目の前で“ジュージュー”がない悲哀 : Moriya

無性に鉄板焼きが恋しくなるときがある。
そう、寒く冷える夜などに。

要するに、目の前で熱を上げる鉄板の熱が恋しいのだ。
それは寒い冬の日に焚き火にあたって暖をとる、それに近い感情。
そんな気分のとき、ああそういえば、と思い出したのが当店のこと。

本当は、牡蠣のバター焼きを食べたかった。
季節柄、牡蠣のバター焼きは、ある意味“鉄板”である。

でも、置いてなかった...
仕方ない。帆立のバター焼きでガマンしる。

店内はコの字のカウンターで、それぞれに設えられた鉄板があるにはあるが、
稼動しているのは店主の目の前の鉄板だけで、そこで焼いて、皿に乗せて各注文者に配膳される。
目の前のアツい鉄板でジュージュー、を期待していた私は、極めて残念に感じたのであった。

ただ、面白かったのが、トン玉なるもの。
このトン玉、とん平焼きのようなものかと思ったが、
鉄板の上に玉子を割ってのばし、その上にネギ、さらに豚バラ肉を乗せて焼き上げたもの。
これを醤油と辛子で食べる。
玉子と豚バラ肉に挟まれたネギが、蒸されて甘みが増し、なかなか。
これは、アツアツの熱燗に合う。

総じていえば、鉄板焼きの居酒屋、という印象。
しょうが焼きや味噌漬け肉もあるので、2人ぐらいでこじんまり飲むのに向いている。
コの字カウンターなので、店主や他の客との距離が近いところも、まあ魅力といえば魅力。
高級な牛肉とか魚貝とは無縁な感じだが、気軽に目の前でイロイロ焼いてもらえる（席位置によるが）のがいい。