ふらんす亭/ほんとうに教わりたいこと : Furansu Tei

インターネットでは席のとれないこのごろ稀有な劇場、ROSA会館で切符をとる為に、先ずは西口へとやってきた。
それは今まで人殺し以外何もしてこなかった、また何もできなかった殺し屋女子高生二人組が、卒業を控え、所属する組織からちゃんとした社会人の顔を持つことを要求されて、鶯谷での同居生活をスタートさせ、アルバイトでもいいから社会との接点をなんとか模索していくという、非常に瑞々しきグローイングアップ・ストーリー

しかしふたり組のうちの一方のコミュニケイション能力がやたらと低く(お前もな !)、メイドカフェでモエモエキュ～ン !　とか嫌々ながらもやってのける相方を見て、自分はダメだと打ち拉がれる日々 ……
そんな中、Amazonでとり寄せた拷問グッズをターゲットに無駄に試したり、新しいシノギ(ビジネス)のヒントにとバイト先のメイドカフェに訪れたヤクザの親子を私情でぶち殺してしまい、クリーニング屋(死体始末業者)に高額費用を保険無しの自腹で支払わなければならなくなったりと、いろいろなことを学びながら成長していく少女たち。

そしていきなり、殺してしまったヤクザの(異常に鼻の利く)娘から、復讐してやるから出てこいとの直電が掛かってきた !
スマホ越し、何故私が殺したとわかったの ?　と問えば、(お前が身につけている)ドルチェ＆ガッバーナの香水のせいだよ !　とのこと

―― これはたいへんだ ……

<R4.1.2>

「ふらんす亭 池袋サンシャイン60階通り店」

池袋東口五差路は野口五郎に見えるのに、西口五差路が野口五郎に見えないのは何故か ?
悩みつつ正月営業を期待していた交差点角の二階Italianの前までやってくれば、珍しく今年はお正月をちゃんと休むよう。ならばこれ以上西へ向かうのは危険と判断し(こういう状況下では賑わっているほう賑わっているほうへと周り込むべきだと思って)、未だ映画までの時間も十分あることだし、いつもの東口へと今日もまた。

思った通りにサンシャイン通りの人出は多し。
そんな中、野口五郎近くのそば屋も正月休み。びっくりモンキーは正月なんか関係なく待ち客を抱えていて、仕方なく一度は見限ったこちらへの階段を下り切ってみると、少なくともカウンター席が空いているのが見えて、とりあえず安堵

“イタリアンチーズハンバーグ” @1,100
“7種の野菜サラダ/S” @280
〆て1,380円也。

「ハンバーグはもう出来上がっていますので、火を消してお召し上がりください」

と言われたって、鉄板の下に潜り込まされている固形燃料の酸素を遮断するための蓋が見つからない ……
とりあえず「美味しくなあれ ♪　モエモエキュ～ン !」だけして火はそのまま食べ始めることにしたが、チーズのソースがもんじゃのようにグツグツと固まっていく様が逆にいい感じで、へらがあったら尚良かったのに !
で、まじめに言うとこちらのお店には、こういった器のギミックを使い始めるのと連動して料理の質(たち)が一歩後退したようなイメイジを抱いていたのだけれど、その印象は変わらず。

腑に落ちなかったことは、隣にやってきた親子には、料理が届くたびに息子さん、お父さんに順番で「火の消し方はわかりますか ?」　と丁寧にやっているのに、なんで私には、このホールの若い女の子たちはそれを教えてくれなかったのか ?　ということ

よく見たら“火消し蓋”、パーティションにマグネットで張り付いてたよ !　でもこんなの分かるふつ～ !?
まあべつに火の消し方なんか知ってるからいいけどね、おれは。そんなのほんとに消そうと思ったら、このビルの屋上の貯水タンク爆破すれば消えるから。スティーブ・マックイーンもやってたもん。
その爆薬は、「バカな消防士が運ぶさ !」ってね。

だからぼくは、もっと違うことを教わりたい。
「火の消し方分かりますか ?」じゃなくって、「可愛くて心のきれいな女の子を彼女にする方法、わかりますか ?」って聞いてくれたなら、ぼくはもうなりふり構わず、「それだけが分からないのです !　どうすればいいのでしょうか ?」って教えを乞うてみちゃうわよ ……

カンヌグランプリ作品を観に、池袋までやってくる。フェリーニの「甘い生活」とか世界のクロサワの「影武者」が獲った、泣く子も黙るグランプリ作品を !!
でもいつの間にかその最高賞がパルム・ドールとか言われるようになっちゃうと、ちょっとぴんとこないんだよなぁ ……

<R2.8.10>

「ふらんす亭」

明治通り沿いに並ぶ天丼屋さん、及びその母体の「満留賀」さんで良いかなと思ったんだけど、持ち前の冒険嗜好がその安穏を阻止し、この不快指数うなぎ登りの池袋の町をさらに遡行させようとすることに抗う術もなく。
しかしいつものようにあてもなく、もう昨日キャッチアンドリリースさせられた［注］お気に入りのそば屋をプライドもなく目指そうとしたんだけど、その前に上質なフランス料理を食べさせるrestaurantを見つけ、未だ早い時間だったので比較的安心した気持ちでその階段を下りていった。
が、私の好きな“白/黒ガーリック”だったっけかな ?　そのフレンチがメニュウから消えているではないか !

注) いつもの日本蕎麦屋にて、新型ウィルス対策の為か戸を開け放しているので音が鳴らず(音が出なきゃ気付かない時点でダメだと思うが)、新規客の入店にまるで気付かずに茹で場で作業に没頭するスタッフたちに、心の中で十数えるまで待ち、それで出てこなかったら踵を返そうと思い、そうなったのでそうしただけのこと。
対して私の先輩の刑事は、犯人に「三つ数えるまでに人質を放さなければ撃つ !」と宣言しておいて二つで撃つので、それに比べれば随分と良心的なものだと自負している。
あっさりと踵を返したのはべつにそのことに腹を立てたわけでもなく、最初っから、ちょっとのつまみとお酒をやって、そして最後にそばで〆ればもう4,000円前後いってしまうその身の振り方に、最初っから怖気づいていた為でもある。
といってもその後初めて「銀座ライオン」飲みをやってしまい、ロックグラスに雀の涙ほどのウィスキィの幾つかに、一人では分量の多いつまみ2品、また最後に目が欲しいだけで注文してしまったナポリタンをまさか1/3ほど残してしまって同じくらいの金額を支払わされる羽目になることが予知出来ていたとしたならば、素直にそのおそば屋で「すみません !」と声をかけて、そこに居場所をみつけておけば良かったヨォ～ !

“イタリアンハンバーグ” @1,080也

「こちら最後まで熱々のハンバーグをお召し上がりいただく為 ～～」

長々とご説明いただいたが、要はストーブでの加熱式としたがチーズなどの焦げが気になるようになってきたらバーナーを引き抜いて、この器具(スチールの円盤に柄のついているもの)で消してください、とのこと。なのでお店の人が立ち去るやいなや速攻消した !　何故ならば、熱いんだもん(笑)。

そしてこの物質は !
食べ始めてその形状から連想したのは、そこまで角ばってはいないが新宿の喫茶店的レストラン「アカシア」の座布団形ハンバーグ。しかし挽肉同士がもっと連帯感のない感じで、ハンバーグに必須であろうはずの塊という概念が薄れてしまっているような感じである。結論的に、こちらのハンバーグは変異したのだと思う。
今回の新型ウィルス騒動では飲食店各お店において色々と創意工夫、試行錯誤が見受けられるが、それはざっくり言えば共通して、お客にとっては残念な方向へ動かざるを得ないと思う。何故ならば、それは集客が見込めぬ中での利益確保を目指すわけだから、客の立場から見るとどうしたって“コストに対して享受できるサーヴィスの品質が下がる”、ということに他ならないことになろうから

このステンレスのストーブ的なものを用いて卓上で炎を魅せるという工夫に依るコストアップを相殺するのは理論上、料理でしかないと思うが、だから私は常々そこのところついて、これはこのままでは(もはや“このままでは”という段階を越えてしまった感もあるが)1,000円のご飯が1,500円になっちゃうよ、と憂いているんだけど ……。
或いは1,000円のハンバーグが1,000円のままであるならば、今日のハンバーグのように、それがばらばらと空中分解してしまうことは、もはや当然の帰結なのではなかろうかと ……

昨日は昔の職場の仲間と上野で野郎5人飲み。
瀕死状態の古巣に最後まで残り、今まで音頭をとってくれていたヤツもついに退職を決めて地元へ帰るとのことで、今後、今まで通りに集まれるかどうかと思うと寂しさもひとしおである。
我々の一家離散の原因が、これは負け惜しみとなるかも知れないが業界全体の目に余る衰退により、もはや一お店の努力の範疇を越えたところにあるということが殊更に悔しい。そして3本目のウィスキィボトルを空に出来なかったことも輪をかけて ……
(笑/どんだけ飲んでんだよ !)

しかしこれだけ本音をぶつけあいながらも後腐れなく爽やかにその場をお開きに出来る関係というのも、自分のこれからの人生、ちょっと新たに構築することはとても無理だろうと思うと、形はどうあれこの関係性というものを是が非でも大切にキープしていかねばと、もう考えの纏まらないほどに酔ったアタマで上野駅の高い天井に漠然と(笑)誓う

<R1.10.6>

「ふらんす亭」

映画の時間から逆算した家を出る時刻を完全に1時間ほど間違えた様で(私にはほんとにこういうポカが多い)、都バスの車中で今日は写真散歩の時間はとれないなと落胆するんだけど、この明治通りを進むバスのフロントウィンドウにこの期に及んでワイパーがストロークし続けているのが見えてしまうと、いずれにしてもこんな天気でそれも最初っから無理だったろうとあきらめもつくというもの。

バスを下車したらなるたけ速やかに飲食店に突っ込みご飯を食べて劇場入りし、自由席のそれに備えるという計画の下、今日は終点の一つ手前の旧豊島区役所のところでバスを下り、一直線にサンシャイン通りを目指し、そして迷わずに階段をおりた。
何故ならば、その地階であれば必ずや待たずに席に着けるという確信めいたものがあったから ……

“黒ガーリックハンバーグ/Aセット” @1,320也。

カウンター席であったけど、案の定直ぐに着席することが出来た。
早速決めていたニンニクのやつを“黒”で注文し、流れるように黒金オーヴァルの鉄板がバチバチと音を立ててて舞い降りるが、今日はやけにその“バチバチ”の減衰が早くはなかろうか。
そしてそのハンバーグのパティは、今日は妙に柔らかなところと弾力のあるところが決して計算ではなく入り交じる、こちらで食べた中では過去最低の出来映えとなっていることも悲しかったが、その前にこのハンバーグと付け合わせの配置は、果たしてこれで合っているのであろうか ?(笑)

おそば屋で蒸籠の簾が縦目で出てくると、正直そんなそば屋のそばが美味かろうはずはないと心が短絡してしまうんだけど、意外にもそれで美味いそばに当たることががあるからこの世は不思議だと思う(笑)。
方やハンバーグのお皿を左右逆に出す店というのも、同様にそれを以て即アウトだと決めつけてはいけないと私は思うのだが ……

昼に一旦布団を出てマルちゃん緑のたぬきを食べて、また布団の中に帰巣した。どこで教えられたわけじゃない、自らの帰巣本能に従って。
肉体が滅びかけていた。原因は飲み過ぎということもあるが、昨晩はモンスターたち相手に孤軍奮闘を繰り広げていた為。それが“女”という種族の、とりわけ質(たち)の悪いモンスターたちだったものだから、これはもうオトコである私に敵うわけがない。
朝目覚めてコンタクトが入れっぱなしだったことは、最近遠近両用のメガネ主体であまりコンタクトを使っていないということもあるんだけど、久々のことで逆にフレッシュな気持ちになる(バカか !)

<R1.5.3>

階段を下りていく途中、センサが私の魚影を捉えたか、ドアの向こうでチャイムの鳴る音が聞こえ、そしたら女の子がドアを内側から開いてくれて、瀕死の私を出迎えてくれるではないか !　その女の子は可愛い、というよりは美人側に振れているだろうか。それもかなりの。
その娘は仁王立ちし、片腕をぴんと伸ばしてドアを開け放って、最初っから一人ぽっちでしかない私に人数を問うてくるのだが、それがちょうどとうせんぼのように目の前に立ちはだかる恰好となり、これではガソリンスタンドなんかでオーライオーライと誘導されるとき、いや、オーライは良いんだけどそこに突っ立っていられたらあなたを轢いちゃうでしょ !　ってシチュエイションそのまんまなんだけど(笑)、でもそんなのはもうどうでもよくって、兎も角私は、そこはかとなく照れた ……

「ふらんす亭 サンシャイン60通り店」

BGMは雰囲気的にユーロビート的なやつ。
自動的にカウンター席をあてがわれてしまうのかなと思ったが、意外にもその綺麗な娘は私に、カウンターとテーブル席のどちらが宜しいでしょうかと聞いてくれた。時刻も中途半端で店内は空いていたので、お言葉に甘えてテーブル席を所望させていただく。

メニュウを広げて暫し考え込んだフリをするのだが、注文は概ね決まっている。ガーリックのやつである。何故ならば、いつも思うことなんだけどそれはヴィジュアルがパッとしないながらも(おいおいおい !)、バター醤油(塩かなぁ?)とガーリックの相乗はただそれだけで、味として美味しく感じる幅が広くとれるっていうのかなぁ。たとえ大雑把な料理でも(こらこらこら !)、ほとんどの場合、ざっくりと、大まかには美味しさを感じさせてくれるので

“黒ガーリックハンバーグ” @890
“Aセット/スープ・サラダ・ライスセット” @380

異常に迅速に(笑)、白い紙の輪っかで堤防を形作られた鉄板が舞い降りる。
こんなんで焼く時間がちゃんととれるものであろうか。まだスウプとサラダも消化しきれていないので、ゆっくりと“撥ね”が落ち着くのを待つつもり。体調も万全ではなく、身体のほうも、それほどがっついてはいないもので。

全体の風景をパッと見て、もやしだけが気にくわないんだけど、まあいいだろう。
満を持してブレードがぎざぎざのナイフをとり出し、ぎざぎざハートでその肉塊へのアタックを試みる。ボリウムの選べたご飯は謙虚に並盛り180gとやったが、相手にとって不足なし。そしてやはりこのはっきり味のソースは、それが騙されているのだとしても(笑)、美味しく感じる。
今日は水っぽく残っているが、これは日によっての仕上がり誤差の範囲であろう。願わくば、ほんとうにお店屋さんの料理っぽい雰囲気を醸しだそうとしたならば、このソースをエマルジョンさせるなり、また手っ取り早くはちょっととろみをつけるなりした上で、ニンニクチップもその為の努力だとは思うんだけど、何か色合い的にアクセントを付加してあげると、もうぐんと良くなるんじゃないかと思うんだけどね ……

私の隣に若い女の子二人連れがやってきた。
注文を迷いながら(この注文を迷っている時間が一番楽しいんだよね♥)、対面の彼女が友達に語りかけた。

「すごくお腹がが空いてるときにびっくりドンキーでハンバーグ300gにサラダを二つ付けたんだけど、もう死にそうになっちゃって。そのとき、私やっぱり300gは食べられないんだ～って思ったの。やっぱりちょっと物足りないくらいがちょうど良いんだなって ……」

―― 俺もいつもそう思うわ ……　でもその“ちょっと物足りないくらい”を守るということだけに、いつも敗北し続けてるんだよなぁ ……

ホールの超美人な若い娘は、まだ接客に慣れていないのだろうか、素人っぽく語尾が聞こえづらく(か細く)なる傾向があるのだが、でもぜんぜん平気。何故ならば美人だから。しかしそれでは短絡的に美人のほうが人生得なのかといったら、私もそのことについてよく考えるんだけど、それをこと“人生”という長いスパンで捉まえたとき、現時点では分からない、というしかない。

例えば私のいきつけのママは、若い頃はゴールデンハーフのシェリーだったんだけど、その内に同郷のママがいるなと回りのフィリピンパブの女の子たちから挨拶されるようになり(笑/純国産なママなのに)、そして今現在は、また何らかの違う人になってる。まあ違う人っていうか、違う物体になってるんだけど。
そしてその変遷についてこれる者と去っていく者がいるんだけど(場末のスナックに長けた人でこの残酷なる事実を否定できる人がいたなら、ぜひ連絡をください/笑)、最後に残ったのが用心棒のTさんと俺ってことを考えたとき ……

―― ああ、それ考えるとママも倖せかも知れないね。曲がりなりにも世の中で二人だけはついてきたんだから。でもほんと、これから先は知らないよ、ママ。料理一品都度30分かけて焼いてるようじゃ、いくら何でも俺ももう ……

快晴で、厚着が功を奏しているのかそれほど寒さも感じない。
明治通り沿いのそば屋の前には、店頭売りの年越しそばを求めての人だかり。果たしてこういう人たちは、大晦日のそば屋で出されるそば、とりわけ店頭売りされるそばなんかそのお店のそばじゃなくって、規模の大きな製麺所によるマスプロ製品の買い物のそばだって知って並んでいるのだろうか。
いや、無論それを否定はしないけど ……

<H30.12.31>

「ふらんす亭」

階段を下りてドアを押し入れば、目の前のお一人様隔離エリアとなるカウンター席は空いていて、案の定そちらへとなる。
その椅子の中がBOX状に荷物の収納スペースとなっているのがどこの匠(たくみ)のアイディアか知らないが、けっこう使いにくい為に使用したことはない。ふつうに考えたら椅子の下を解放した状態で荷物棚が設けられているほうが使いやすいと思うが、そこまで考えてのことかは分からないけど、焼かれた鉄板から跳ねる油よけにはこのほうが良いのかも知れない。
実際手に触れるいろんなものがベトベトだし ……(笑)

“黒ガーリックハンバーグ” @890
“ライス・スープ・サラダセット” @380

画像で一目瞭然のことながら、こちらで何を注文しても、もっとも私のそれは完全にハンバーグオンリーとなるのだが、概ね美しさを感じさせないヴィジュアルでそれらは舞い降りる(笑)。
そしてだいたい、それらは美味しい。というか、ちょっとキツめにパンチのある味付けが施され、さらにガーリックやバター、またペッパーで補強される為、率直に言って不味さを感じさせないということが一定水準で実現されてしまっているのである。
このことは品良く纏まってはいるが味の薄い料理に対し、とりわけ我々下町人種にとっては優位となろう。

そして(味付けの濃さ的に)ここまでやって初めて、私がふだんハンバーグの付け合せとして疑問視しているもやしというものの存在も活きてくると言えよう。
付け合せのもやしを見るとたいてい気分が萎えるのだが、何故そうなるのかというと、それ無しで既に味付け的に成立している料理に対し、単なるヴィジュアル的、またはボリウム的賑やかしの為にそれをやってしまうと、どうしても味がピンぼける、ということに他ならないと思う。

そういった意味においてこちらの料理は、概ね、常に誠実であるという気がしないでもない。というところに落ち着いてしまうことが、こちらのお店の巧妙な罠に嵌まってしまった、ということになってしまうのだろうけどね ……

<H28.11.20>

例のスパゲッティ屋さんでミネストローネでも頼んじゃおうかなと思って、道を一本見誤ったか。
それではサンシャイン通りと並行して走る裏通りを利用してリカバリーをと試みれば、すでに午後二時近くにして、店頭に地下への階段から連なる行列が地上まで。

―― だめだこりゃ ……

「ふらんす亭」

かなり久しぶりの来店。
他客と隣合わせになれば、些か圧迫を感じるであろうカウンター。この固定された椅子の中が物入れとなっていることを、私は知っている。背中のボックス席に空きは目立つがまだバッシングが済んでおらず、ランチラッシュタイム後の兵どもが夢のあと、ちょっと荒涼たる風景が広がっていた。

フランスと言えば「ベルサイユのばら」。そしてベルサイユのばらといえば、密かにオスカルに想いを寄せるアンドレが最も印象的だが、悲しいかな、私にとってのアンドレは、同じアンドレでもアンドレ・ザ・ジャイアントだけである

“テリマヨハンバーグ” @1,240也。
ライス・スープ・サラダセット

つい、フランスを意識しての注文となった。
(嘘をつけ !)
そういえばマルチェロ・マストロヤンニがスパゲッティを食べるシーンは頭に浮かぶが、ジェラール・ドパルデューやアラン・ドロンがハンバーグを食べているところを観た記憶がない。ということは、そもそもハンバーグというものはフランス料理なのであろうか ?　そう考えるとスパゲッティ・ナポリタンがナポリの名物料理だということは良く知られた事実だが、ハンバーグというものはもしかして、ドイツのどこかの地名なような気がにわかにしてきて。

そしてフランス人が果たして料理にテリヤキソースとマヨネーズを合わせいくのか、これについても検証の余地があろう

但しこれは非常に重要なことだが、テリヤキソースにマヨネーズを相乗させたとき、それでやる大抵のものは美味くなる、言い換えて大抵のものの不味さをキャンセルする、といったマジックをテクニックとして用いるということを、この飲食業界をとり巻く現状の中、我々プロ市民［注］としてそれを安易に批判しちゃいけないよな、という気は強くしていて。

注) ごめんなさい。我々という言葉を安直に使ってしまいましたが、よくよくどう考えても、私はプロなにがしという範疇にはいないかなと ……