ノア/その猛き方舟 : Sousaku Izakaya Resutoran Noa

“主は地上に増えた人々の堕落を見て、これを洪水で滅ぼすとノアに告げ、ノアに方舟の建設を命じた”

―― 堕落した人々って、お前らのことじゃない ?　10万円くれるっつったらそれは黙ってもらい、ガーゼのマスクくれるっつったら、それはお金の無駄だっていうお前らのことだよ絶対。オレなんか、去年の夏に東急ハンズで買ったガーゼのマスク、まだ使ってるよ。都合二つ手に入れてかわりばんこに。二日に一度、二枚纏めて一緒にお風呂に持って入って体洗う四角い石鹸で洗って使ってると、そんなものでも愛着が出てくるよ。裸のつき合いってやつかな。気持ち、風合いさえ出てきてね(笑)。ゴムが弱ることだけが避けられないことだけど、物には何でも寿命があるからね。人間と同じように ……

朝から雨の降り続く土曜日。
ビックカメラの上で切符をとって地上に堕ちてみても、その地階に「小洞天」さんがなくなってしまったことが悲しい。
なくなってしまったほうがよい店が潤い(こらっ !)、長きに亘ってある程度の規模をキープし、社会貢献してきた老舗が立ち行かなくなってしまうということは、協力金の迅速な支給の為とはいうものの、もうかれこれ一年経つのに何の改善もされぬままとあってはさすがに何らかの意図を感じてしまうのは、これは私だけであろうか ……

<R3.3.13>

「ノア」

仕方なくガードをくぐって外堀通り側に出て、またも「銀座インズ」という高架下を狙っていき、やはり今日もPARTⅠ、PARTⅡ、PARTⅢで言えば、Ⅱに引き寄せられてしまった私である。
頭の中では、先日安価にして実に立派な麻婆豆腐が出てきた中華料理店を狙っていたものの、その前に通過した一度訪問実績のあるBeer-Restaurantの店頭に掲げられたスパゲッティの画に強く心を揺り動かされてしまえば、もう堪らずに踵を返してしまった次第。

午後一時に約20分ほど届いていない。
奥のボックス席に先客はいるようだが、それでも手持無沙汰にしていたウェイトレス嬢に捕捉され、通路側のテーブル席に着く。
間髪を容れず注文したそのイタリア料理に対する「setでよろしいでしょうか ?」との問いかけに思わずそうして下さいと返してしまい、且つ飲み物を先に !　と宣言してしまった理由を自分でも探してみたのだけれど、どうしても思い当たらなかった(笑)

“ナポリタン/セット” @1,200也。
サラダ・ソフトドリンク付き

そば屋の倣いで、“セット”というとちびかき揚げ丼が付くのかなと思って
(んなわけない !)
オレンヂジュースを注文したら、これはカクテルに使うものの流用か、やけに果汁の純度の高い(笑)ものがやってきて、その酸味と濃厚さにちょっとたじろいだ。

―― 今どきポンジュースだってバレンシアオレンジの比率を高くして飲みやすくなってるっていうのに ……(なんて、昔のポンジュースに比べたらまだまだぜんぜん飲みやすかったけどね)　真面目に言うと、オレンヂジュースなんて果汁1%以下にしないと美味しくないのに ……(そう思うのは足立区民だけ !)
そして見るからに真っ当なナポリタンが舞い降りる !
ナポリタンにほんとうに重要なこととは、仕上がりにおいてこのケチャップソースの固さ～ゆるさの幅の範囲内の、どこにポイントを置くのか、ということに尽きると思うし、それこそがナポリタンという伝統的イタリア料理の設計思想の要となる部分であろうかと思う

イタリアでもトスカーナ地方はこのナポリタンにソースを合わせてゆく食べ方が主流であるということで、テーブルに備え付けられていた中濃ソースを部分的に試してみるが、意味は理解できたものの、それは部分的なものに留めた。

何一つ奇を衒っていないこの素朴なナポリタンが「銀座LION」さん他、マスプロダクツのそれに対し圧倒的に秀でるこの臨場感の正体を暴くということが、ナポリタンを極めるキーとなろうが、それを高次元で完成させようとしたとき、“極め”からちょっと力を抜いたところにその答えがあるということが、この料理の非常に難しいところであろう。
要は本気と適当とをクロスさせることに依り初めて成る料理だということだが、そのことを浅草のお母さんは、きっと知っているのだと思う

朝起きて飲み過ぎた感はなかった。帰りもまだ、最終のバスに間に合うくらいだったと思う ……

最近ちびっ子マイコンを手に入れて、Wi-Fiという黒魔術の効くお店にいるときにはそこでこの電子日記を更新してしまうケースも多く、撮り溜めているカメラの写真を家のマイコンに移す作業が一週間に一度。休日を利用して、ということが習慣化してきているが、その画像をチェックしていったらなんと !　その最後、撮影した記憶もないのに、魔法動物のような生きものが念写されているではないか !

そのコドナという魔法動物は(魔法動物図鑑に名前が載っていた)、向かいにソフィー・マルソーがいるわけでもないのに「ラ・ブーム」の彼のように片膝を上げたポーズを決めながら(ここで「ラ・ブーム」が出てきた自分をほんとうに褒めてあげたい !)、指先で微かにVサインを形成しているように見える ……

―― なんだこのMagic-animal !　マリー・オリギン連れて来てやっつけてもらわないとダメだ !　強力なヤツだよ !

<R2.12.26>

快速運転中の国鉄京浜東北線に乗ってしばらくはそのまま呆けていられると思っていたが、川崎の映画館で掛かると思っていた「バック・トゥー・ザ・フューチャー」　(笑/これほんと)の日付が今日ではないことを知り、いきなり焦る !!
そこで上野から神田までの間に、これはNHKで放送されたものの劇場版ということで避けていたんだけど、何かベネチア映画祭で銀獅子賞を獲得した邦画が絶好の時間に掛かっていることを見付け、東京駅で山手線に乗り換えて一つ目、有楽町で下車。
いつもの、ビックカメラの会員カードを見せると一般料金1,500円になる映画館で切符をとり、そのままそのビルの地下にあるいつもの「小洞天」さんに堕ちるに身を任せようとしたところ !

―― なんと、これはほんとうにひどい !　「小洞天」さんも閉店に追い込まれてしまっているではないか !　もう冗談じゃなく、“飲食店を追い詰めることの専門家とその愉快な仲間たち”を、ほんとうにどうやって止めたらいいんだろう ……

「創作居酒屋 ノア」

こうなったら最悪「銀座LION」さんでもいいかなと思い(こらっ !)、銀座インズ2の2階に上がってみる。
すると目の前に良さげな四川系中国料理店があって、店頭で母親と幼児がギャーギャー騒いでいる中を入店してみたはいいが、一向に(つっても10秒もないくらい)店員が姿を見せないので、居たたまれなくなって店を出る。
で、いよいよLIONちゃんかと覚悟したんだけど、その向こうに各種スパゲッティ、洋食の数々を豊富にLINEUPすると思しき居酒屋(笑)があったので、例の如く“創作”という形容に警戒しつつも、ものは試しと入店してみることにした。

そこにはこの世のすべての動物がつがいで一組づつ詰め込まれてはおらず、これでは地球は救われない !
ただ私の隣のテーブルにだけ、これはホモ・サピエンスという種類の動物であろうか、でもお互い敬語を使っている間柄なのでまだつがいではないと思うんだけど、お互いの距離を探るように語り合っていた

“スペシャルハンバーグ” @1,450也。

オーヴァルの鉄器、ご飯はお皿での提供、でありつつも、居酒屋なので箸でやらされることを覚悟していたが、ちゃんとナイフとフォウクが、捕まったレクター博士のように白い紙ナプキンでぐるぐる巻きに拘束されて出てきたことは、これは嬉しい誤算である。
おつゆはスープではなくお味噌汁。その椀にフォウクを入れることに違和感を覚えるも、その逆よりは(お皿の白いご飯を箸でやらされるよりは)些細なこと。

付け合わせはフライドポテト、サヤインゲン、とんもろこし。
御付けは天ぷら屋さんのしじみ汁やたっぷりと濃い赤出汁までには至ってなく、またそれを期待もしていないんだけど、良い意味でふつうの御付け。
ハンバーグはドミソースで、仕込み置き感に引き摺られて生々しさが若干スポイルされている一方、手作り感に溢れるもの。そして付け合わせの質(たち)は、千円札一枚程度のランチとしてはこれも良いと思う。
(実際には千円札一枚をかなり超過してるけど/笑)

こちらはメニュウ、及び店内の雰囲気を観察すると、居酒屋というよりはビヤホールのそれに近い印象を受けるが、素直に「銀座LION」さんのランチも価格的に同等となるわけだから、そう考えるとこちらのほうが全然臨場感のあるお昼ご飯にありつくことが出来ることが出来ると思う。
ハンバーグも然ることながらなんだけど、付け合わせの諸々も、少しずつその質(たち)を良くした感じなのである。
(このことは細かいのだけれど、確実にお客の満足度に直結する話なので、現状上手くいっていないお店屋さんは、原価率UPとそれに伴う顧客満足との兼ね合いを、今一度よく精査する必要があると思う)

問題点は、ビヤホールと呼ぶには些かその規模もこじんまりとしていて、方向性的にも、大雑把ではなく繊細向きなんだけど(逆にその大雑把ということがビヤホールの魅力の一つだと思う)、しかし十分にその機能を果たすと“思える”(というのは、私はそのお店の夜の部を一切、実際には体感していない為)「あづま」さんならば、“朝でも、夜でも真昼でも ♪” (朝は営ってないだろ !)同等の価格レヴェルで、もっと高品質の時間が過ごせるであろう、ということかな ……