この店ではご主人こだわりの蕎麦を味わうが吉 : Kichijouji Echigoya

本日の蕎麦の産地は北海道。
「もうじききたわせっていう種類が出ましてね。これが一番多く出回る蕎麦粉なんですが、今日のレラノカオリというのはそれに負けないものをということで作られた蕎麦粉なんですよ」。
「甘みがありましたか？蕎麦も粉によって味が違いましてね」。
「つゆのベースはせいろのつゆも同じなんですが、鴨と葱を入れるだけで味がガラッと変わるんですから面白いですねえ」。

勘定をするときにちょっとご主人に話しかけると、次から次に蕎麦の話が出てきました。
ご主人の蕎麦愛を感じる店です。

吉祥寺の中道通りを西へちょっと進んだところにあるビルの地下にある店。
急な階段を下りてやってきました。

開店して一年少々であるせいか清潔感のある店内。
カウンター席が3席に、4人掛けのテーブル席が３つ並んでいましたが、コロナ禍で席数を減らしていたのでしょう。
18時過ぎの入店で先客は3名。
「どこでもお好きなところへどうぞ」と言っていただいたので、4人掛け席の一つに座らせていただきました。
テーブルにはアルコールスプレーも置かれています。

この店の蕎麦は、生粉打ちのせいろ(1,200円)と鴨南せいろ(1,900円)の2種のみ。
酒はありますが、肴はありません。
そこで、素直に鴨南せいろをいただくことにしました。

注文を受けてから蕎麦を打って三たてを提供してくれるのだそうです。
15分ほどで先客の方から順番に配膳されていきました。
ご主人のワンオペですので、先客の方はもう少し待たされていたのかもしれません。

朱塗りのせいろの上に乗った蕎麦は、大盛？と聞きたくなるような盛りの良さ。
太さのバラつきもなく、中太のキレイに切り揃えられた蕎麦が、老舗の2倍近い量で盛られています。
「最初は一口そのままでどうぞ」というご主人の勧めに従ってまず一口。
蕎麦のたおやかな風味と甘みが口の中に広がっていきます。
この旨さについもう二口そのままで食べてしまいました。

つゆは鴨がなければけっこう辛いのではないかと思えるのですが、鴨の旨味が溶け込んでその分甘みが出ています。
すごいコク。
出汁もしっかりしているのだと思います。
鴨の脂を吸い込んだ葱は、まさにカモネギもの。
これだけ濃い口のつゆにつけても蕎麦の甘味をきちんと感じられました。

きちんとした仕事の蕎麦で量もしっかりあるせいか、自然体の蕎麦湯まで飲み干すと十分満腹。
蕎麦前を楽しんでしまうとこれだけの量の蕎麦は食べきれないかもしれません。
ご主人こだわりの蕎麦だけを存分に味わうために、蕎麦前は充実させないというこの店の戦略かと深読みしたくなります。