料理が旨い。日本酒が旨い。 : Yanagi taru

渋谷と恵比寿の中間くらいに位置する『柳樽』は、
「酒」の文字が書かれた赤提灯が店先で揺れる、
こじんまりとしたクラシックで素朴な居酒屋さんだ。
小さいお店故に最初はちょっと入りづらいかもしれないが、
気にせず引き戸を開ければ、「いらっしゃい」とご主人が迎えてくれる。

店内は４人掛けのテーブル席が２席と、
６人程度が座れるカウンター席のみ。
決して広くはないが、
店全体が明るい木地で統一されていてなんだかほっとする。

切り盛りしているのは、
言葉の端々に独特のユーモアが滲むご主人１人きりで、
接客から調理から配膳まですべてを担当している。
昼間は営業をしていないが、夜はかなり遅くまで開いており、
また、基本的に年中無休だそうなので、
突然行きたくなった時でも安心。

そんな小さなこのお店、
まず、とにかくいつ行っても感動するのがその料理の旨さ！
メニューはその日仕入れたものによってあれこれ変わるが、
何を頼んでも旨い。
お通しですらほんとうに旨い。
別に、ものすごく豪華な食材を使っているとか、
手の込んだメニューがあるとかではなくて、
「肉じゃが」とか「ちくわの磯部揚げ」とか「肉豆腐」とか、
本当にシンプルな家庭料理系ばかりなのだけど、
さっぱりしているのに深い味付けで、いくらでも食べることができる。
ご主人のセンスなんだろうなぁ。

それから、日本酒も旨い。
ワイングラスに注いで出してくれるので、
見た目や香りをめいっぱい楽しみながら飲むことができる。
また、この一杯の量が予想外に多くてビックリ嬉しい。

ただし、注意してほしいのは、
このお店は赤提灯の「酒」の文字からも分かるように
あくまで酒を出すお店なので、
ノンアルコールは基本的においていない。
ウーロン茶はあるが、
「えー、オレンジジュースとかないの？」と文句を言うのは
失礼に当たるので絶対に控えてほしい。
ご主人の顔が曇ってしまう。

そうそう、表立って宣伝はしていないが、
実はこのお店、讃岐うどんも旨い。
ご主人が昔、讃岐うどんのお店に居たことがあるそうで、
コシのある手打ち讃岐うどんを出してくれるので、
機会があれば是非食べてみるべし。
ちゅるん、とした喉越しと、しっかりしたコシがたまらない。

ご主人は、そんなに積極的に話しかけてきたりはしないが、
サラリと面白い自論を展開してくれたり、
クールな突っ込みを入れてくれたり、博学な印象を受ける。

私は普段あまりこういった赤提灯系の居酒屋は利用しないのだが、
ここは、数年前からずっとお気に入りの一軒だ。