本郷の文化財、菊坂コロッケ。「まるや肉店」は今日も元気です。 : Maruya Nikuten

　秋深まる吉日。小春日和、銀杏の香がそよぐ本郷。手を後ろに組んでゆっくりと散歩する御仁、午前の授業を終えて息をつく学生。清秋の坂道、時間の角度は人それぞれ。

　古くは文豪や研究者たちが往来した「菊坂」へと折れてみました。休みには野球少年たちが自転車を漕ぎ昇る細い坂。金曜の昼時は静かで、坂を上がってきた自分の息遣いに年齢を感じ物悲しくなります。
　息があがりかける頃、まるで街道のお茶屋のようにちょうどいいところに、「菊坂コロッケ」を名物とする肉屋があります。「まるや肉店」。毎年この菊坂コロッケを食べに来て、歳を重ねる実感を持つのです。

　お母さんが揚げ物をしていました。語り口調も動きもますますお元気です。少々世間話をしてしまい、仕事の手を止めてしまいました。ごめんなさい。
　店先には木のベンチがあり、その場でいただくこともできます。私はもっぱら立ち食いです。

「菊坂コロッケ」¥135
　肉屋ですから肉がいいんです。じゃがいもばかりではなく肉がジューシーなんです。ころももカリカリ。カレーコロッケも美味しいのですが、基本はこれ。一個じゃ足りません。
　菊坂コロッケは売り切れのこともありますが今日はツキがありました。

「ハムカツ」¥230
　足りなかったので追加でこちらを。ササミカツと迷いましたが、食べたことがなかったハムカツ。これも美味しい。ああ、ビールが欲しくなってきました。しかしまだお天道さんに申しわけない時間。我慢。しつこいですが肉屋のハムですから、間違いありません。

　お母さんはサービスしがちです。ちゃんと定価でいただきますから大丈夫ですよお母さん。でもそういう気持ちも「まるや肉店」のありようです。本郷の母、ここにあり。
　また今年も無事に歳を重ねられそうです。菊坂コロッケ、いつまでもお元気で。

　帰りは裏の細道から「炭団坂」へと入ります。そして巨木「大クスノキ」へ。本郷には開発主義が変えてはいけない文化がまだまだ残っています。「まるや肉店」もそのひとつです。