豊後前寿司 : Tsukinoki

大分に行く機会はあれど予約のタイミングが合わず、三度目の正直とやらでようやく訪問が叶う。
別府湾をはじめ豊後水道で獲れる魚介を軸に江戸前風（ひと仕事手を加えて）にいただける。

何がなんでも江戸前派ではないけれど、やはり地物にひと手間手を加えて小さめの舎利でいろいろ食べられる
鮨屋が地方にあると嬉しいものだ。

実に正直と書いて実直。
これを地でいく下戸の大将がひとりで握り、お姉さんが給仕担当。
この日はカウンター客のみだったが個室もあるようでここも埋まると一人では大変かも。
時間は余裕を持って訪れたい。

地元の酒と焼酎を軸に、つまみから握りまでおまかせして、好みで追加の握り。

まずは菜の花にしめじの卵とじ。
淡い味付けは口開けにちょうど良い。

刺身は好みにも寄せてくれるようだが、大将におまかせ。
ブリ、関アジ、タイ、コウイカ。
まだ寒鰤が入るようでやはり天然の脂の旨さは得も言えない甘さが養殖ものとは段違い。
関アジは2時間寝かせたものだそうで素晴らしい甘さに驚き。
このあとの握りでもそうだが初めて関アジの美味さを知った。
さすが地元の熟練の技、最大限に美味さが引き出されていて大将の熱い思いも聞くと尚更美味い。

関アジ、関サバについては、鮮度一番にこだわりすぎていたり、今だに好みではないけど〆もの（関アジ、関サバ
には向かないと思うが）を食べて、さほど腑に落ちることがなかったがちょっと偏見が強かったと反省。

鯛は対岸が愛媛や瀬戸内だからだろうか、よく引き締まったものだが、こちらも寝かせ加減が絶妙で天然ものの
甘さが塩でも割り醤油でも合う。

コウイカの厚みとねっとりした歯ごたえもよし。
黄身醤油でも食べるとこれだけで1〜2合は酒が空くだろう。

間に茶碗蒸しを挟み、握りへと移行。
舎利は江戸前らしく小ぶりなのでありがたい。
赤酢を使ったシャリだが酢加減は控えめ。強すぎてネタとのバランスを崩さないように配慮しているとのこと。
やはり鮨はネタと舎利のバランス。
刺身とはまた違う美味さを堪能でき、酒と共にさらに味わいが昇華していく。

佐伯産の白甘鯛　こちらも水分の抜き方がよく実に美味かったのでおかわり。地元でも値が張る
　　　　　　　　ようだが、「いいもの見るとつい買い付けちゃう」という大将は素直だ(笑)
コウイカ　冒頭の刺身で味わったとおり、サクっとした歯の入りと甘さが素晴らしい。
春子　九州で酢〆したネタは珍しいが、こちらも程よい厚みと〆加減がうまい。
ミナミマグロ漬け、トロ。この身質、悪くない。
茶碗蒸しはイカと鯛の真薯入り。在り来りの具材でないところ、面白い。
サヨリ　生姜でさっぱりと。春は手前だが程よい大きさになってきた様子。
ノドグロ　案外さっぱりしたネタだった
コノシロ　これが想定外に美味い。鮮度もいいのだろうけど脱水加減に酢の入れ加減が絶妙で
　　　　　思わずこちらもおかわり。
　　　　　普段はコハダだの新子だの言ってるが、コノシロをここまで美味く食わせるとは。
才巻海老　もう少し茹で加減を控えて、茹で上がりで出てくると良いと思う。
穴子　さらりとしたツメが印象的。穴子そのものの味を口中で感じる。
玉子焼き　どちらで修行されたのか、綺麗な焼き上がり。甘さは控えめでしっとり。
塩たらこの炙り　自家製の定番らしく良い塩梅。もちろん酒のアテに。

追加は白甘鯛にコノシロと干瓢巻きハーフ

刺身4種、11カン、小鉢、茶碗蒸し、玉、塩たらこ炙りで11,000円が基本だそうでこの夜はたしか中瓶に始まり
酒は勧められるままに、地元の鷹来屋、高知の美丈夫、鯖江の梵、栃木の望、焼酎は豊後大野の泰明。
〆て18,000余。

時節柄カウンターが6席だったが、本来は10席程度あるだろう。
気持ち良い接客でなんでも丁寧に答えてくれる郷土（ネタ）愛に溢れる大将との会話も楽しい。