東京酒樓/フェーン現象がとまらない : Tokyo Shuro

いきつけの居酒屋に、昔ちょくちょく来て一人飲みしていたチャーミングな若い女の子の姿を久しぶりに発見 !
その娘はいつも「ベイビー・ドライバー」のアンセル・エルゴートのように、自分の牙城を頑なに守るべくイヤホーンで音楽を聴き、外界からの情報を遮断。そしてレモンサワーのジョッキに、これは私はそういったお酒を飲まないのでバイトの女の子たちから聞いたんだけど、コンクっていうのを混ぜる為 ?　に箸一本、それを武器のように突き立てるスタイルを完全に確立させており、友達同士中身も何もなくキャッキャとはしゃぐばかりの女の子だけじゃないんだなと、いつも感心させられていたのだ。

そして徐々に若い個体(若い娘)に対する識別能力が低下してきている私だが、その夜は顔だけで既にその娘であることが分かったものの、やはりホットパンツ、訳して熱いパンツからにょきりと生えるその逞しくも生白い太ももが、彼女が彼女であることを限りなく主張していた。
早速その娘のことが好きだった、この店でバイトしていて今年の春に卒業し、社会人として頑張っているSくんにインスタを介してメッセージを送ってみる。そしたらものの20分も立たずに彼がその娘を見に(笑)やってきた!!　
―― おっさんかよ !!(笑)

なんでも、そこらへんで晩ご飯を食べていたらしい。
「たぶんあの娘だと思う。太ももは嘘をつかないから」
それが私が彼に送ったメッセージだった ……

<R1.8.9 五反田>

「東京酒樓」

重いガラス戸を押し入ったら目の前に階段が立ちはだかり、一瞬怯んだがそれでも前進した。
七曲署の藤堂係長が最後まで決して敵に後ろを見せることがなかったように、私も前のめりで生きていきたい。身体がオーヴァヒートして脚に籠もる力も弱く。それでも気力だけで階段を上り切ってみれば、まだ先客の姿はなく、そしてお店の人の姿もなく。
でも声だけは聞こえていたので、それほど広くないフロアを見付けてくれるまでぐるぐる回ってなきゃいけないのかとにわかに絶望しかけるも、給仕のおじさんが目に入り、一人ですと告げれば、どこでもやられるように円卓のほうへ着けとなった。

早速真ん中のターンテーブルを旋回させ、メニュウを手にとり検討に入った直後なのに !　もうタイムアップなのであろうか、おじさんがぴったりと私をマークして早く決めろよ !　みたくなってるんで(笑)、まあ俺も注文するものはいつも概ね決まってるから、それを注文した。
おじさんが更に「ランチでいいですね ?」とくるので、意味が分かんなかったけど良いですと返した

“四川麻婆豆腐” @880也。

料理が届く気配を察知し、ちびっ子ワープロをデータ保存しつつ畳む極く僅かの間に、それは“トレイに全のっけ”ではなくblueのテーブルクロスの上に一皿一皿並べられて配置され、プチ高級感を醸し出している。
一見して、麻婆豆腐のカラーリングは悪くないと思った。
小鉢が二つついているのだが、お新香もそうだとして、とりわけマカロニサラダが、マカロニ4本並べたラジアル方向に、マッチ見たくなったニンジンを1本横たわらせているのが、これは演出なのかただのケチなのか ?　ちょっとミステリアス。

スープは淡いが、しかし海苔のような面白い風味のやつ。
早速メタルスプウンで麻婆豆腐を捌いてゆく。豆腐もけっこうしっかりしているが、片栗粉しっかり目のタイプ。こういうのも粗熱がとれていく課程においてゆるくなっていくのであろうか、別にそれに期待するということもないんだけど、兎も角今は、純白のご飯を穢していくことに集中したい気分 ……

麻婆豆腐は、ここ暫く“当たり”から遠のいていたので、これは美味しい !
店内に私一人でお店の人たちの意識が皆私一人に集中し、生きた心地のしない中でこう思えたということは、恐らくほんとうに美味しかったのだろう。正午の10分前にやっと若い女性お一人様がやってきてくれて、心底安堵した ……

「冷やし担々麺ください ♥」
―― そんなメニュウどこにあんだよ !
―― よくみたら裏側にあったわ

「ご飯おかわり半分ください !」

そのどさくさに紛れてご飯を半分調達。麻婆豆腐は、まだたっぷりと残っている。ジャスミンティーの香りがかなり良い。SUSの水差し?　っていうのかなんていうのか知らないけど、それにたっぷりと冷えていてずっしりと重い。コップにそれを注いで中心のターンテーブルに戻せば、その重量でターンテーブルが傾くほど。

―― ちゃんとNTNのテーパーローラーベアリング使わないと !　これスラスト方向だけじゃなくって、ラジアル荷重が合成されるんだよ、きっと

おっかけ界隈にお勤めと思しき4名チームが上がってきて、そしたら先ほどの女性お一人様も同じ職場のようで、そんなところに一人じゃなくてと合流する模様。さらに一人が追加でやって来るという。
お店がそのまま単独の1社に乗っとられ、その真ん中に私が1名孤立してしまったらやだなと思う間もなく食べ終わり、メニュウの杏仁豆腐60円には目もくれずに(ほんとはちょっと葛藤したけど)立ち上がり、階段の頂上に立った

下でガラス戸が開いていて、熱風がけっこうな勢いで吹き上げてきている。というか、冷気がダウンバーストしているのであろうか !?　その気流にのり、独り堕ちてゆく。すると上ってくる時には階段3段ごとに2℃ずつ気温が下がったが、下りる時には3段で4℃ずつ気温上昇しているではないか !　そんなフェーン現象とまったく同じメカニズムで、ふたたび恐ろしさを感じさせるほどの灼熱に還っていった。
せめて目の前の目黒川が涼を感じさせてくれれば良いんだけど、酸欠でただのドブ川んなっちゃってるし(なってないなってない !)


軸受は、各社、今から発注しても納期は秋口となるそう。カクヤスにマカロニサラダを発注すれば、それは今日の夜の部の営業前には間に合わせてくれるというのに ……

―― もう工業国じゃないよ、日本は ……　カクヤス国だよ ……

※ すみません、軸受納期はまったくの出鱈目です
(いやいや、その前にフェーン現象も出鱈目だろ !)