素材の持ち味を丁寧に活かして構築された料理はいずれも品格を感じさせる出来栄え。
この日はグルメな友人たちにお誘い頂いて麻布十番へ。
例年この時期は友人たちとゴハンやら忘年会を楽しんでいたのですが、こんなご時世で忘年会は自粛。
その代わりと言ってはなんですが、この夜は1年の締めくくりにふさわしい上等な料理を楽しむことにしたのです。
訪れたのはこちら。
麻布十番駅から十番商店街ではなく赤羽橋方向に歩き「中國飯店」グループのフラッグシップたる「富麗華」を越えてすぐ。
フレンチの名店「ラ・リューン」。
ディナーのコースは前菜3〜4皿とメインディッシュ1皿からなる「menu Saison」(8,500円)と、メインディッシュが魚料理、肉料理の2皿となり「ラ・リューン」のオススメのメニューを中心に組み立てられた「menu La Lune」(10,000円)の2種類。
そう言えば、最後にフレンチを食べたのはいつだったろう。こんなご時世でたまの贅沢だから良いですよね?
「menu La Lune」(10,000円)、行っときますか。
前菜のひと品目は「ラ・リューン」のスペシャリテ。
・雲丹とカボチャのソルベ 茄子の煮浸し コンソメジュレがけ ライム風味
雲丹の濃厚な甘さと南瓜のふくよかな甘さ、ふたつの異なる甘みから構成される前菜ですが、南瓜はソルベにされているためその甘さにすっきりとした切れ味が有り雲丹の味わいを引き立てます。
スペシャリテらしい完成度を誇るひと皿。
温かい前菜は鮑から。
・アワビの海藻バター焼き バルサミコ風味の肝のペースト
鮑の滋味に、バターと肝のペーストの芳醇な香りが添えられた格調高い前菜です。
・フレッシュフォアグラのポワレ 旬の野菜との組み合わせ
この日のフォアグラは栗のムースと合わせられていました。
フォアグラの濃厚な旨味とねっとりとした舌触り、そして滑らかな栗のムースの舌触りと上品な甘さが一体となってリッチな味わいを醸し出し、シードルビネガーの風味がそれぞれの食材を爽やかにまとめあげています。
・藤本さんの獲った神経〆のお魚 〜今治より〜
結論から書きますと、この魚料理が実に上等でした。
個人的な嗜好で言いますとどちらかと言うと魚料理<肉料理なので、たいていいつも肉料理のほうが食後感としては強いのですが、今回いちばん印象に残ったのがこのひと皿。
この夜の使われていた食材は今治の鱸。「藤本さん」とは今治のカリスマ漁師で、この方の獲った魚はたいへん貴重なものと言われています。
初夏から夏に掛けてが旬と言われる鱸ですが、この日の鱸は身にしっかりとした鱸らしい味わいが感じられる上等なものでした。
パリッと香ばしい鱗としっとりと繊細な食感の身はコントラストが鮮やか。
蛤の風味のソースも滋味深く上等です。
ちなみに神経〆めだと鮮度を長く保てると言うメリットがあるそうです。
良い獲り手の技と、良い作り手の技がひと皿の中に結実した作品です。
・季節の小さなスープ
ポルチーニ茸のパウダーが振り掛けられた小さなスープ。
優しくも香り高いスープに肉料理への期待が高まります。
・岩手産 短角牛のポワレ ポワブルキュベベ
「ラ・リューン」を訪問するときはたいてい肉料理にジビエを頂いていて、この日もコースメニューの肉料理をジビエに変更することもできるとのことだったのでちょっと悩んだのですが、たまにはジビエ以外のものも良いかな、と思い、コースに組み込まれている短角牛のポワレを変更せずに頂きました。
ポワレされた短角牛からは、たっぷりとしたポーションとしっかりとした身の食感が相まって肉を喰らう喜びが感じられます。食べ応えがありますね。
ソースはフォン・ド・ヴォーを使ったもので、格調高くシェフの丁寧な仕事ぶりが伺える上質なテイスト。
非常に良質のメインディッシュでしたが、前に頂いたジビエのウマさを思い出すにつけ、やはりジビエを選んでも良かったかな、と言う気持ちがふと鎌首をもたげるのでした。
ジビエはまた次の冬の楽しみに取っておきましょうかね。
・紅玉りんごのオーブン焼き タイムソルベ
パリッとキャラメリゼされた表面を割るとりんごの中にはクリームブリュレ。
充実したコースの締めくくりにふさわしい上質なデセールでした。
久しぶりに訪問した「ラ・リューン」でしたが、相変わらずの料理のクオリティに大満足。
奇を衒い過ぎることなく、ひとつひとつの素材の持ち味を丁寧に活かして構築された料理はいずれも品格を感じさせる出来栄えでした。
麻布の良心ですね。
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・店名 ラ・リューン
・住所 東京都港区東麻布2-26-16
・電話 03-3589-2005
・備考 麻布の良心。
・参考記事 2015年02月13日「東麻布 ラ・リューン(前編)」
2015年02月16日「東麻布 ラ・リューン(後編)」
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全編はこちらから…随時更新LifeTeriaブログ。
https://www.lifeteria.com/2020/12/21/01/
作り手の狙いがきっちりと一皿の上に収斂している、実力派フレンチレストラン。
【2015年2月訪問】
珍しく本日はちゃんと仕事をしようと思っていたのです。いやたまにはね、仕事しないと怒られちゃいますから。すると昼頃に、食べ友よりこんなメッセージが。
「ラ・リューン、電話したら兎、真鴨、カルガモ、鳩、山鴫(やましぎ)があるって」。
…。…。お…お金…降ろしてきます。
「ラ・リューン」は東麻布の住宅街のなかにひっそりと佇むフレンチの名店。
ジビエの種類が豊富なので、毎年この時期になると訪問したくなるレストランです。
前菜ひと皿、スープ、メインディッシュ、デセールという組合せで5,000円からとリーズナブルなコースも用意されていますが、この夜は7,500円の「2月のコース」を。
このコースは旬の食材を使った月替りのコースで、魚介の前菜が二皿、フォアグラを使った前菜が一皿、スープ、メインディッシュ、デセールという構成。
前菜はシェフのおまかせになりますが、メインディッシュとデセールを選択するスタイルです。
・アミューズ
・今治からの二皿
・フレッシュフォアグラのポワレ
アミューズはこのレストランの定番、「安納芋と牛蒡のパウダー」。小さなガラスの器には畑の土に見立てた牛蒡のパウダーが満たされています。
「今治からの二皿」の一皿目、まずは鰆の燻製に大根とカカオのピュレを添えて。
ごく軽く燻煙香をまとわせた鰆の上には牛蒡のチップ、下には大根。シードルを使ったソースと大根とカカオを組合せたピュレで頂きます。どことなく和のテイストを感じさせる仕上がり。そしてカカオを使ったピュレ、これは意外性があって楽しいですね。
蛸の燻製にビーツのピュレとスペイン産の唐辛子を添えた小さな前菜をはさみ、二皿目は柔らかく火を通したアワビの肝和えに焼き山芋とそのペーストを添えた前菜でした。
サザエのソースには肝を使っていますが、濃厚でありつつも雑味がなく、丁寧に作られた様子が窺える上質のソース。肝から想像されるような苦味はまったくありません。
そして特筆すべきは山芋のウマさ。シャキシャキした食感をことさらに強調するような仕上がりで山芋の素材感を存分に楽しめました。
続く前菜は「フレッシュフォアグラのポワレ」。
この日は葱とグリーンピース、そしてピスターシュを使ったソース。そしてフォアグラの上には黒トリュフ。
このような組合せのソース、フレンチでは記憶にありません。
軽い印象のソースですが、これが不思議なことにフォアグラの力強さにまったく負けていないのですね。
前菜はいずれも素材の組合せの妙を楽しめる秀逸なものでした。
・冬野菜の根と茎のエッセンス
〜大根、セルフィーユ、ほうれん草、ネギ、オキサリスなど〜
・メインディッシュ
〜スコットランド産 山シギのロースト〜(+2,500円)
・デセール
〜紅まどんな(オレンジ)とプラリネクリーム ショコラブランのソース ローリエ風味〜
前菜に続く料理はご覧の通り「根」と「茎」を大胆にあしらったスープ。
素揚げにされた根から感じるほろ苦い「土」の味に対し舌に広がる思いのほか強い甘さのスープのコントラストがおもしろいですね。
そしてお待ちかねのメインディッシュ。
この時期に「ラ・リューン」を訪問するからには、ジビエを食さずに帰るわけにはいきません。
本日のジビエは「鹿児島産 仔バトのロースト(+1,500円)」、「鹿児島産 カルガモのロースト(+1,800円)」、「鹿児島産 マガモのロースト(2名様で+3,600円)」、「山梨産 リエーブルロワイヤル(+3,500円)」、そして「スコットランド産 山シギのロースト(+2,500円)」の5種。
以前に食べたリエーブルのロワイヤルは非常に美味でもう一度食べたい。
でもカルガモのローストってどんな味がするのだろう…これも気になります。
気持ちは千々に乱れますが、この夜は「山鴫(やましぎ)」をチョイス。
「山鴫」はジビエ好きを虜にするその風味からジビエの女王とも呼ばれ珍重される食材。
皿の向こう正面が山鴫の頭部、長く尖ったくちばしが山鴫の特徴ですね。
その肉の風味をひと言で表現すると芳醇。
そしてその芳醇な肉を、これまた香り豊かでコクのあるソースで頂きます。
ソースについては「さまざまな材料に加えて、フォアグラも使っている」ということで、その組成について詳細には教えて頂けませんでしたが、おそらく山鴫の内蔵、骨などを使っているのでしょう。さまざまな旨味が交錯しつつ、山鴫の芳醇な身の味わいにさらに深みを与えています。
非常に満足感のあるメインディッシュに添えられたガルニチュールは、ほうれん草が根を上にしてドカンと別皿に盛りつけられているという大胆なプレゼンテーション。このほうれん草も「根」が甘く美味なのです。
デセールは「紅マドンナ」というオレンジがあしらわれています。素材そのままの果実かと思いきや、いちど真空パックにしてジュレのような食感に変えたもの。おもしろいですね。
今回頂いた「2月のコース」を頂いて感じたのは、ひとつには「素材感の強調」、ひとつには「フレンチのテイストに捉われない自由な発想」という2点でした。
後者のような手法は、ともすると実験が実験で終わってしまい、完成度の面で疑問符がつくレストランもありますが、「ラ・リューン」の場合は永田敬一郎シェフの確かな実力もあり、作り手の狙いがきっちりと一皿の上に収斂しているように感じました。
非常に満足なディナーでした。
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・店名 ラ・リューン
・住所 東京都港区東麻布2-26-16
・電話 03-3589-2005
・備考 麻布の良心。料理に安定感があります。
・オススメ ☆☆☆☆★
(4点:誰にでもオススメ!)
・参考記事 2012年02月23日「東麻布 ラ・リューン(前編)」
2012年02月24日「東麻布 ラ・リューン(後編)」
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全文はこちらから…平日は毎日更新LifeTeriaブログ。
【前編】
http://www.lifeteria.com/2015/02/13/01/
【後編】
http://www.lifeteria.com/2015/02/16/01/
店名 |
La Lune(La Lune)
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類型 | 法式 |
預約・查詢 |
03-3589-2005 |
可供預訂 |
可以預訂 |
地址 |
東京都港区東麻布2-26-16 |
交通方式 |
都営大江戸線「麻布十番」6出口3分 距离麻布十番 353 米 |
營業時間 |
營業時間和假日可能會發生變化,因此請在用餐前諮詢餐廳。 |
預算 |
¥10,000~¥14,999 ¥6,000~¥7,999 |
預算(評價匯總) |
¥10,000~¥14,999¥6,000~¥7,999
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付款方式 |
可使用卡 (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners) 可使用電子錢 (Suica等交通系電子貨幣、QUICPay) 无使用二维码支付 |
服務費收費 |
昼5%夜10% |
座位數 |
10 Seats |
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個人包廂 |
不可能 |
包場 |
不可能 |
禁煙・吸煙 |
嚴禁吸煙 |
停車場 |
不可能 近隣にコインパーキング有り |
空間、設備 |
時尚的空間,平靜的空間,座位寬敞 |
酒水 |
有葡萄酒 |
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料理 |
對蔬菜菜式講究,對魚類料理講究 |
此時建議 |
許多人推薦的用途。 |
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位置 |
神秘不為人知的餐廳 |
關於兒童 |
乳幼児・小学生不可。 |
網站 | |
開店日 |
2002.10.21 |
備註 |
ランチはカード10000円以上から |
この日は忘年会第1弾と言うことでグルメな友人たちとちょっと豪華なランチを食べに出かけたのでした。
向かった先は東麻布。
麻布十番駅から赤羽橋方面に歩き、「富麗華」を横目に見ながら通り過ぎ、移転した「日進ワールドデリカテッセン」の手前を左に折れたあたり。
麻布の実力派フレンチ「ラ・リューン」。
「銀座はち巻岡田の鮟鱇鍋を食べないと冬が来ない」と書いたのは直木賞作家で食通の山口瞳氏でしたが、ぼくの友人は「ラ・リューンのジビエを食べないと冬が来ない」と言います。
そう言えば前回「ラ・リューン」を訪問したのも冬でした。
ランチはmenuA(4,950円)とmenuB(7,700円)の2種類なのですが、この日はmenuBをベースとして、前菜にシェフのスペシャリテ、メインディッシュにジビエを入れて少しカスタマイズして頂きました。
前菜の前に「突出し」と紹介されたのがこちら。箸で頂きます。
・わかさぎのフリット、イタリアのサラミ、ピクルスとパルミジャーノレッジャーノ
これ、呑兵衛にはたまらないセット(笑)。
前菜のひと皿目は本来はmenuBには入っていない永田敬一郎シェフのスペシャリテ。
・雲丹とカボチャのソルベ 茄子の煮浸し コンソメジュレがけ ライム風味
魚介と野菜、コンソメジュレと言うコンビネーションはほかのレストランでも見かけますが、こちらでは茄子を使っているところがユニークですね。
雲丹の濃厚な甘さと優しいカボチャの甘さ。そしてすっきりと味を引き締めるライムの酸味。
いつ頂いてもスペシャリテと呼ぶにふさわしい完成度に感心します。
次のひと皿目が本来はコースのひと皿目の前菜。
・ボタンエビ ビーツとフランボワーズ
赤で統一された鮮やかな色彩に目を奪われるひと皿、艶やかなジュレに透けて見えるのは牡丹海老。
牡丹海老の持つ素材の甘さとビーツの淡い甘さ、そしてフランボワーズの華やかな香りのコンビネーションがユニーク。
・フレッシュフォアグラのポワレ 栗のピューレ
可憐なビジュアルのひと皿の次は一転してクラシカルな趣の有るフォアグラのポワレ。
シードルビネガーの爽やかな酸味がフォアグラの重量感ある風味と栗の滋味深い甘さを引き立たせます。
そしてお待ちかねの肉料理。
・蝦夷鹿と牡蠣のポワレ ソースポワブラード トリュフ風味
menuBの本来の肉料理は岩手産の短角牛のポワレ。
そちらも捨てがたいのですが、本日はジビエに変更しました。
「ラ・リューンのジビエを食べないと冬が来ない」ですからね(笑)。
この日の蝦夷鹿のポワレには「シンタマ(芯玉)」と呼ばれるもも肉の部位が使われていました。
そして蝦夷鹿の上には牡蠣、ピエブルー(紫しめじ)、タルティーボと言うコンビネーション。
蝦夷鹿のシンタマはしっとりと繊細な食感でした。
味わいもあっさりすっきりとしたものなので、ジビエらしい力強さを期待すると肩すかしを喰らいますが、先入観なく頂くのであれば実に上品で洗練された味わいを楽しむことができます。
ソースは鹿肉には定番の、胡椒の風味を効かせたポワブラードですが、そこにはふんだんにトリュフが投入されていてリッチな風味を加えています。
充実したランチの最後を飾るデセールがこちら。
・和栗のモンブラン ヨーグルトソルベ
このモンブランが絶品でした。
正直、モンブランってそんなに好んで頂くガトーではないのです。栗のペーストがもそもそしていたり、甘さが重すぎたり、モンブラン全般にあまり洗練された印象を持っていなかったのがその理由です。
しかしこのモンブランの完成度には脱帽。
滑らかで栗の風味をしっかりと残しながらもスッキリとした甘さに抑えられたマロンペーストに、軽やかなメレンゲ。かように洗練されたモンブラン、初めて頂きました。
すばらしいコースに本日も大満足でした。
ひと皿ひと皿の料理から食材に対する深い洞察が感じられる点も「ラ・リューン」の美点でしょうか。
一例を挙げると、たとえば牡丹海老を使った前菜。
単にビジュアルのインパクトを狙って赤い素材を組み合せているのではなく、そこには同色系統の食材同士は相性が良いのではないか、と言う永田敬一郎シェフ独自のインサイトが込められているそうです。
確かな技術に裏付けられた芳醇な味わいが楽しめる麻布の佳店です。
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・店名 ラ・リューン
・住所 東京都港区東麻布2-26-16
・電話 03-3589-2005
・備考 麻布の良心。
・参考記事 2020年12月21日「東麻布 ラ・リューン」
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全文はこちらから…随時更新LifeTeriaブログ。
https://www.lifeteria.com/2021/12/13/01/