アルザス?の田舎の湖畔のような風景と、繊細で優美なフレンチ
地産地消を掲げる、ミシュラン1つ星&グリーンスターのフレンチレストラン。富山の野菜と海の幸を中心とした食材をふんだんに盛り込んだ料理は、繊細で優しく美しい。南砺市の城端駅から約5km、山裾の景勝・リゾート地「桜ヶ池」のほとりにあり、自然豊かな景色が素晴らしく、遠くから足を運ぶ価値がある。
【料理、味】
ランチは、4,800円、6,400円、10,000円(別途消費税+サービス料10%)の3種類。ディナーは6,400円、10,000円の2種類。今回は10,000円(税サ込み12,100円)を選択。全体的に、素材を生かしたやさしい味つけで、多くの食材やエディブルフラワーを1皿に盛り込み、エレガントで美しく変化に富んだコースになっている。
1.フォアグラのテリーヌとパンデピス、イチゴのマリネとコンフィチュール、セイジの香り
フォアグラは、しっかりした密度と歯ごたえがあり、甘みよりもやや塩気を感じる。フォアグラの土台になっているパンデピスは、タルト生地のようなしっとりした歯ごたえと甘味があり、ピスタチオらしきものが混じっている。口の中で2つが混ざると、フォアグラの濃厚さが和らいだ重層的な味と食感になる。
2.新玉ネギのローストとスープ、黒トリュフと生ハム添え
新玉ネギのスープは、水を使わず玉ネギの水分だけで作ったスープ。新玉ネギらしき甘味ととろみがあり、全体的にはバターとクリームベースのポタージュのような味わい。真ん中の焼いた玉ネギは、皮1枚1枚に、薄くスライスした黒トリュフを細かく散りばめて挟み込んであり、新玉ネギの甘味としゃきしゃき感に黒トリュフのほろ苦さが加わる。
3.パン2種
天然酵母を使った全粒粉の自家製のプランスパンは、当店がプロデュースする「スリジェ」で製造したもの。熱々で、塩気よりもほのかな甘みがあり、外側の皮もそんなに堅くなくて食べやすい。
豆乳パンは、南砺市の村田食品の豆腐を使用。皮は薄くてふわふわに柔らかくて甘みがある。
4.ボタンエビとアスパラガス、卵黄のコンフィを添えて
ボタンエビは新湊産。身が固まらないように火が通りきるギリギリ手前で止めたような、火は通っているが生の鮮度を感じる火入れで、非常にふっくら柔らかい。アスパラガスは、川端農園のもので、味が濃くて甘みがあり、みずみずしくシャキシャキした食感。卵黄のコンフィ(オイル漬け)は、初卵(若鶏が卵を産み始めて1カ月ぐらいまでのもの)を使っていて、濃厚でとろりとして、オリーブオイルの塩味を感じる。皿全体にカラスミをちらし、アスパラにはウニを添えている。
5.アナゴのグリエ、山菜と魚介のスープ
アナゴは、ハモのように骨抜きし湯引きして焼いたもの。ほろほろと柔らかく、味わいはわりと淡泊。アナゴの上と下には、菜の花、ぜんまい、ワラビ、大麦など。器の底の方には魚介のスープがはってあり、山菜の色と香りが融合して、魚介の旨味に春らしいほのかな苦みが混じった奥深いスープになっている。そのスープを吸った大麦のぷちぷちした食感が楽しい。
6.ヒラマサのグリエ、ウドのサラダとラディッシュ、トマトのソースを添えて
ヒラマサは、腹身の部分を、周りだけあぶる「瞬間グリエ」したもの。「千華園」の花がヒラマサを覆い隠している。火が入っているのは、うっすら表面だけで、ほぼレアに近い。肉厚で柔らかい身にナイフがすっと入り、断面はきれいな淡いピンク色。表面の香ばしさが最後まで続き、ハラスの部分は脂が乗っている。サラダ仕立てのウドは、かんぴょう状にスライスしてあり、少し苦みがある。また、ブラックオリーブをローストしたものを細かく砕いて散りばめている。さらに、さっぱりした味のヴィネグレット・レギューム(パプリカなどの野菜を細かく刻んでヴィネガーなどで調理したもの)と濃厚な旨味が凝縮したラビゴット(野菜をみじん切りにして香草を合わせたもの)が、さりげなく添えられていた。
7.マハタのポワレ、サフラン風味のリゾットとともに
マハタは、皮目はパりっとして、身はぷるんとした弾力がある。リゾットは、神田農園の自然農法の米を使用。五箇山のススタケを輪切りにして混ぜ込んで食感のアクセントを加え、ブイヤベースのスープを合わせた。
8.黒毛和牛のロースト
立山町のカシワファームの黒毛和牛の、もも肉の中でも希少部位の「シンシン」を使用。ほとんど赤身で、きめ細かく柔らかい。ぷるぷるしてナイフで切りにくい。口の中に入れると、脂身の滑らかな口溶けとは違い、柔らかい肉の塊が液状の細かい粒子に変わる感じだ。それ自体はわりと淡泊だから、濃い目のソースをつけて食す。肉の周りには、行者にんにく、そら豆、ごぼうのピューレが添えられている。
9.デザート2種、
①クリーム・ブリュレ
クリーム・ブリュレは、ケツメイシ(地元の言葉で「じゃんじゃん棒茶」)の香りをつけた。小ぶりのサイズで、卵黄の風味が濃い
②クレーム・ダンジュ、イチゴのソルベ
クレーム・ダンジュというと、東京・市ヶ谷の「シェ・シーマ」の白い器にカーゼで包まれたケーキを思い出す。ここのは、酸味と濃厚さを抑えて、さっぱりとしてやさしい味わいだ。クリームの下には、生のイチゴが隠れている。周りにちらした「ヨモギのクランブル」をクリームといっしょに口にすると、抹茶のような風味に味変する。
10.コーヒー OR 紅茶、ミニャルディーズ
コーヒーは、エスプレッソに近いサイズ。
ミニャルディーズは、マカロン(抹茶味)、マドレーヌ、パート・ド・フリュイ(ゼリー)。
アルコールなどのドリンク類は、全般にかなり安価な設定になっている。
【雰囲気】
田園風景を抜け、小高い丘を登り、池の縁を回って店にたどり着くと、別天地に来た思いがする。とにかく、景色が素晴らしい。目の前に緑があり、その向こうに静かな池が広がり、遠くには低い山並みが見える。シェフが修業したアルザスの風景に似ているらしいが、イメージとしては北海道か。旅情とどこか異国情緒が漂う、なんとも優雅な立地だ。
以前は和風旅館だった建物を改装した名残で、ダイニングは、白壁と焦げ茶色の柱と梁に囲まれ、高い吹き抜けの天井の方には障子窓がついている。テーブルとイスも白黒のモノトーンで統一し、片隅には暖炉があり、和洋がミックスしたレトロな情緒が漂う空間だ。景色ばかりながめて食事をするわけではないが、すぐそこにきれいな景色が広がっているだけで、晴れ晴れとした開放的な気分になれる。
富山のフレンチ等の星付き店は、こうした自然豊かなロケーションの店が多い。こういうお店に訪れてみると、料理を食する空間には、実は非常に大きい付加価値があると思えてくる。
【CP】
今回はランチで10,000円(税別)のコースにしたが、品数が多く、しかも1つの皿にいろいろなものが盛り込まれている。これと同じものが同じ値段でディナーにも出る。東京なら、倍ぐらいしてもおかしくなくて、料理の質と内容に対して、非常にリーズナブルだ。
【総合評価、感想】
いろいろな面で上質な、正統派の優しいフレンチのお店だ。同じ南砺市で地産地消をテーマにした店でも、イノベーティブの「レヴォ」の尖った個性的な料理とは、かなり対照的だ。富山の中心市街地からずっと離れた山裾にあり、自家用車でないと不便な場所だが、都会では得られない豊かな自然の中でいただく料理は格別だ。料理のクオリティーとコストパフォーマンスも高く、遠くからわざわざ訪れる価値がある。
店名 |
Lensoleiller(Lensoleiller)
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類型 | 法式 |
預約・查詢 |
0763-62-2977 |
可供預訂 |
可以預訂
電話予約可能時間 10:00~11:30、15:00~17:30 |
地址 |
富山県南砺市立野原東1752-3 |
交通方式 |
JR城端線「城端駅」より5.1㎞、車8分、 距离城端 3,931 米 |
營業時間 |
營業時間和假日可能會發生變化,因此請在用餐前諮詢餐廳。 |
預算(評價匯總) |
¥10,000~¥14,999
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付款方式 |
可使用卡 (JCB、AMEX、Diners) 无使用電子錢 |
個人包廂 |
可能的 |
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包場 |
可能的 |
禁煙・吸煙 |
嚴禁吸煙 |
停車場 |
可能的 |
空間、設備 |
時尚的空間,平靜的空間 |
酒水 |
有葡萄酒 |
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此時建議 |
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位置 |
風景優美,神秘不為人知的餐廳,家庭式餐廳 |
網站 | |
開店日 |
2013.7.20 |
地産地消を掲げ、富山の野菜と海の幸をふんだんに盛り込んだ繊細で優しく美しい料理のフレンチレストラン。山裾の自然豊かな風光明媚な地にあり、良心的価格でコストパフォーマンスもよく、遠くから足を運ぶ価値がある。ミシュラン1つ星とグリーンスターを獲得している。
【料理、味】
ランチは、4,800円、6,400円、10,000円(別途消費税+サービス料10%)の3種類。ディナーは6,400円、10,000円の2種類。今回は10,000円(税サ込み12,100円)を選択。素材を生かしたやさしく自然な味わいで、多彩な食材と技法を盛り込み、和の繊細さも感じる表情豊かな正統派のフレンチだ。
1. 毛ガニと半熟玉子、カリフラワーのピューレ添え
毛ガニ(新湊)と小矢部の床鍋(とこなべ)養鶏のこだわりの卵の半熟玉子に、川端農園のカリフラワーをピューレ状にしたもの。上には、無農薬栽培の小松菜を練り込んでスティック状にしたものを添えた。スプーンで混ぜていただく。
小ぶりの器に、毛ガニの身がたっぷり詰まっていて、半熟玉子の甘い濃厚なとろみと、カリフラワーのピューレのやさしい甘みがからむ。
2. 新生姜のグラニテ、シメ鯖、リンゴのサラダ仕立て
南砺市立野原の中田さんの新生姜のグラニテ、新湊産のサバを軽く締めたシメ鯖、リンゴのサラダ仕立て、菊の花。スプーンでいただく。
甘酸っぱくてシャキッとした歯ごたえのリンゴのあとにシメ鯖を口にすると、酸味よりも甘みとコク、脂の旨味を感じる。一番下にあるグラニテは、甘くて冷たくさっぱりする中に、生姜の辛味のパンチがきいていて、額に汗がにじんでくる。それがまた、すうっとして爽快感が際立つ。
3.マダラの白子とカブ
マダラの白子に、金森ファームのカブと春菊のソースを合わせ、京子さんが自然農法で作ったカブのスライスを添え、柚子の香りを散りばめた。
白子は、表面に軽く焦げ目をつけて、香ばしさとサクっとした食感を出し、中はやさしく滑らかな口溶け。ソースは、カブのクリーミーな甘みに春菊が深みを加える。スライスしたカブのシャキっとした歯ごたえに、散らした柚子と粒コショウがアクセントになっている。
◇パン2種
天然酵母を使った全粒粉の自家製のプランスパンは、当店がプロデュースする「スリジェ」で作ったもの。豆乳パンは、南砺市の村田食品の豆腐を使用した。
全粒粉のパンは、もっちりして、熱々で、ほのかな甘みがあり、外側の皮ももっちりしてさほど堅くなくて食べやすい。豆乳パンは、皮が薄くてふわふわに柔らかくて甘みがある。
おいしいのでおかわりしたかったが、後のことを考えて自重した。
4.イモと人参に野菜のコンソメ、冬トリュフ添え
器の底の方には、野菜から出汁をとった野菜のコンソメをはり、その上に、池田農園のキクイモを使ったブルーテ(ピューレ状のソース)、サトイモのコンフィ、3色のニンジン(輪切りにした赤、紫、キシメン状に薄くスライスした黄色のニンジン)、甘海老、冬のトリュフ、一番上には素揚げした人参の葉。
野菜のコンソメは、ブルーテと混ざったからか、旨味を凝縮したような濃厚なスープ。サトイモのコンフィはしっとりして、紫色のニンジンは甘くてほくほく、黄色いニンジンのスライスはパツパツした小気味よい歯ごたえ。
5.メジマグロのグリエ、野菜のソース
メジマグロ(新湊)は、「瞬間グリエ」でハラミの表面を炙った。野菜は南砺市産で、ホルキー(カボチャの一種)はかんぴょう状に薄くスライスし、千華園のエディブルフラワーが全体を飾っている。ソースは、金森ファームのパプリカ、かとうしぜん農園の数種類のハーブに柚子胡椒、オレンジ風味のソース。皿の回りに、ブラックオリーブをローストして焦がしたものを細かく砕いて散りばめ、ヴィネグレット・レギューム(パプリカなどの野菜を細かく刻んでヴィネガーなどで調理したもの)を添えた。
メジマグロは、エディブルフラワーや野菜に隠れてしまっているが、火の入った表面は白っぽく、中の方は赤身から脂の多いピンク色のハラスまで、きれいなグラデーションになっている。表面は温かく中の方はひんやりして、赤身のみずみずしさから脂身の旨味まで、味と温度もグラデーションだ。パプリカのソースは甘口のケチャップ風、ハーブのソースはすっとする香りに濃厚な味わい。
6.ハタのポアレ、クレソン風味のリゾット
能登の蛸島産のハタのポアレに、神田農園の自然農法の米にクレソンを合わせたリゾットを、魚介の出汁の泡を添えて。
ハタは、身はぷりっとした張りとふっくらした食感に、わりと淡泊な中にやさしいうまみと塩味。パリっとした皮目は、少ししっかりめの塩加減で、味のメリハリをきかせている。リゾットのクレソンは、クレソンのイメージとは違う深く力強い味わい。
7.子羊のロースト
乳飲み子羊のローストに、ゴボウのマリネ、ゴボウをピューレにしたソース。
ひと口食べて、これが肉?と思った。人間の赤ちゃんの肌が驚くほど柔らかいのと同じように、乳飲み子羊の肉は、驚きの柔らかさとみずみずしさだった。マグロの中トロ的と言うか、口当たりがやさしく、口の中で、すごく滑らかにきめ細かく溶けていった。脂身の部分もしつこくなく、まろやかな味わいだ。羊特有のクセもあるが、イヤな後味を引かず、風味として感じられる。思わずうなる、これまで未体験の肉だった。
8.デザート2種
①クリーム・ブリュレ
薬草の一種ケツメイシの香りをつけたクリーム・ブリュレ。ケツメイシは、地元では「じゃんじゃん棒茶」と言ってお茶として飲まれてきた。
ブリュレは、非常に滑らかで、適度にしっかり甘く、表面の焼き目のほろ苦さも中庸を得ている。
②サツマイモのモンブランと紅玉のソルベ
モンブランは、かなりストレートにサツマイモで、ほどよくスイート。クリームの渦巻きの中に、微妙に酸味を感じるカットしたサツマイモがゴロゴロ入っている。ソルベは、ほのかに梅の味を感じ、冷たくさわやかな酸味で、2時間半のコースを締めくくった。
9.飲み物、プチフール
飲み物はコーヒーか紅茶。コーヒーは、エスプレッソに近いサイズ。
マカロン(結構濃い抹茶味でしっとりした生地)、マドレーヌ(レモンの香り)、パート・ド・フリュイ(濃厚なブドウ味のゼリー)。最後に、ちゃんとした小菓子があると、うれしくなる。
【雰囲気】
店の周辺地域は、山に向かってゆるやかに傾斜した田園地帯が広がり、シェフが約1年修業したアルザスの風景に似ているという。市街地を遠くに見下ろす山裾の緑に囲まれた水辺に、アルザスの伝統的建物をデザインした店が佇む。ダイニングの窓越しに、静かな緑と池が広がり、遠くには低い山並が連なり、旅情を誘う。
ダイニングは、白壁と焦げ茶色の柱と梁に囲まれ、以前は和風旅館だった名残で、高い吹き抜けの天井の方には障子窓や茶室のような空間がある。テーブルとイスは、白黒のモノトーンで統一し、片隅には暖炉があり、洋館のような趣もあり、和洋がミックスしたレトロな情緒が漂う。
【シェフについて】
シェフの高見敦司氏には、今回初めてお目にかかった。料理からして芸術家肌の気難しい人を想像していたが、アンパンマンのように、目がかわいくてまん丸く親しみのある顔に、高さのある白いコック帽をかぶり、すごく優しく温厚でいい人という印象だった。厨房にはシェフ一人だけなのに、ホテルのレストランのコックのような白い服にコック帽で仕事をする姿は、いかにも真面目な正統派という感じがする。
【CP】
この場所でこの料理が、この料金でいただけるのは極めて良心的で、それもまたシェフの人柄の表われなのだろう。
【総合評価】
素材、料理、雰囲気、ロケーション、どれもが気持ちよく、リーズナブルで満足度が高い。場所が不便なのが難だが、時間をかけてでも訪れる価値がある。地元の生産者とのつながりを大切にする姿勢にも感銘を受ける(折しも、高見シェフが考案した、地元の食材を使った給食メニューが、南砺市の全小中学校で出されることになったと、12月7日放送のNHK富山のニュースで紹介された)。
【参考情報】
南砺市の城端駅から約5km、ランチなら、バスやレンタサイクルで往復することも可能。山裾の地なので、冬場は雪に覆われる。富山市でもわずかに初雪を観測した日、店周辺には数センチの雪が積もった。今年は紅葉が遅かったから、背後の山には、雪と紅葉が重なっていた。
シェフが修行したアルザス地方に関連して、子供の頃に読んだ「最後の授業」という短編を思い出した。1871年、普仏戦争でドイツにフランスが敗れ、国境のアルザスはドイツ領にされ、フランス語の授業ができなくなった。フランス語での授業の最後の1日を描いたのが、この小説だ。子供の頃にはよく理解できなかったが、今振り返ると、心にしみるものがある。