築地のカジュアル割烹 : GINZA UONUMA

豊洲市場からオーナーが仕入れる魚介がオーソドックスで安定している。カジュアルで気軽に利用できるのに、お任せコースがクラシックな日本料理というのが、築地らしくて好感が持てる。

食材のセレクトがオーセンティックで、合わせる日本酒もコストパフォーマンスが抜群。今回の向付も、真鯛、本鮪赤身、甘海老という王道3種盛合せ。築地の店らしい、豊洲市場の鮮魚の良さを最大限に活かす絶妙な熟成加減が素晴らしい。

先付は鴨肉、胡麻豆腐、白魚。スタートからクラシック。カジュアル割烹としては文句なし。茶碗蒸しの出汁も基本に忠実。鉢肴はノドグロの焼き物。これぞ、ザ・築地という皿。強肴に昔ながらのもずく酢。

油物は野菜の天麩羅。薄い衣が割烹らしい。食事はカジュアルな店には珍しい土鍋炊き込みご飯。今回は薩摩芋の土鍋炊き込みご飯が、満腹でも箸を進める。自家製の林檎のコンポートまで手抜きはない。

日本酒の品揃えが、料理に合わせた気軽なゾーンでの展開。バランスの良さには感動する。今回は作。恵乃智というところが気軽で希少。鰹政宗や川鶴の生原酒オオセトというペアリングもカジュアルなのに超こだわっている。

30年前に南青山2丁目のダイニングバー店長からスタートしたオーナーの、酒とつまみへのこだわりが素晴らしい。レストラングループの統括マネージャーから六本木のオーセンティックバーオーナーを経て行き着いたカジュアル割烹は、通が喜ぶ食材と酒の組合せをコストパフォーマンス抜群て実現する店となっている。

市場が豊洲に越してしまっても、やはり築地の割烹は鮮度が命。毎朝仕入れる豊洲市場の鮮魚と、毎日その日の分だけ炊く魚沼産コシヒカリが自慢の店。会席のコース料理はコストパフォーマンスが素晴らしい。ベテラン料理長による、その日その日の魚の目利きと、市場での人脈が為せる技。それこそが築地に構える日本料理店の最大の利点と思われる。

今回は旬の盛り、淡路島のハモ。京都で人気は2尺程度の小振りなハモだが、そのほとんどは西日本で消費されてしまい豊洲で手に入れるのは難しいらしい。今回は豊洲で一般的な、3尺程度と大き目な淡路島産活きハモ。1人前にこのハモの半分を使う贅沢な活きハモ尽しの会席コース。この時期の淡路島のハモは脂の乗りがピーク。雌は卵を抱え始めたところ。このハモ半分は、夏を乗り切るパワーを得るに十分過ぎる量となっている。

ハモの落としは量も贅沢な盛りだが、絶妙な湯引き加減が素晴らしい。ハモの最も脂の乗った状態をそのまま維持する柔らかさと旨み。これだけ美味しいハモはなかなか食べられない。本当に美味しいハモとはこのこと。会席コースは御茶出汁から始まる。八寸は新潟の茶豆が美味しい。ハモは骨煎餅とハモ鮨。軽いジャブからスタート。向付の贅沢なハモの落としに続いて、椀物はハモの土瓶蒸し。ハモの出汁が濃厚で驚く。

鉢肴はハモの源平焼き。白焼きとタレ焼きは、いずれも炭火の香りがたっぷりで火入れの柔らかさも申し分がない。これだけハモを食べた後に、さらにハモザクとハモ天が続く。ハモと胡瓜の酢の物、ハモザクのさっぱりしたハモも美味しい。口替わりにぴったり。ハモ天もハモと胡瓜を巻いて天婦羅にしている。ハモの旨みと胡瓜のさっぱりさが閉じ込められた天婦羅。

食事はハモの雑炊。天綴じのハモ雑炊だけでも美味しいと思われるが、今回は雌の卵がたっぷり。雑炊を作る前に、どんと300ｇ程度の白い鱧子を見せてくれる。これを土鍋で雑炊に煮込んでいる。鱧子入り鱧雑炊。夏のパワー補給には余りある栄養を摂取してしまう。

日本酒はこの時期、夏酒のオンパレードが嬉しい。乾杯は伊勢志摩サミットも記憶に新しい作、雅の智。世界が驚いた乾杯用日本酒。さっぱりとしていていくらでも飲めてしまう。佐賀の酒造が寿司のために醸した天吹も、ウルトラマリンは魚に合う夏用。滋賀の純米大吟醸生酒も、爽やかさが夏の訪れを感じさせる。

築地という魚の街で、全く気兼ねなし、気楽に会席料理を楽しめる居酒屋割烹。ベテランの料理長の目利きのお蔭で、コストパフォーマンス抜群のコース料理が用意されている。旬の魚をその日の市場の状況によって、季節の移ろいを感じながら満喫できる。日本酒の季節に応じた品揃えが素晴らしい。旬の食材と旬の日本酒のマリアージュが気軽に楽しめる店。居酒屋としても、割烹としても利用できる使い勝手抜群の店となっている。

淡路島産活き鱧尽くしコース　8800円
先付　御茶出汁
八寸　鱧の骨煎餅　鱧の小袖鮨
　ツブ貝　フルーツトマト　茶豆
向付　鱧の落とし
　鱧の湯引き　梅肉
椀物　鱧の土瓶蒸し
　大黒シメジ
鉢肴　鱧の源平焼き
　炭火白焼きと出汁焼き　梅肉
留肴　鱧ざく
　鱧と胡瓜の酢の物
油物　鱧天
　鱧と胡瓜の天婦羅　伏見唐辛子
食事　鱧雑炊
　鱧の炭火焼と鱧子入り　玉子とじ　
水物　西瓜

お任せの日本酒　2500円
作　雅の智　純米吟醸
　清水清三郎商店　三重県　1合徳利
天吹 ULTRA MARINE EXTRA DRY
　天吹酒造　佐賀県　1合徳利
喜楽長　夢銀河　純米大吟醸　生原酒
　喜多酒造　滋賀県　1合徳利

目利きの料理長が毎朝、築地市場から仕入れる魚が美味しい。店名には銀座が付くが、場所は築地駅から徒歩3分という別の意味での好立地。築地市場仲買いの有名どころと親しい料理長の目利きによるその日その日の魚は、季節の旬というよりその日の良い物という、魚好きには堪らない店となっている。オーナーが知り合いの農家から直接仕入れている魚沼産のコシヒカリが自慢の店。毎日精米して、その日のうちに使い切るコシヒカリはつやつやでほんのり甘い最高の味わい。

ディナーはアラカルト中心だが、予約のみ対応のお任せコースがお勧め。お任せコースの向付は当然、築地市場の今朝のお勧めがオンパレード。今回は生の本マグロが素晴らしかった。この価格のコースで、これだけのマグロが食べられるとは、コストパフォーマンスが良過ぎて驚く。噛み堪えたっぷりの分厚いヒラメもその旨みに感激できる天然物。真鯛、水蛸もぷりぷりで、軽い〆具合の鯖も美味しい。

アラカルトでもコースでも、まずは煎茶と出汁を合わせたお茶出汁が出される。疲れた胃を温めてから食事のスタート。コースの初めや途中に小鉢の椀物として、新潟名物ののっぺが出される時もある。ハモは南蛮漬け、だだ茶豆は擂り流し、しんとり菜はお浸しと、八寸が日本酒を飲むためのつまみのバリエーションになっている。向付に続いて、この店のスペシャリテの一つでもある石鍋で焼き上げた玉子焼き。美味餡掛けになっている。

焼き物はカマスの幽庵焼き。オーソドックスなコース料理の構成には、気軽な割烹にも関わらず安定感が漂っている。カマスの身の締まり具合と柔らかな火入れがさすが。止椀はモズク酢、食事の前にはこの店のもう一つのスぺシャリテとも言える牛カツ。洋食とは違う漬け込まれた味わいと柔らかい揚がり具合が日本酒の供となっている。食事は自慢の魚沼産コシヒカリを、贅沢に土鍋炊き込みご飯としている。今回は旬の盛り、松茸。香りが素晴らしい。

日本酒は全国の銘醸から魚同様、コストパフォーマンスの良い銘柄を集めている。特に米と同じ南魚沼市の蔵元、青木酒造の鶴齢は、季節ごとの旬の銘柄を揃える。この時期はひやおろしがお勧め。秋あがりも新潟の越銘醸、山城屋がラインナップされていた。魚沼産のコシヒカリに合わせる新潟の銘醸。合わないはずがない。

場所は東京メトロ日比谷線の築地駅。築地本願寺方面改札口から1番出口を出て、築地本願寺の脇の道を真っ直ぐ隅田川のリバーサイド方面へ。築地本願寺を通り過ぎて、築地川公園の先となる最初の信号を渡った左側、2棟目のマンション1階にある。築地駅1番出口からは徒歩3分と近い。

カウンターの中で渋く料理に向き合う目利きの料理長は、既に20年のキャリアを積むベテラン。築地市場近くでありながら、店名に銀座が付く理由を、次は隣りの銀座に展開したいからと笑うオーナー店長。魚沼産のコシヒカリの味に魅了され、魚沼産のコシヒカリを食べるための日本料理と南魚沼の日本酒を用意し、美味しい米と日本酒を気軽に楽しんで貰いたいと言うこの店の今後の展開が楽しみとなっている。

お任せコース　予約のみ　4800円
先付　お茶出汁
八寸　ハモの南蛮漬け
　だだ茶豆擂り流し
　しんとり菜のお浸し
椀物　のっぺ
向付　築地からの造り
　生の本マグロ　天然物のヒラメ
　真鯛　水蛸　〆鯖
強肴　石焼出汁玉子　美味餡掛け
鉢肴　カマス幽庵焼き　昆布　胡瓜
止肴　モズク酢
油物　牛カツ　獅子唐　山葵
食事　松茸土鍋炊き込みご飯
　魚沼産コシヒカリ　香の物　味噌汁
水菓子　米のアイスクリーム

鶴齢　特別純米　ひやおろし
　青木酒造　新潟県　880円/150mlグラス
山城屋　純米　秋あがり　超淡麗
　越銘醸　新潟県　780円/150mlグラス

最上級の新潟県魚沼産コシヒカリを生産者から直接仕入れ、その日使う分だけ毎日精米している。新潟名物ののっぺがスペシャリテではあるが、特に新潟郷土料理の店と言う訳ではない。最高の米に合う色々な料理とコシヒカリのための日本酒を取り揃えているのが店の特徴となっている。ランチは3種類。お勧めはのっぺにその日、近くの築地市場で仕入れた刺身がつくのっぺ定食。魚沼産コシヒカリだけでも満足してしまうのに、千円と言う抜群のコストパフォーマンスに驚く。

今回の刺身はカツオとアオリイカ。さすが築地に通う料理長の目利き。戻り初めたカツオの脂の乗りは旬の盛りで、アオリイカのトロッとした甘さも申し分ない。ランチ、ディナーともスペシャリテと言えるのっぺは、新潟郷土料理らしい魚沼産コシヒカリを主役にする控えめな出汁の軽さが良い。新潟ののっぺのように里芋は賽の目切りではない。里芋も大根、人参、蒟蒻同様、細長く切っていて上品な味わい。鶏肉に代わって魚を使っているところは、のっぺい汁にも似ている。

この日精米したばかりの魚沼産コシヒカリは、オーナーが親しい知人である生産者から直接仕入れているため、最高の物が手に入るとのこと。炊きたてのコシヒカリは艶々と輝いていて本当に美味しく、日本人に生まれて良かったと思える味がする。このコシヒカリを美味しく食べるため、のっぺも味噌汁も、煮物の小皿も、全て軽い味わいとなっていて感心する。

日本酒もやはりコシヒカリを美味しく食べられる銘柄と言うコンセプトで選んでいる。お勧めは魚沼で有名な蔵元、青木酒造が醸す鶴齢。しかもこの夏の限定酒、爽醇が置かれている。そして同じ魚沼の高千代酒造が造る、たかちよのおりがらみ。コシヒカリに抜群の相性。ディナーでは最後に鯛飯が必ずのように出ると言うのも理解できる。

場所は東京メトロ日比谷線の築地駅。築地本願寺方面改札口から1番出口を出て、築地本願寺の脇を通り過ぎて左手。築地川公園の先の左側、2棟目のマンション1階にある。築地駅1番出口からは徒歩3分と近い。

店名に銀座が付くのは、築地は東銀座の隣だからと笑うオーナー店長。青山に始まり数々のダイニングバーのゼネラルマネージャーを務め、六本木のオーナーバーテンダーから見事な転身。魚沼産のコシヒカリの味に魅了され、魚沼産のコシヒカリを食べるための日本料理と日本酒を用意し、既に20年以上のキャリアを積む料理長と二人三脚で先月スタートした築地のニューカマー。

ディナーはアラカルトでこの場所にしてはかなりの買い得価格。内税でサービス料なし、通しが3百円と言うちゃんとした料理の店でありながら気軽な設定に驚く。前日までの予約限定と言うコース料理もあり、直ぐにでもまた来たくなる貴重な築地の割烹を見つけてしまった。

のっぺ定食　1000円
のっぺ
刺身　カツオとアオリイカ
煮魚の小皿
白飯　新潟県魚沼産コシヒカリ
味噌汁　香の物

鶴齢　爽醇　特別純米
　青木酒造　新潟県　780円/180mlグラス
たかちよ　豊醇　無盡　おりがらみ火入れ
　高千代酒造　新潟県　780円/180mlグラス