和食店がトップ生産者の希少和牛をフルアテンドしてくれる : Nihon Yakiniku Hasegawa Bettei

新年会にしては遅いですが、1月に滑り込みです。
こちらのお店は、その月によって季節の食材でコース内容が変わるようです。

感動して色々と書きたいのですが、お料理前に少し店内の様子を…。
カウンター席に座って、まず目に入るのは圧倒的な存在感を持ったヒビの入った土壁です。
日本を代表する左官職人の久住有生氏が手掛けられています。

壁の左手に、日本家屋なら床の間のような設えを施されています。飾られているのは、節分に纏わる柊、枡に入った福豆、鬼とおかめのお面。
日本文化と季節感を感じられ心落ち着きます。

椅子や器は、世界的に有名な陶芸アーティスト・内田鋼一氏です。
nomaが東京でポップアップレストランをオープンした時に選ばれた器で、私もこの時に知って憧れていました。

目に入るもの全てが拘りと審美眼で選ばれぬかれた品で、席に座るだけでも満たされます。
なので、是非ご覧になり味わってほしいです。

さて、私の訪れたのは「睦月」ひと冬の舌鼓と銘されていました。
漆喰のテーブルには杉膳の左上に葉付きの椿の蕾が、水滴を輝かせながら鎮座していました。
まるで「貴方をお待ちしておりました」と言わんばかりです(笑)

お料理に関しては、月ごとに変わるとはいえ、重なるものもあるでしょうし、これから行かれる方の楽しみも奪うといけないので少し抑え気味に書かせて頂きます。
品数がとても豊富なので、思ったことを全部書いていたら誰にも最後まで読んでもらえないかも…と思いまして(笑)

【先附】
・ずわい蟹と雲丹
　但馬牛の贅沢軍艦巻き
美しい赤身のお肉に北海道のバフン雲丹と、ラトビア産キャビア。
海苔の美味しさも歯切れの良さも楽しんでもらいたい。金粉がめでたい年の始まりの月、1月だと知らせてくれます。

【祝い膳】
・車海老千枚漬け寿司
・金柑蜜煮
・梅花百合根
・炙り唐墨
・菜花昆布〆
・丹波黒豆
・和牛旨煮

一段重の蓋には露を打たれていて、おもてなしの心を感じます。
中にはお節の装いをした祝いの数々。
金柑の蜜煮の中にはブルーチーズが仕組んであり、斬新で遊び心もありました。
どれに箸を伸ばしても、丁寧に作られていて適度な味の濃さなのです。
聞きそびれたのですが、関西の味が主体なのかな…とも、想像ですが。
でも、お連れの方は関東の方でしたが好まれていましたので、けっして薄味なだけではないのですよ。

【御椀】
・海老芋　白味噌仕立て
独活(ウド)、芽甘草(野甘草の若いもの)、フキノトウがあしらってあり、そこまで来ている春を感じました。
揚げた海老芋が熱々でネットリしていて、ほんのり甘い白味噌仕立てが心地よい。
白味噌仕立てにされているので椀物で、お雑煮を思わせてくれます。

【御造り】
・三年虎福焼き〆（兵庫県 淡路）
・ 天然本鮪（青森 大間）
3年ものだけに身もしまっていて、薄造りより少し厚めにスライスされていますが全く固くない。
味わいがあり、淡白なフグの印象が華やかに変わりました。

【冷野菜】
・早採り野菜と旬菜のサラダ（広島県 福山）
野菜ソムリエの方が全国の農園をまわって納得された野菜たち。
青味の香るフレッシュなオリーブオイルと塩昆布を刻んでドレッシングにされているそうです。
トッピングのクワイのチップスは、お客様の間でも人気なのも納得。
これから始まるお肉の箸休めに良き友です。
そして、この銀に見える器は内田鋼一氏の作品です。個体差に手作り感があり可愛らしくて凛としたステキな器でした。
手に持つと吸い付くようなフォルムです。

【和牛】
・近江のシャトーブリアン（滋賀県 澤井牧場）
品書きに「二十九ヶ月肥育」と記されていました。目の前のロースターで、時に肉を休ませながら目を配られて焼いて下さいました。
高い位置から振りかけられた「淡雪塩」が黒い器に良く映え、儚く消えゆく雪のように口で溶けながら肉を味わえます。
まろやかな味ある手間のかかった肉と塩の共演でした。

【和牛】
・究極の神のタン厚切り
肉好きの間で話題に上がる『神谷商店』のタン。
このお店と取引があることで店の信頼度が上がります。
タン元の柔らかさと肉の繊維、そして焼き加減は至福そのものです。

【凌ぎ】
・黒鮑と黒毛和牛のリゾット仕立て
蓋付きの器で、お品書きには凌ぎと書かれたご飯物。
鮑は岩手の三陸で、肝も使われているのかな？
コクがあり、牛と混ぜ合わせて山葵と穂紫蘇で頂きます。

【和牛】
・究極 神のハラミ
こちらも『神谷商店』のハラミです。
絶対の自信を持つハラミを丁寧に焼いてくださり、麦味噌と揚げた玄米のチップとでリズミカルに頂きました。

【和牛】
・近江牛フィレ肉（滋賀県 澤井牧場）
文句ない柔らかさと肉の旨味、それに有明産の一番海苔の佃煮を付けて頂きます。
それぞれの部位をいかにして美味しく、何と合うかを探求されています。
しかもその工程を楽しそうにお話されるのに感銘を受けました。

【箸休め】
・新筍 木の芽焼き（鹿児島県 出水）
南の方から、もう筍は出荷され始めているのですね。
目の前の七輪で香ばしく焼かれたエグみの少ない筍は木の芽が良く合います。
シンプルで贅沢な季節の贈り物です。

【和牛】
・神戸和牛サーロイン（川岸畜産 三十五ヶ月肥育）
焼きの最後に、紀州備長炭で表面を焼かれます。
それを霜仕上げと呼ぶようです。
自然薯と地辛子醤油を混ぜたもので、トロミと刺激も良く合います。

【強肴】
・神戸和牛リブロース（サーロインと同じ）
　虎福白子焼き　すまし仕立て
大判、薄切りのサシが美しく入ったリブロースを優しく火入れしてくれ、串焼きで焼色を付けた白子と一緒に澄まし仕立てで頂きます。
この、お澄ましの出汁がとても美味しい。
白子はまるで焼き餅のような見かけで、食べるとモチモチ。柔らかいリブロースと交互に食べる幸せよ。

【食事】
喜知次(きんき)とコシヒカリで炊き上げる土鍋御飯
北海道 根室のキンキは皮を香ばしく焼いてあり、滋賀県産のお米と炊き上がりをよそってくれます。
お腹いっぱいでしたが、スルスルと食べてしまいました。余裕があればお代わりも聞いてくれます。
香の物もちゃんと出してくれます。

【水菓子】
・自家製和菓子「花びら餅」
　福岡 あまおう
　プレミアムアイスと、かるた最中の皮
かつては宮中でしか食されなかった、正月を代表する 花びら餅。
今年は食べていなかったので嬉しいサプライズです。しかも、ゴボウだけでなく人参も甘くしてあり豪華で白味噌餡も美味しい！

・宮崎県産の極上抹茶
薄茶を点てて下さって〆となりました。
抹茶碗も内田鋼一さんの作品です。
この器で一服いただける日が来るなんて！
まるで長き時代を経てきたようでもあり、それでいて清潔感のある風情あるお茶碗でした。

なんて心遣いのこもったお料理。
そしてサービスの方も熱のこもった説明で、大変賢くなり興味も深まりました。

料理人の方も楽しませて下さりサービス精神が素晴しいです。
こんな敷居の高そうなお店なのに、肩肘張らず満喫させて頂きました。

来店時はビルの一階でお店の方が待っていてくださり、寒い中を感謝いたします。

○ワインはお店の方とお好みを相談しながら
シャンパン
白ワイン（ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン）
赤ワイン（イタリアのメルロー）

○ノンアルコール
ワインボトルに入ったお茶で、単一農園の茶葉を手摘みしたロイヤルブルーティー。
最初は、烏龍茶
ジャスミン茶
緑茶
どれもフレッシュで香り高く、水色も美しい。
お料理に合うのにも驚きでした。
栓がコルクでなくガラス栓なのも美しかったです。

トップ生産者が育てた長期肥育希少黒毛和牛を体験できるだけでなく、和食ももてなしも一流でした。
また、季節を変えて訪れた時には、どんな驚きを見せてくれるか楽しみです。