日本旅館のマスターピース : Tawaraya

部屋はむしろ質素と言える、庭は庭園のような美しさはなく、多少荒れた印象さえある
いわゆる、わびさびの世界、癒しの空間
快適さを追求しマイナーチェンジして進化してきた部屋
ちょっとした工夫が随所に見られる、半坪ほどのスタディー（書斎）、トイレ、洗い場、洗面場・・・
ただ、和の原型は譲らない

快適さでは、より良い旅館はいくつもあるだろう
大胆に西洋を取り入れれば、手っ取り早く快適さが得られる
ソファー、ベッド、水回り、玄関からロビー、部屋への導線・・・
それと引き換えに日本の宿なのかホテルなのか、アイデンティティーが失われていく
それはそれで良かろう

俵屋は快適さを犠牲にしても日本人が作り上げた形に拘っている、頑固に基本をはずさない
もちろん、塵ひとつなく、潔癖なほど綺麗に維持された部屋は十分快適である

料理についても同じである
基本に忠実に最高レベルまでに高められた技
食材も極めて質が高いことは、お造りでわかる
この日は平目、生うに。　生うには焼海苔で巻いていただく
焼き物はマナガツオの利休焼き、海老塩焼き、そのアロマ唸るほどの旨さであった
温物はぐじ鍋、焦げ目をつけたぐじは、もちろん旨いが、
願わくば、ふぐか蟹がほしい、型に外れるのかもしれないが、個人的にはそれで満点になる
デザートは定番のミカンゼリー、デザートをちまちま出す旅館が多い中、潔い

比べてしまうのは名のある他の旅館の料理、たとえば、がんばれ福島、御宿かわせみ
懐石の流れの中に、ふかひれ、フォアグラなど外来の物を、
或いは鮑、伊勢海老、和牛といった高級食材を使った独自性の高い一品を添え、
インパクトと満足感を一気に高める
俵屋にはそれが無い、淡々と受け継がれた味を再現している
しかし食べた後の幸福感は引けを取らない

そして、接客についても同じ
帰りの見送りは客が見えなくなるまで立っているという
見送られる方は気を使い、用もないのに最初の角を曲がったりする
無駄といえば無駄だが、茶の湯の様な頑固に貫く作法の一つ

大切な事は、伝統を守ること、味を守ること
日本という、和という、オリジナルを受け継いでいくこと

再訪指数 (３) 店内のグレード (４) 食材のグレード (４) 味の印象 (５) 味付けの複雑さ (４)　居心地 (４)

指数の詳細はヒサマロの自己紹介欄をご参照下さい

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