正乃家/straightの二八 : Masanoya

晴れると言ってたのに、今にも雨が落ちてきそうな暗いまだら模様の空。
仕事納めの本日。午後からの大掃除もちょっと不安要素はあるが(手を抜けない性格の為にハッスルしすぎてしまい、突如人生最大の腰痛が発症し、せっかくのお盆休みの2/3ほどを極めて過酷なものにしてしまった経験あり)、そのあとの納会で悪酔いして笑うに笑えないような険悪な状況を招き、連休中ずっと憂鬱な日々を過ごすということだけは避けなければ、という恐怖に苛まれつつ、例の直線的商店街を流していた

<R1.12.27>

「正乃家」

午前11時半。
時間きっかりかわずかに届いていないか、暖簾はまだ掛かっていなく、年嵩の女性二人連れが開店を待っているようだったので数歩通り過ぎ、先にお散歩写真をテイクしておこうと思ったら、お店が開いたよう。足を踏み入れると、ホールのお兄さんはインターコムの調整に余念がなく、仕方がないので「一人ですけどいいですか ?」と声を掛ける。
BGMは、なんか鳴ってるけど小さすぎて分からない。
店内は綺麗で、まだ新しいか、もしくはリニュウアル後それほどは経過していないと思われ、要は佇まいとして熟成しておらず、またテーブルは品書きをサイドに突き刺せるような作りとなっており、それらの相乗は、これは日本そば屋として些か興醒めする部分となろう。

湯を沸かしているのか油に熱を入れているのか、料理の提供には少々時間がかかっているようだが、その間に数組のお客が連なって、地元の人気店として十分に機能している様子が読みとれた

“ざる” @680
“半天丼” @700

先ずおそばの量はなかなか。
海苔は“ざる”として最もふつうの、巾広くも細くもなく揃って機械切りか鋏切りされてたっぷりと。白さが特徴的なずんぐりとし、且つ変則的凹凸の形作られた徳利から、つゆを、やはり徳利と同じ意匠の、こちらはラッパのように口を広げた猪口に注ぎ、そこへそばを、先ずは思う存分おとしてやってみる。
こちらは品書きに目を通したところ他に更科そばを揃えるが、私の注文は標準仕様の二八そば。ながらその質は十分に良く、のど越すときの海苔の心地良い抵抗感を楽しむ。

天丼もご飯、丼つゆともに理想的な仕上がりでふつうに上手い。
ご多分に漏れず海老だけが例のリン酸水加水のものであったが、確かに海老は天丼の主役だと思うけど、こういったコストの制限を受ける小さな丼においては、これは致し方のないこと

一つだけ、やはり猪口のディザインがこれは良くなく、肉厚で持ち重りし、口あたりも疑問だし、畳み掛けてとりわけこの季節、そば湯の熱を奪ってしまうもの。
東十条にもそれを間違えているそば屋を知っているが、それはその店のご主人が焼いている器であるんだけど、こちらのものは、果たしてどうなんだろうか ……

私の右手の卓には杖の老人と、そのお嫁さんであろうか、揃って天せいろうをやっている姿が。そして目の前の卓には年嵩のご婦人方が、揃っておかめそばを。それを日課としておられるのか、またはたまにの贅沢なのか ……
そんな風景をぼぉっと眺めつつ、なんとはなしに自分の人生のこれからを想ってみたりするんだけど、それはとうとう像を結ばぬまんま ……