コース料理でその実力を知る : San ki

とある会の開催の為、初めての夜の訪問であります。事前に予約完了させたのちに確認事項がありましたので電話した結果、結構な大陸的でおおらかな応対を受けて、安心と不安の入り混じった幹事のカントナは、一行を引き連れての訪問をいたします。

それほど広くは無い店内の一角を確保いただいた、半個室のようなテーブル席。プライバシーが保たれる場所が確保されて、一安心のカントナなのでありました。

こちらのお店の名物は麻婆豆腐。前回ランチでいただいた甘い味付けの麻婆豆腐の印象が強くて、麻婆豆腐にはそれほど期待していないのでありましたが、料理長は「重慶飯店出身」であるとの触れ込みでありますので、麻婆豆腐以外に期待を抱いてコース料理を予約しての訪問なのでありました。

まずは乾杯から。ピッチャーではなくてグラスでお願いした生ビールは、きめ細やかな泡が素敵で美味しいのであります。

すぐに到着した前菜は「よだれ鶏」。山椒の本格的な効き具合が、「この後の料理に期待をしても良いかもな」と思わせるのでありました。そして、鶏肉もシットリと柔らかくてジューシーに仕上がっていて、口内の水分量を補填してくれる美味しさなのでありました。

本日の冷菜三種盛り。
説明は無い大陸系接客によって正体不明なものもあったのでありましたが、塊の肉々しさにしっかりした味付けと骨離れの良い叉焼が印象的なのでありました。

三熙の焼き餃子。
突如の焼き餃子。「一気に大衆的になったな」と思う餃子は一人２個。「味は付いている」と言い残して去る店員さん。パクリといたしますと、確かに美味しくいただける味が付いているのであります。肉と野菜のバランスの良い餡のジューシーさと少し厚めの皮が印象的なのであります。ご飯に合うかは分からないけれども、「ビールには断然合うな」と思う餃子なのでありました。

北海道産ホタテの大葉炒め。
「北海道産」とわざわざ謳っているホタテに期待を抱いて摘んでみますと、プリッとした食感が楽しめる厚いホタテは、「確かに北海道の出なのであろうな」と嘘偽りが無いと思わせる実力者なのでありました。そして、周囲を飾る野菜は歯ごたえがあって美味しいのであります。

地鶏の唐揚げ特製スパイスかけ。
揚げた手羽先に辛味のスパイスが掛かったものが一人１本均等で配分されるのであります。「突然寂しいのが出てきたな」と、大衆的だったり寂しかったりと、突然の変化をもたらしてカントナを驚かすコースなのであります。

そんな寂しい辛味手羽先は、適度な辛さと旨味をバランス良く配合したコンビネーションスパイスの妙なのであります。ビールを進ませる適切な味付けが好ましいのと、スパイスを全身にまとっている姿が手羽先を美しくしているのでありました。

牛肉のチンジャオロース。
「牛肉なのであればチンジャオニュウロースであろう」とツッコミを入れてしまう名称の料理は、ジャガイモで作った器に盛られてのお目見えであります。牛肉は柔らかい歯ごたえで野菜はシャキッとの対比が美味しいのでありました。

モツ麻婆豆腐。
麻婆豆腐は「挽肉かモツかどちらが良いか？」と確認されるコース。特徴的な食材である「モツ」でお願いする事にいたします。そんな麻婆豆腐はランチ時と同じように奥底で感じる甘さが印象的な濃い味付けで、辛さは控えめなのであります。本来は挽肉が入るポジションにいる「モツ」に違和感は全然無いのでありますが、「モツじゃなきゃイケない」と言う代物でも無い気がするカントナなのでありました。しかしながら、「お酒と合わせる場合にはモツの方が合うのかも知れないな」と、そのモツの可能性を前向きに考えるカントナなのでありました。

ハーフ黒炒飯。
鉄鍋で焼かれたような香ばしい風味のカントナ好みの叉焼なのであります。加えて、炒飯が黒い見てくれだけで美味しさは数倍に高まった気がするカントナなのであります。

杏仁豆腐。
大食漢のカントナももうお腹いっぱいの状況でデザートであります。いつも中華街でいただくような普通のスタイルの、気持ちがアガらない杏仁豆腐なのでありました。

お酒も料理もお腹に満足に収まってごちそうさま。麻婆豆腐は想定通りの味付けで「ランチも夜もこういう味なのであるな」と理解したカントナなのであります。それでも、期待していたそれ以外の料理はスパイスの使い方や火の入れ具合等、本格的な味わいで美味しくて「さすが元重慶飯店料理長であるな」と深く感心したカントナなのでありました。

「セルテにあった時と比べてずいぶんと味が変わったな」と評価する、馬鹿舌のカントナの足が遠のいてしまって幾年月。

お店の前を通り掛かったりしてみますと、いつも満席の人気店。そんな状況に心動かされたカントナは、久々に訪問してみる事にするのでありました。

いつも混んでおりますので少しお昼時を外しての訪問でありましたが、それでも半分くらいの入りの人気店なのであります。

カウンター席の端っこに居場所を確保して、卓上メニューを拝見いたします。オーダーするのはもちろん麻婆豆腐のランチ。追加料金を支払って麻婆増量も可能のようでありますので、増量でお願いする事にいたします。

すぐに寄ってきてくれた元気なお母さんにオーダーを伝えますと、「増量ね！増量ひとつ！」と大きな声で調理場に伝達され、調理場でも「増量ひとつ！」と復唱されるのでありました。

すっかり「増量の男」として認知されてしまった辱めを受けながら名誉と恐縮の狭間で縮こまっておりますと、調理場からは油の跳ねるサウンドが騒がしくなってきて、カントナのオーダー品の到着がそろそろである事を予想させるのであります。

待ち時間７分もかからないくらいで、例の元気なお母さん経由で提供されたランチは、麻婆豆腐、杏仁豆腐、ザーサイ、サンマーメン、ご飯の豪華ラインナップ。

そのボリュームから「食べ切れるかな」と心配になりながらも、まずは麻婆豆腐からいただいてみる事にいたします。

なんとも濃くて、なんとも甘い麻婆豆腐。セルテ時に感じたような本格派の面影はやはり無くて、辛さの要素もほとんど無い万人向けの麻婆豆腐なのであります。「重慶飯店出身のシェフが・・・」とあるのでありますが、重慶飯店らしさはどこにも感じられない麻婆豆腐なのであります。

口内が甘辛濃厚になりましたので、お次は喉を潤すスープ的な用途としてサンマーメンをいただく事にいたします。ほぼ１人前のボリュームの、気前の良いサンマーメン。適度なトロミの野菜の餡と細麺の絡まり具合、鶏ガラの醤油スープ。こちらは麻婆豆腐とは異なって、至って標準的な出来栄えなのであります。

コップが空になりかけるとすぐに水を注いでくれる観察力が高い大陸系のお母さん。先ほどの「増量コール」も丁寧さから来る勢いと誠実さなのであろうなと思う事にしたカントナは水をゴクゴクとするのであります。

盛りが良いご飯。増量の麻婆と気前の良いサンマーメンをしっかりと受け止められる盛り具合なのであります。

そんな盛り具合のレベルの高いランチに何度かギブアップしかけながらも、きっちりと胃袋に収めてお次はデザートであります。

杏仁豆腐は普通の見てくれなのでありますが、甘さへの味付けが控えめなのが口内の清涼剤に感じるカントナなのであります。

無事に完食したカントナは、胃腸を整える為に少し一息ついてからごちそうさま。お会計は別のお母さん。こちらも元気なのであります。お店を出る際には、奥からいろんなお母さんが何度も「ありがとうございました～！」の心地良さ。

甘めな麻婆豆腐への違和感は以前から変わらずなのでありましたが、味が良くない訳ではありませんので「とにかくお腹を一杯にしたい時には選択肢にあっても良いのかな」なんて事を思いながら、重い胃袋を引きずってお店を後にするカントナなのでありました。

時は平日のお昼時よりも少し早い時間。早めのお昼時間とする事にし、「いつも混んでいるお店に行こう」と思って向かった先がこちら。以前はセルテのレストラン街にあったお店。麻婆豆腐の美味しさに感激して「是非再訪を」と思っていたのでありますが、いつの間にか退店してこちらにお店を構えたようなのであります。その麻婆豆腐の美味しさはやはり有名なようで、幾つかのメディアに取り上げられたりと、カントナも嬉しい限りなのでありました。

何度かお店の前を通りかかった際にはいつも満席でありましたので、本日は一番乗りを目指して急ぎ足で向かうカントナなのであります。

待ち時間無く入店を許されましたが、残念ながら三番乗り。テーブル席に案内してもらってメニュー拝見。麻婆豆腐関連のランチを目指しておりますので、もちろんオーダーするのは麻婆豆腐セット。そんなセットには、ハーフサイズのサンマーメンにライスにデザートまで付くという豪勢な具合は、セルテの時と変わらないのであります。「変わらぬ嬉しさ」というものを噛み締めるカントナなのであります。しかしながら「食べきれるかな」とカロリー超過方面の心配を抱くカントナなのでもありました。

オーダーを通して待つ事7分程度。麻婆豆腐セットの到着であります。セルテで出会った印象的な麻婆豆腐にようやく再会なのであります。そんな麻婆豆腐は、何とも小さな器に盛られた麻婆豆腐。ハーフサイズのサンマーメンの方が大きく見えて、サンマーメンがメインに思えるくらいなのであります。加えて、セルテで出会った麻婆豆腐とはずいぶんと異なる見てくれ。肩肘張ったような、踏ん張って角ばった豆腐の具合。加えて、味噌関連が強そうな、ずいぶんと強い茶の色合い。更に、粘度の強そうな餡の具合。「何かが違うな」と、名探偵コナン的な推理を働かせつつ、一口いただいてみる事にいたします。

果たして、セルテの時のようなフルフルな豆腐では無くて、見てくれ同様の硬い豆腐。豆腐自体を美味しく感じる事は無く、スルッと入ってゆく事も無く、「どうしちゃったのか」と思うカチコチな豆腐なのでありました。餡の味わいは辛さが控えめなのは同様。しかしながら、トロミの強い餡やニンニク等の刺激系が前に出てくる様子は、セルテ当時とは全く異なるお店の麻婆豆腐であると思わざるを得ないのでありました。

サンマーメンやライスは特筆する事が無いのはセルテ当時と同様。しかしながら、やっぱりメインの麻婆豆腐に感じる格段の差には「違うお店」であると思った方が気持ちの整理が出来ると思うカントナなのでありました。