はじめにポテサラありき : Shikishunsai Ariki

おでんの語源であるオーディンは北欧神話の主神にして戦争と死の神。
古代北欧の民は凍てつく冬になるとオーディン神への畏敬の念を込め、
あつあつのおでんを食したとされます。
嘘です。

食の好みはひとそれぞれ。
育ってきた環境の違いによってセロリの好き嫌いも決まる、
と山崎まさよしもそう言っている。
自分の五つ星が誰かにとっても同じく五つ星である保証はありません。
逆もまたしかり。
それを知りつつ他者に自身の嗜好を押しつけたり、
ましてや他者の好きなものを否定したりするのは、
蒙昧なバルバロイの行いと言ってよいでしょう。
聡明なヘレネスたる読者諸兄姉、食べログ利用者各位におかれましては
個々の多様性を尊重し、相互理解を深めながら、
誰かのレビューにせっせといいね！をつけあうことで、
我が国が誇る食文化のさらなる発展に今日も今日とて
多分に寄与いただいていることと確信しております。

前置きはさておき。
ここ「ありき」は田町に店を構えるおでんと和食の居酒屋。
聞けばこの4月から磨屋町の「御馳喜々」と姉妹店となったとのこと。
ところで、皆様ご存知のこととは思いますが、私は、
その御馳喜々のポテトサラダがだいすきなのであります。
そしてそのポテサラはここありきでも食べることができるのです。

ポテトサラダといえば、居酒屋や定食屋の定番メニュー、
じゃがいもとマヨネーズを軸にした、言ってしまえば、
料理としてはかなり簡素な一品です。
いやしかし、その馴染み深さ簡単さ故に多くの人の心を掴んで離さない、
それ一皿でdancyuが一冊できあがるほどの（参考：ASIN:B005ZHFFUI）
高いポテンシャルを秘めた料理でもあります。

私の御馳喜々ポテサラへの偏愛は、他所の居酒屋さんのポテサラが全て
御馳喜々のものと入れ替わったとしても一向に構わない、という程度なのです。

このポテサラのどこが好きか。
絶妙に残されたおいもの粒感。
和風ベースの下味。
四つに切られた半熟味玉。
軽く火を通したこま切れベーコン。
全体の味を引き締める胡椒。
タマネギ、ドレッシング、なんかみどりのはっぱのやつ。

全てがちょうどいい。一緒にいて楽。
やっぱりこのポテサラが最強じゃないか。

「何を抜かすこのスットコドッコイが」
「最強は〇〇の××だろくらすぞ」
と仰る方もいらっしゃるかと思います。
仕方ない。ポテサラは仕方ないのです。
我々はどうしたって解り合えない。
お互いのポテサラを賭けて殴り合いの喧嘩へと洒落込みましょう。
バルバロイらしく。