점포명 |
Kiboshi shokudou
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장르 | 식당、튀긴 음식、화과자 가게 |
예약・문의하기 |
03-3850-6019 |
예약 가능 여부 | |
주소 |
東京都足立区花畑7-8-5 |
교통수단 |
야츠카 역에서 1,735 미터 |
영업시간 | |
예산 |
¥2,000~¥2,999 |
예산(리뷰 집계) |
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지불 방법 |
전자 화폐 불가 |
좌석 수 |
24 Seats ( カウンター席2 テーブル席4×2+6×1 小上がり4×2) |
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금연・흡연 |
완전 금연 |
주차장 |
불가 |
음료 |
일본 청주(사케) 있음,소주 있음 |
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요리 |
채소 요리를 고집함,생선 음식을 고집함 |
이럴 때 추천 |
많은 분이 추천하는 용도입니다. |
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위치 |
독채 레스토랑 |
아이동반 |
어린이 가능(유아 이상 가능,미취학 아동 이상 가능,초등학생 이상 가능),유모차 입점 가능 |
足立区花畑7丁目。東京23区の最北端に位置する足立区。その足立区最果ての地ともいうべき住居表示、花畑。道産子の大半は、いまやブームは過ぎ去った感のある花畑牧場から類推して、“はなばたけ”と読み間違えるかもしれないが、“はなはた”が正解だ。
6月のある日、いつものように斜に構えて、食べログに登録された飲食店をつらつらと眺めていると、木星食堂という店名に目が止まる。太陽系惑星の中で大きさ、質量ともに最大の惑星の名に因んだ食堂、ファンタジーな店名もさることながら、立地にも注目。最寄駅は東武伊勢崎線の谷塚駅。店舗情報に記載された駅までの距離から推測するに、谷塚駅からも徒歩20分以上という内陸の離れ小島。しかも谷塚駅の所在地は、埼玉県草加市という東京圏外。日暮里・舎人ライナーが開通して、区の南北に縦のラインが増えたとはいえ、そこは交通インフラがもっとも立ち遅れた足立区。まだまだバスが頼みの綱となるべき地域は、そこかしこにあるのだろう。
とある9月の週末。天気は早朝から快晴。かねてより気になっていた木星を探索すべく、事前に下調べ。その日の予想最高気温は33度。さすがに谷塚駅から彷徨うこと、道に迷って熱中症になりたくはないので、バスルートを探してみる。すると大鷲神社入口というバス停が最寄のようだ。自宅のある東向島からだと、東武伊勢崎線で北千住駅まで向かい、そこから東武バスで六町駅バス停へ。そこからまたバスに乗り換えて、花畑桑袋団地行きの終点から2つ手前で降車というルートを辿ることに。いやはや想像しただけでも、長旅の覚悟はしておいた方がよさそうだ。
数時間後、終点花畑桑袋団地のバス停に呆然と立ち尽くす私。好奇心が上回り、足立区突端の地を覗いてみたいとの思いから、敢えて乗り過ごしてみたけれど、周囲は人気のない画一的な団地に囲まれて、タバコ屋すら見当たらない。もしここが終の棲家だとしたら、切な過ぎるシチュエーション。
いま通ってきた道をとぼとぼと戻り、毛長川にかかる鷲宮橋のたもとから前方に見えるは、川岸に広がる不毛の大地で動き回るブルドーザー。地ならしをしているようだが、建設作業現場なのだろうか。この都道466号内匠橋花畑線の両脇には、金属加工業の工場や倉庫が立ち並び、ここが辺境の土地であることを再認識させられる。
すると前方交差点にようやく大鷲(おおとり)神社の案内看板が見えてきた。事前の下調べでは、この神社の近くに目的の食堂はある。交差点を右折し、しばらく進むと右手には大きな鳥居、その第一鳥居からお社までの参道の距離は、目視で200メートル以上はあるだろうか。想像以上の広大な敷地を有するが、境内に植えてあるブナやケヤキなどの樹木の数が足立区内最大規模で、50本以上を有しているという。因みに創建は不明ながら歴史は非常に古く、時は平安時代、新羅三郎義光が奥州の役に赴く途中、社前に戦勝を祈願したと伝えられている。
その大鷲神社の敷地に沿って進んでいくと、足立アパートと呼ばれる集合団地が眼前に広がっている。お目当ての木星食堂は団地の向かい側のようだ。しかしこの足立アパートと呼ばれる、昭和42年竣工の都営団地、真昼間に関わらず活気がまるでないのは何故なのか。徐々に沈んだ気分へと落ち込んでいくその時、前方に赤いのぼりがはためくのが見える。
近づいていくと、鉛色のトタンに覆われたお目当ての食堂をついに発見。2軒続いた左手は赤い庇に木星と書かれたカラオケスナック、右手は袖看板に鷲宿(わしじく)と書かれた食堂。鷲宿とは、団地成立以前の旧集落名を指しているようだ。どちらも、同一の経営者なのだろう。恐らく墨田区在住の食べログレビュアーとしては、史上初の木星探査着陸の瞬間に、興奮の波はひきも切らない。
それにしても、多少道草を食った時間を差し引いたとはいえ、自宅からはなんと約1時間30分の道のり。一応墨田区は、接線距離はわずかながら足立区との隣接区。バスの乗り継ぎも、途中の待ち時間はそれぞれ10分程度と比較的スムーズだったにも関わらず、この移動時間。さすが花畑というべきか。
食堂のファサード上部に貼られた白いプレートには、和食、洋食、中華、甘味と書かれてバラエティーに富んでいる。この周辺は飲食店はおろか商店も見当たらないが、わがままな客のニーズを満たしてきたのだろう。もしかすると、今まさに向かいにある3号棟の三十路を過ぎた欲求不満の団地妻が、店内でクリームあんみつを食べているかもしれない。唇についた生クリームを、ぬめった鮮紅色の舌で舐め回している姿を想像する不埒な私。くだらない妄想劇場が幕をあける。
引き戸を開けると、雑然とした店内には2組の客。奥の小上がりには、想像していた美しい団地妻の艶かしい姿とはかけ離れた、50過ぎの盛りを過ぎた母親と3人の子供たち。はち切れんばかりの巨乳を強調した紫色のTシャツに、緑色のタオルを首に巻いていて、自宅で寛ぐ姿そのものだ。もう片方の定年間際な親父は、刺身を食べながら、中ジョッキを傾けている。
入口近くのテーブル席に腰掛けると、奥からは色褪せたTシャツに汗染みが広がっている、大柄なご主人がおしぼりとコップに入った水をもってきた。作家・荒俣宏のように小鼻の脇のホクロが特徴的だが、見た目ひとのよさそうな表情をしている。壁一面に貼られたメニュー札を眺めると肉料理が充実しているようだ。少しだけ思案した揚句、牛すじ煮定食(750円)を選択して、しばし待つことに。
待っている間、左隣の一人で来ているチェック柄のシャツを着こなした親父を一通りチェックしていると、特にテレビを眺めるでも、新聞や漫画を読むのでもなく、刺身をビールで漫然と流し込んでいる。ほどなくして、私の頼んだ定食が到着。深皿に入った牛すじ煮とかきたま汁、小鉢とデザートにオレンジの切り身が一切れ。見た目は値段相応のようだが、まずはメインの牛すじからひとくち、思った以上に味付けはあっさりとしていて、ご飯や酒のつまみにもぴったりのようだ。ただし皿の中を探ってみると、牛すじ以外の具材は見当たらず。刻んだ葱も乾燥ねぎの如きパッサパサ。私の気分はこの近くの団地の如き、閑散とした雰囲気に染まっていく。
結局途中から脂っこい牛すじにも飽き始めて、三分の一ほど残してしまった。デザートのオレンジで口の中をさっぱりできるのが唯一の救いだろうか。会計時、ご主人に「木星(もくせい)食堂という店名は、一風変わってますよね」と尋ねてみる。「はあ?うちは、きぼしですけど」
呆気にとられる自分、これまでの大いなる勘違いは何だったのか。店を出て、ふとスタンド看板に目を移すと、店名には“きぼし”とルビが振られていた。入店時にはまったく気がつかなかったが、思い込みというのは、実に恐ろしい。予想外のオチに落ち込んだ私は、谷塚駅へと向かう足取りが一気に重たくなってきた。