーカーに日参する傍ら、ラーメンマニアの上司に連れられ、伺ったのが最初。
さっぱりとしたスープの澄んだ「鳥そば」と肉リッチなシウマイで名高い店で、上司はもっぱらそちらを愉しんでいた。
が、その頃まだ若く、より強い味を好んだわたくしは、もうひとつの名物「カレーチャーハン」をよくとった。
そこのカレーチャーハンは、パラリとしながらしっとりもしてい、何よりも香りが良かったから「酒の肴」にもなり、「夜の部」にビールと一緒にとると、晩酌をしているうちに、いつのまにか夕食も済んでしまう、というのが、まだ稼ぎの少ない、若輩商社員にはありがたかった。
…なんて書くと、それじゃちょっと行ってみるか、と思われる向きもあるかと思われるが、冒頭「あった」とご案内の通り、この「東興園」すでに無くなって久しい。
土地バブル時代の事であり、地上げがらみ云々というウワサもあるが、火事を出し、あっさり店を閉じてしまった。
その後、店でコックさんをしていた人が、小田急の代々木上原に「正宇治」という中華と酒の店を開いたので、追っかけて行ってみたが、カレーチャーハンは出さない、との事で、「あの味」は文字通りマボロシになってしまった。
マボロシと分かっているが、夕方、ザギン界隈をウロチョロしていると、舌先にあのパラリとしっとりが蘇がえってきた「ような気になり」つい、ありもしないモノを欲しがってしまう。
かくしてこちら。
大阪では結構見かけるが、東京ではあまり出くわさない「料理をしっかり出しながら、酒の揃えやコクテールにも手抜きのない」いわゆるレストラントバー。
会員制ということになっているので、客層も年齢高め、かつ落ち着いており、さきの話ではないが「晩酌と夕食の水陸両用? 」みたいな気分の時には重宝する。
「天一本店」の斜向かい、最中の「空也」の並びにある旧いビル。
エレベーターを使い四階に至り、気圧の関係か、やけに重く感じるドアを「ヨイショ! 」と開き、中に入って、いつも通りにカウンタ席に腰をおろす。
酒は氷の入らないスーパーニッカ・チルド・ハイボール。
角壜ハイボールはやりの昨今だが、こちらの方がなんというか「侠らしい」(死語 味わいなので、この店のアレコレには具合がいい。
一杯目をぐいとやり、佐々木マスター相手に
あの確かこちら、カレーチャーハンみたいなやつ、ありましたよね
あゝ、ドライカレーですね
ええ、それをお願いします。なんか昔の東興園、思い出しちゃって
あはは、なるほど。かしこまりました。
と、やりとりをし、出してもらったのがシャシンの一皿。
往年の東興園のそれのようにラード大匙二杯http://d.hatena.ne.jp/hann3/touch/20150620/p1 は用いていないので、パラパラとはしていないものの、カレーの抹香臭さが油分と程よく調和し、喧嘩をしておらず、なによりもしっとり優しい仕上がりになっており、「30年後」になってみると、却ってこちらが口に合うようにも感じる。
口に含む、と、
うまいなぁ
と、わざわざ言わなくてもいい言葉が、ほとばしるように出てしまい、慌てて壁の方を向いてごまかし、ウヰスキーのソーダ割りをガブリ、カレーチャーハンもといドライカレーを箸でちょいちょい摘み、又、ウヰスキーをギュー
…とやっていると、なんとも「いい調子」であるが、一方、あー、世の中随分変わった事も多いけれど、オレじしんはおんなじような事、やり続けてるね、と、思い至り、ふむ、これを進化しないと呆れるか、或いは、円熟の深みととるかだ、なんて、ね、と口の端にアイロニーが浮かび上がらない、事もない。
その他】
そうそう。こちらこの季節は、マスターの故郷、岩手三陸から届く牡蠣を使った料理が並び、それぞれ秀逸。
敢えて生牡蠣ではなく、「調理用」を、熱を通す割烹で供しているのが「見識」と言えよう、おススメ
…と、言いながら「会員制」の建前な訳ですが、はは。
ザギンの渓谷。
ちかごろは旅商いの途中、週末に帰郷し損ねた日曜日の晩、或いは/及び週明け月曜から海外に移動の前入り、といった時に顔を出す事が多い。
日本有数の繁華街として殷賑を極めたザギン・シティであるが、ご存知の通り、休日、しかもひとり客を相手にして「夜の部」に開いている料飲店は、思いのほか少ない。
しかもバーの形態をとり、しっかりと酒を作って出す店、しかも居心地が良い、となると尚更で、日曜日営業、【会員制】の看板を掲げるこちらに自然足が向く頻度が高まる、というのは極めてナチュラルな帰結であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©️副島隆彦)である事、いうを待たぬ。
ひとりの晩酌、しかも旅の途中、というときは、飲食にそれほど執着しない。
「いつも」のスーパーニッカ、氷の入らぬチルド・ハイボール。
色とりどりの「ゆで豆」。
そして特別凝っているわけではないが、目の前のミニマムな厨房で粉をつけ、揚げて、ソースをまぶし、刻みキャベツとともにトーストに挟むところを「ライブ」で見られる、手作り感と脂身の甘さが身上な肩ロースのカツ・サンド。
そんなものをつまみ、バーテンダー氏と、
「ところでMSSBさん、今年はもう何日、ご自宅空けてます? と、いうか、帰ってます? 」
というあまりにも生産性のない会話を交わしていると、脈絡もなくカタクノヒトとかショータクとかいう単語が頭に浮かび、60年代週刊誌ルポルタージュ(死語 風に微苦笑で唇の端を歪めない、事もない。
あれ? オレっていつから会員?
気にいると通う性質(たち)なので、世の千人斬り系(失礼! )物見高いレビュアー諸兄に比べると新規開拓店が少ない。
そして中高年の声を聞くようになれば、複数店舗の「馴染み」にはなっていて、今日はこちら、明日はココ、そうそうアソコもしばらくご無沙汰だなぁ
…なんて自分が客なのかタイコモチなのかわからないような「夜の部」生活を送っており、圧倒的に「既存店再訪」「挨拶回りでこんぬつわ」という事になってしまう。
「美味しいを見つける」どころか、単に自らの酒癖の悪さと軽薄さを垂れ流しているようなもので、サイト運営の皆さま、閲覧者の皆さまには、まるで役に立たず、ココロ苦しい限りであるが、 #いんだよ細けえ事は! と、開き直り、空也のもなかの並びのビルに入り、エレベーターを使い、毎度おなじみ「メンバーズ・オンリー」なこちらに顔を出す。
この日はほかに用があり、あれこれと黒板に書きつけられた御菜や「幸せを呼ぶ炭水化物」メニュは黙殺し、チルド・ハイボール(氷なし、大日本果汁謹製日果特別牌・ベース)と、「むしやしない」
「むしやしない」は茹で豆に決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば、箸で一粒つまんでは、グラスのふちに口をつけすすり、又一粒口に入れてはグラスを傾け、とやっていれば、時間はつぶれるし、酒量は抑えられ、ついでに勘定も廉く上がり…とは、おまえみたいな吝嗇野郎は会員権はく奪だ! とお叱りをいただきそうだから黙っている。
そう思いながら、ほのかな塩気をまとった豆一粒を奥歯で噛み、或いは/及び舌と上顎で潰し、口腔に広がる植物性たんぱく質の軽いコクとわずかな灰汁に鄙びた風趣を覚え、ここに甘みが浮かび上がった炭酸割りをゴクリと嚥下すると、派手さ、リッチさはないがニュアンスはあり、一瞬の静けさを感じ、カウンタ越しに佐々木店主と世間話から忘年会の予約席の埋まり具合、ハイボールの角とスーパーニッカの人気シェア、今年の(店主の故郷である)三陸牡蠣の出来栄えなど、とりとめもなくポツリポツリと語っていると、心地よくつい尻に根が生えそうになるが、ドーハン待ち合わせと思しき、着物姿の迫力系美女が店に入ってき、二つとなりのスツールに腰かけたのを潮に勘定を申し付け席を立つと、浮世の憂さは晴れていることに気づき、相変わらず銀座にあって得難い一軒であるな、と、嘆息を漏らさない、事もない。
Space Cowboy
日帰り出張の夕方。
新幹線に乗るまでの数時間をチルアウトと軽い夕食に費やすためザギン。
通称「津田の店」で、口切りのマティニ・ソーダを一杯だけやり、外にでて歩き出すと、気持ちが軽くなっていたのか、ジャミロクワイのスペース・カウボーイhttps://youtu.be/OPkjnRIdQXQ が、アタマの中でエンドレスで流れ出し、ああ、これはカウンタのある店でもう一杯飲んで、腹に何か入れなさいよ、というナゾだと勝手に判断してこちらへ。
会員制の看板。
1600時からの開店と、おおよそ「銀座のバーらしくない」店だが、「そういう用途」には好適、という事もあり、「出勤前」の姐さまがたがミーティングを兼ねて軽く「虫やしない」 ドーハンの旦那衆と小姐、そして「酒も飯も一軒で済ませたい」お疲れちゃん気味な中高年ご同輩諸君…という布陣で、1815時にして店内すでに7分の入り、善き哉。
サンボアグループでいうところの神戸スタイルと京都風を足して二で割ってぶん殴って蹴っ飛ばしたらこうなりますよ、というカタチの当店独特のウヰスキー・ハイボール、つまり旧大日本果汁社謹製「スーパーニッカ」を氷点下まで冷やし、これも予め充分に冷たくしたトールグラスと炭酸を用い、氷なしでビルドアップ、レモンピールをふた振りしたそれを頼み、壁掛け黒板に書き出された「幸せを呼ぶ炭水化物」料理を片目で眺めつつ、もう一つの黒板「本日のオススメ」の中から、ひらめエンガワ昆布締めを。
昆布締めは大哥の代名詞
…今はなき、銀座水谷の親方の、数多い「名言」の一つであるが、洋酒中心の「レストランバー」で回転がそれほどよくない生魚を敢えてとる、という事を自ら「織り込み済み」で頼むのなら悪くない。
初手はそのまま、次はワサビだけ、そしてワサビ醤油でとパクパクというよりちびちび、ケチケチと口に運び、炭酸のキックを借りた酒精とやるには邪魔にはならず、空っぽだった胃袋が刺激され、目覚めた「ような気になる」
胃が刺激されたら、メンチカツ・サンドに決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば、以前、焼き鳥と釜飯の店、銀座とりぎんで、交換留学生と思しきマレーシアン・学生相手に、「焼きつくね」を指差し、
「イッツ・ミーンチト・チキン・バベキュー、ミーンチト、ミーンチ、ユーノウ? 」
と宣っていたホストファミリーの「意識高い系」奥様の英会話能力に大いに瞠目しながら、
「それ、ミンスミートとか、ミンスト・チッキンとでも言わなきゃ通じないゼ! 」
と、腹のなかで呟きつつ、実際はソクインのジョーで口にしなかったのを思い出し、とは、言った途端、こちらの英語能力にも着実に突っ込みが入るだろうから、黙っている。
そう思いながら、ひとりのことゆえハーフサイズ*で注文したミンスミート・クロケット・オン・トーストに手を出し、齧り付くと、よく練った、密度の高い牛肉混入率の高い合挽きのミーンチ(笑 はしっかりとした歯ごたえを呈しつつも歯切れも良く、咀嚼すると口腔に肉汁の旨味が溢れ、これを補強するように加えられた甘味の勝つソースと調和し、ここにカツとトーストの間に挟まり、熱で半煮えになった、どこかドイツの浅漬け「ザワークラウト」を思わせる千切りキャベツの口当たりが加わる様が面白く、さらにトースト・サイドに塗られていた溶き芥子が後味のキレをよくしているさまが、いかにも「酒場のサンドウィッチ」といての存在を強固にしており、パクつき、噛み締め、嚥下し、合いの手に大日本果汁ハイボールをぐい! とやると、酔い心地も腹具合もちょうど良くなり勘定を済ませ、東京駅に向かい、さて、地元に着いたらクルマもピックアップしなくちゃな、と、新幹線のプラットホームで、運転代行に電話をかけ、到着予定時間を告げない、事もない。
*こちら、ほとんどのサンドウィッチを団体用のフルサイズと、ひとり用のハーフサイズで注文できます。
居場所がある、ということ
とりわけご馳走が食べたいわけでもないが、メニュを眺めた時にアタマに浮かぶ「想像」と、実際にでてくるものに乖離がないチャンとした調理で、騒がしかったり、気持ちの水面を波立たせたり、という「気ぜわしさ」がなく、適度に放っておいてくれるが、話しかければ雑談に応じてもくれる。
酒は「いつもの」があればそれでもいいが、その日の気分で選択の幅があり、チョッといいもの飲んで、自分を励ましたいのであれば、そういうのもあり。
内装も凝りすぎてはいないが落ち着いており、目に余計なものが飛び込んでこず、総じて「茶色っぽく」、倉庫の片隅か船倉ででも飲んでいるような、程よいタイト感、ないしコージィさ。
…と、条件をあれこれならべて店を選んでいる訳でもないが、スケジュールが入っていなくて身体と時間がぽっかりあいてしまったときに、こちらの重い扉を開き、スツールに腰を下ろすことが多い。
夕方。
昼から臨んだ講演会が終わり、新幹線で帰郷するまえにチョッと一杯入れてチル・アウト、ついでに軽い食事も済ませてしまいたい、そしてなにより銀座では珍しく、「日曜日も営業だから」こんぬつわ。おひさしぶりね、と小柳ルミ子みたいな事をいいながらカウンタ席につく。
ジンの銘柄、柑橘の種類、トニックウォーターのブランドにそれぞれ番号が振られたマトリクス表から、107、つまりタンカレーNO.10ベース・カットライム添加・フィーバーツリー・トニックでビルドのジン・トニックを選び、トニックと炭酸半々の「ソニック」仕立てにしてもらい、喉を鳴らすように飲んでひとごこち。
「本日のおすすめ」の黒板に目を向ける。
店主の故郷「三陸からの肴」の項に「さくらます」の文字を見つける。
言うまでもなく川魚「やまめ」の降海型。言い換えればさくらますの陸封型がやまめになるか、ま、どちらでもいいが、一度海の水を飲んだ「ます」はこの季節、たっぷりと、しかしさらりと舌にこだわらない脂を身にまとい、身肉も他のサケマス類とは比べ物にならないきめの細かさを持つ。
我らが裏日本、エチゴ地方でもこの季節の「名物」であるが、三陸で獲れたものもイイですよ、と推奨を受け、義を見てせざるは勇無きなりスウェーデン食わぬは侠の恥! と意を決し、おもむろに口を開く。
季節のさくらますは、フィッシュ&チップスに決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば、いくつかあった調理法のうちこれまで経験のあるそれ(素焼きで大根おろしと醤油だけ/塩焼き/味噌漬け)とは最もかけ離れていて面白そうだったから、とは、我が物見高さ、ありていに言えば珍しもの好きのノボセ症が白日の下にさらされるから黙っている。
そう思いながら、酒を「いつもの」ハウス・カクテル「スーパーニッカ・チルド・ハイボール」に切り替え、自家製のタルタルソースが添えられた皿に対峙すると、薄い衣で包まれたさくらますはシットリとしながらその持ち味をしっかり主張し、ここに自家製のタルタル・ソースを加えてやると、ウヰスキー・ソーダに対する恰好のつまみとなり、うまいうまいとあっという間に平らげてしまうと、腹もほどよくたまるが、新幹線に乗っているうち小腹が減りそうな心持ちもどこかにあり、お土産に「カツサンド」を調整してもらおうかとも思うものの、それほどの長旅じゃないし、ましてや最近、ズボンの胴回りにあんまり余裕がないネ、という #冷徹な事実 がかろうじて注文を思いとどまらせ、「つぎに来た時の予約ね」とか、軽口を叩きながら勘定を払い店を出ると、いつのまにか一時間ほど過ぎており、どこか背負っていた荷物を下ろしたような身の軽さを覚え、ああ自分の居場所があるというのは、なかなか得難いものであるな、と、「会員制」のよろしさにほくそ笑まない、事もない。
通い続ける「水飲み場」
ある酒場の店主と話していて「やはり! 」と納得したのだが、今、帝都は空前のお鮨屋ブームである
…らしい。
これまで鮨屋のカウンタを征服していた常連たちが、定年退職とともに足が遠のく一方、かつてないほどの晩婚化と独身比率の上昇、加えて少なからぬ離婚発生に伴い、小遣いに困らぬ「40代中年独身貴族(死語 ないしペケつき諸侯」が台頭、これらの人々が、周りの同世代妻子持ちとは異なる消費行動をとるようになるに従い、ひとりで居心地のよい鮨屋のカウンタに殺到するようになった「世代交代」説
大哥なおさかなを熟成と呼び換える「大発明」により、やたら濃厚にしてヌメヌメとした具(タネ)を用いるお鮨屋が急増、これがファストフードと袋入りポテトチップスで舌が「育った」世代の顧客を直撃、半ば薬物中毒患者のように通わせている「鮨屋自体のキメラ化」説
赤本というタイヤ屋の観光案内の体を装った営業促進誌を媒介としてインバウンド客を「有名鮨店」に送り込み、自らの株を上げ、心付をせしめようとする「ホテルコンセルジュ陰謀」説
…とまあ、理由はいろいろあるのだろうが、お陰で「星付き人気店」はもとより、以前であれば当日の1600時すぎ、夜の営業開始までの準備時間に電話をかけ
「夕方からいいですか? 」
と気軽に暖簾をくぐる事が可能であった「街のちょっといい店」あたりまで、連日予約で満員、フラリと寄る、という行為が現実的に不可能になって久しい。
で、あればこちらも一月も二月も前からの予約に挑戦
…とは、なりにくいのが、屈折と書いて中高年と読む歳向きの悲しさ。
一日の「楽しみ」が晩酌であり、昼下がりに一瞬、仕事の手を止めて、その日の気分や腹具合、昼に食べたものとの兼ね合い、二日酔いが継続中か快復過程か、懐中如意不如意、などなど、自らの様々な背景を勘案しながら
「やあ今夜はどこで一杯やろうかな」
と、考え、空想、妄想がアタマの中をソーマトーのように駆け巡り、
「よし、ここ! 」
と、思い定めて終業後、足を向ける、或いは/及び「夕方から〜」と架電の儀に取り掛かる、という一連の行為を経なければ納得しない、コマッた性格をしている。
一月どころか一週間先、否、明日の宿酔状況もわからないのに、そんな先に何が食いたくて、何が飲みたいか、など、分かるわけねーじゃねーか、コンチクショー! (失礼)というのが、道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©︎副島隆彦)である事、いうを待たぬ。
と、言うわけで中高年は、お鮨屋は「敬してこれを近づけず」というより「近寄る事が叶わず」酒が飲めて食事も出来る「レストランバー」にすごすごと向かう。
「会員制」の札も仰々しい、気圧の関係でバカみたいに重い店の扉を「えいや! 」と開くとそこにはやはり「街を追われた」紳士諸君が背中を丸め、止まり木にしがみつくように、と、いうことはなく、嬉しそうに腰を掛け、酒杯片手に思い思いの御菜を愉しんでいる。
ご同慶の至りに存じます、という奴である。
冬のレストランバーではウヰスキーお湯割に決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば、時分どきカッチョイー街場のバーでこいつをキコシめすと、外気と室内温度、飲み物と冷え切った身体の極端な温度差で、口に含み、嚥下した途端、風邪気味な事もあってややもすると鼻水がでろーんと流れ落ちるような無作法をしてしまいそうだが、おぢさんばかりの店内なら没問題だから、とは、加齢に伴う不随意筋調整の不全を暗示するから黙っている。
そう思いながら耐熱グラスにハウスウヰスキーの復刻版スーパーニッカを注ぎ、お湯をビルド(と、いうのか? )してもらった酒に、突端をマッチで一瞬炙ってもらったクローブを落とすよう指定し、洟が垂れぬよう注意深くやや上向きで中身をすすると、熱が舌と食道を程よく按摩し、少しの時間差で胃から頚椎に向かって温まり、腹が減り、壁の黒板に書きつけられた「本日のオススメ」のなかから、芽キャベツのグリルと三陸産牡蠣のクリームグラタンをとり、前者の小体ながら密度の濃い味わいと鄙びた香りにどこかそら豆を感じて調子が上がり、後者をつつき出すと貝類独特の滋養とチーズの風味でいよいよ暑いほどになってきて、思わず
「生ビール一杯! 」
と、呼ばわっている自分はもはや「鮨屋ロス」など、かけらも気にしてねえな、と、調子こかない、事もない。
中高年酒場【会員制】
2016年10月に、近くにあった以前の店から移転。一回り大きくなり、使い勝手が良くなった。
とはいえ、程よくコージーで、「包まれ感」の心地よさを覚えるのは以前同様。店が変わった、という違和感がほとんどない。内装の普請、造作の配置にあたりかなり丁寧に工夫されたのだと思う。
違和感のない店ではスーパーニッカ・チルドハイボールに決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば、ジンとトニックウォーター、添加する果汁にナンバリングし、1.1.3とか2.4.6とか、ギロッポンの札幌ラーメン屋のようにお客が呼ばわる方式のジントニックも楽しいが、まずは店一番の推奨ドリンクを素直に頼むのが道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©︎副島隆彦)である事、いうを待たぬから、とは、今年最後の #言いたいだけ だから黙っている。
そう思いながら、或いはカラフルな煮豆を、或いはチーズカナッペを、或いは佐々木店主の故郷、三陸海岸から届く牡蠣のフライやバタ焼きといった独創性溢れ、しかし児戯的に弄り回したものではない、しっかりと酒の肴になっているさまざまな洋食風な御菜に舌鼓を打ち、ハイボールの泡の爽快さに身を任せていると、今年もどうにか乗り越えられそうだ、お疲れちゃん、俺、と、自らを労う気持ちにならない、事もない。
점포명 |
Kamome Sera
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장르 | 바、다이닝 바、빵 |
예약・문의하기 |
03-3569-2728 |
예약 가능 여부 |
예약 가능 |
주소 |
東京都中央区銀座6-7-19 ミクニビル4F |
교통수단 |
긴자 역에서 164 미터 |
영업시간 | |
예산(리뷰 집계) |
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지불 방법 |
카드 가능 (AMEX、JCB) 전자 화폐 불가 |
좌석 수 |
16 Seats |
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개별룸 |
불가 |
카시키리(기간을 정하여 빌려줌) |
불가 |
금연・흡연 |
완전 금연 |
주차장 |
불가 |
이럴 때 추천 |
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비고 |
会員制 |
諸々あってしばらく休んでいた酒場活動? 再開。
いきなりハードボイルドにから酒というのも乱暴かなと、「食べながら飲める」レストランバー的要素の強いこちらへ。
「こないだ休みの昼、餃子巻きながらラヂオ聴いてたら、いきなりお店の名前が上がってビックリしましたよ」
「ああアキモトさんの」
「そうそう、アレでものすごく混んだんじゃないですか」
「いえいえ、全く」
「へぇそんなもんですか。ま、とにかく、ラヂオで言ってたコンビーフ・サンドください、それとスーパー・ニッカのハイボール! 」
「はいはい」
出来上がって目の前に現れたものをつまみ、飲み、周りのほどの良い喧騒に囲まれながら、ぼんやりと過ごす。
特別なおしゃべりをする訳でも、高倉健さんよろしく他を寄せつけず、無言で杯を傾けるのでもなく、とは言え店のひと、お客が自然に作り出している店の中のリズム、テムポに身を任せていれば、これはこれで社交な訳で、あゝこうしたかったのね懐かしや、と、そっとため息を吐き出さない、事もない。
大人の店だよね。
尚、具体的な御菜の詳細は、別掲の写真ないし写真のコメント欄に当たって頂きたい。