飲むポエム : THE MUNCH

私は5点は付けたことがないのです。常に向上の余地があるだろうと思って。しかし、ミュンヒは完成された作品でした。

3杯の珈琲を飲むだけに大阪に立ち寄りましたが、行く価値ありました。ただ、好みははっきりと分かれそう。

マスターの田中さんは80歳のポエマーであり、ポエマーが珈琲家をやってる。という感じ。

石油王も飲みに来る、1杯10万円の熟成珈琲があるという話を雑誌で見て、気になっていました。

1995年6月に熟成を始めた樽熟成珈琲は28年目。1杯11万円、スプーン1杯2,500円。月に3人くらいがスプーン1杯飲むそうです。珈琲というよりは濃厚な樹液であり、複雑で深みある味わい。たしかに熟成の酒があって、珈琲がないのは変だ。

熟成珈琲は「超想定外」という位置付けとされており、たしかにこれは常識外れの感覚。

それ以外の2杯は、デミダスのマンデリン4,500円を50分掛けて1滴ずつ抽出しながら、超想定外の苦味のシングル1,500円を。

古伊万里でいただくのがそれで、ミュンヒ最初の一杯でしたが、ひんやりしつつも様々な味が行き交う。30ccの珈琲に150-300gの豆を使うらしく、かなり濃厚。

チーズケーキにめちゃくちゃ合います。例えるなら、大島の味噌ラーメンをライスが引き立てるよに、チーズケーキがミュンヒの珈琲を引き立てます。是非、ケーキと一緒に。

デミダスを抽出しながら、マスター田中さんの色々なお話を聞く。ご高齢と伺っていたが、全然元気そうで、あと20年くらい店をやりたいらしい。

ポエムについて色々とお話しいただきますが、非常にピュアなお方。他の記事にも、客にはフレンドリーにというポリシーとあり、納得。

デミダスの50分の一滴一滴の抽出は興味深く、人生、時間には勝てない。と思い知らされます。これはこれでまた複雑で色々な味がしつつかなり濃厚であり、またしてもチーズケーキによくあいます。マイセンの器で提供。

3杯とケーキで9,500円。むしろコスパ良く感じます。マスターの生き方のエッセンスを、ポエムと珈琲を通じて、教えていただいた感じです。

ただ、美味い珈琲を飲みたいだけのお客さんに、当店の真髄は理解できなそうですが、一般向けの珈琲も幅広くあり、マニア向けに限らない豊富なラインナップです。

帰りは雨だったので、駅まで車で送って下さりました。とても印象深い、異世界の体験でした。ありがとうございました。なかなか、心を、動かされました。

ポエティックな珈琲を飲んでみたい方だけに、おすすめします。消耗品としての珈琲しか知らない人生は、私は嫌ですね。

ミュンヒ体験を咀嚼するのに、まだ数日はかかりそうです。