想像を超える「旅」へのいざない : Syn

久々の福岡でした。

このところ、最も気になっていたレストランが

こちら。

今年6月にオープンしたばかり。

コンセプトは「旅」なのですが、

「あ～～、旅といえば、各国料理とかが

出るの？」という安易な想像は、

小気味よく、ばっさりと覆してくれます。

さすがにそう思っていたわけではありませんが

ここまで私の想像をはるかに超えてくれると、

嬉しくてたまりません。

まず、こちらのシェフ、大野尚斗さんですが、

幼いときから、とにかく食べることが大好きだったそう。

しかし、そこからが人とは全く違います。

なんと、いきなり、アメリカのＣＩＡに。

料理界では名門と言われる、

The Culinary Institute of America で、

有名シェフの子弟など限られた人しか

行けない、と言われています。

大野シェフは、その後、最も厳しいレストランで

働くことを希望し、シカゴの「Alinea」に。

それからは、スウェーデン、メキシコ、ペルー、

東南アジアなど、40以上の国で修行。

各国の料理を、シェフなりに解釈し、

オリジナリティのあるものに。


メニューには、

料理名、素材名が書かれていますが、

その横に、その料理を思いついた土地の座標と

日付が書かれています。

メニューの中には、え？　これをこうしたの？と

思える、アッと驚くお料理も。


場所は、大濠公園の南の住宅街にあります。

打ちっぱなしのエントランスを進むと、

シェフが自らお出迎え。

エレベーターで4階へ。

店内は、広々としたカウンター席になっていて、

奥には炭焼き台が設えてあり、、この日の食材の一部が

並べてあります。


では、この日のコースです。

１，Aqua Vitae
Pheasant, Duck, Aqua-Mineral

トリプルコンソメです。
　　天草大王、久米島の赤鶏、
　　和歌山の鴨、愛媛の雉を
　　使用し、２０Ｌから最終的に
　　５Lに。
　　卵白は使用せず、PHを調整して
　　透明感を出し、
　　仕上げに、シェリー酒を。

　　有田の寺内さん作の大きな陶器の
　　ポットに、
　　ミンチとともに登場。
　　美しい仕上がりで、
　　濃厚かつ気品あるコンソメです。

２，Smorrebred
pork belly, Sourdough, Fermentation

　　なんと、牛の肩甲骨と骨髄をシェフ自ら
　　磨いた器で登場。
　　古代麦のパンに、
　　キャベツ、りんごのコンフィを。
　　トップには、ドライキャベツを。

３，1170　Broadway　　
　　Beets, Smoked-creme　
　　タルトの中に、燻製クリーム。
　　ビーツで覆って。
　　
　　お料理にタイトルは、
　　シェフが最初に働いたレストラン、
　　「The NoMad 」の場所とのこと。

４，Cephalopods
Calamari, Calrbonara

繊細なタルトの中に、
　　烏賊のカルボナーラが。
　　この着想を得た時間として、
　　Jurassic と書いてあるので、
　　ん？と考えましたが、
　　頭足類、というタイトルを見ると
　　納得できます。
　　烏賊が繊細でとても美味。

５，Foie-Brest
Foie-Gras, Pistachio, White Cacao

　　パリブレストならぬ、フォアブレストで、
　　フォアグラをパリブレスト風に仕上げた
　　シェフのオリジナル。
　　フォアグラが軽やかです。

６，Ceviche
Hokki-Kai, Leche-De-Tigre

　　私の体験では、ペルーでいただいた
　　セヴィーチェは、どれもそれほど
　　感動するものではありませんでしたが、
　　この日のこれは、とても印象深いものでした。
　　北寄貝は、昆布と潮汁でマリネしてあり、
　　赤玉葱、にんにくと合わせ、
　　愛媛産無農薬ベルガモットを。
　　「虎の乳」と命名したのは、活力が
　　漲るから、とのこと。

７，Pollo Al Pastor N&V Style
Pine, Chili, Allium
　　
　　パインでマリネした鶏肉と、
　　炭火焼したパイン
　　パクチーソースで。
　　着想を得た地は、メキシコシティ。

8、!?!?!?!?!?　
　　と、メニューに書いてあり、
　　これは本当になにが出てくるのか
　　不明でした。
　　シェフが、「お口直しではなく、
　　お口こわし、です」と。
　　カンボジア産生胡椒のアイスを、
　　アマレットのムースで覆って。
　　カンボジア産生胡椒を使用するところが
　　増えてきていますが、アイスにしたのは
　　初めて見ました。
　　確かに、お口が壊れるほどの辛さですが、
　　同時に爽やかですし、アマレットムースが
　　その辛さをマイルドにしてくれます。
　　驚きの一品。

9、Sinn der Erde
　 Lotus Roots, Cachocaballo

　　「川端さんちの蓮根」をロティし、
　　カチョカバロをソースに。
　　周囲には、土に見立てたライ麦パンを。
　　蓮根の旨味は、「土」なので。

　　夏蓮根なので、土臭さは抑えられ、あっさり
　　しています。　
　　私の好みとしては、カチョカバロの
　　濃度がもっとあったほうがよかったです。

10、Butter-Aged Hanaga Beef 61 Days　　
　　Jersey, Beurre-Noisette
　
　　愛媛のジャージー牛に同じ牛のバターを塗って、
　　61日間、熟成。
　　部位は、リブロースで、
　　1切れは、炭火のみで、もう一切れは、
　　炭火と、牛と同じ牧場の牧草で燻したもの。
　　火入れが抜群です。
　　シェフは、和牛の脂がダメ、と主張。
　　和牛になれていると、ジャージー牛が
　　あっさりと感じられます。

11、Laap　　
　　 Khmer-Rabbit, Mint, Chili

　ラープという料理は、ラオスやカンボジア、
　　タイなのでも食べられていますが、
　　そもそも、お肉の中心を富裕層が食べ、
　　余ったものを、貧民が、野菜と嵩増しして
　　食べていたものがルーツです。
　　ひき肉、もやし、玉葱、に青唐辛子、
　　隠し味は、蜂蜜コラトゥーラ。

12、Transit
Green-Perilla, Genki-Tsukushi, Bluefin-Tuna

ここで、コース構成のストーリーに
　　唸りました。
　　デザート前の最後の一品。
　　「旅に出て、帰ってくるところ」を表現し、
　　ご飯を、スタートに出たコンソメでリゾットに。
　　お米は、福岡の「元気つくし」。
　　2週間熟成させた大トロの生ハムと、
　　青紫蘇の天ぷらを。

13、Stargazet
Passion-Fruit, Earl-Grey

　　イメージしたところが、
　　メニューで唯一地球上にはなく、
　　Mars になっています。
５つの花びら型のデセールです。
　　宇宙を思わせるフォルム。

14、Parfait au Lait
Milk, Ginger, white-chocolate

朝をイメージしたデセール。
　　３５％の生クリーム使用。
　　ホワイトチョコの羽根は、
　　女性パティシエが丁寧に作ったもの。

ここで、階上の個室に移り、

ミニャルディーズをいただきます。

15 , Lounge
・Cheese cake
・Florentin
・Tarte-au-Citron


お供は、
・ANGIOLINO MAULE
SASSAIA
・ガス入りミネラルウォーター

溌剌とした女性ソムリエが、

ペアリングも提案してくれます。

今回は、単品にしましたが、

興味津々です。


ミニャルディーズと、ソムリエが作ってくれた

「やさしさアールグレイ」をいただきながら、

シェフと楽しい会話が続きます。

実は、メニューには、生産者さんの名前や会社名が

列記してあり、

なおかつ、シェフは、それぞれの生産者さんと

とても親しくしているとのこと。

お互いの信頼関係があって、成り立っていることが

窺えます。

店名「Syn」も、Synphonyをイメージ。

自分だけではなく、スタッフや生産者さんとの

協同を思った、とのこと。

34歳の大野シェフ。

すでに、圧倒的なオリジナリティを創造しています。

が、ちょっと芸術家っぽさも感じさせ、

今後のさらなるサプライズを多いに

期待したいところです。

福岡に行く楽しみが増えました。