意外に料理はキチンとしてますよ。 : Essence dining

武蔵小山パルムと言えば、商店街としてはかなり名の通った存在で、私が小学生の頃は、東洋一のアーケード街として、社会科の教科書に載っていたこともありました。
そのパルムですが、60年以上に亘り武蔵小山と縁のある立場から見ると、商店街自体はずっと存在しているものの、その中身は随分変質してしまいました。

私の子供の頃は、商店街で営業しているお店は9割以上は地元の個店でした(ここでは、この時代を便宜的に「第一ステージ」と呼称します。)が、スーパーマーケットの進出や大手外食チェーンを始めとする各種のサービス業者の進出など地域個店に置き換わるお店がどんどん増えてきました。
これが「第二ステージ」ですね。
そして、今現在は、さらに先のステージ(「第三ステージ」)へと進化しています。
その中心となっているのが、いわゆる間借り営業の進出です。
デイリーやウィークリー、マンスリーといった色んな業態の場所貸し業者がパルムのテナントの中心勢力になってきたんですね。
所有から利用へ、モノ消費からコト消費へという消費行動の変化とも歩調を合わせていると言えるのかもしれません。

そんな流れが進む一方で、ジャパニーズドリームではありませんが、やはり一国一城の主を目指したいという起業家の想いも依然として根強いものがあるようです。
特に飲食店は参入障壁がそれほど高くないこともあって、こんなご時世でも新たな出店というのは一定数見られるんですね。
ただ、そんなお店の中には、正直言って「ああここは長くないな」と感じられるお店がかなりあるのもまた事実です。
パルムのテナントの家賃の高さはかなり知れ渡っており、相当回転率が良く無いと採算が取れないのは明らかですから。

この日、家内とランチで訪れた当店も、大変失礼ながら、外から見る限りあまり流行っているようには見えず、暫く前から家内と「ここはそう遠くないうちに閉店するよね。」なんて無責任に話していたお店です。
それでも、当店のオープンは2013年11月ですので、今年＝2023年11月には節目の10周年を迎えるわけで、予想に反して頑張っているお店とも言えます。

この日は午前中から地元で所用があり、家内と一緒に外出してましたので、当店が長く続いている理由を探ってみようとばかりにランチ利用してみることにしました。

当店は、鹿児島県出身の女性オーナーが前記の通り約10年前に立ち上げられたお店です。
その女性のFacebookを拝見すると、当店を立ち上げる前から飲食業とは縁があったようですが、独立起業の直前は、国会内のレストランで働いておられた時期もあったみたいですね。

当店はイタリアンダイニングというジャンルに分類されますが、特徴的なのはペット同伴可という点です。
パルムの中にはペットショップは数店営業しているのですが、ペット同伴可能な飲食店はそれほど無いと思うので、そこは目のつけ所がいいのかもしれませんね。
オープン当初からそうだったのか、最近始めたのかは定かではありませんが。

当店の場所はパルム2からパルム3へ入ってすぐですので、パルムのちょうど真ん中あたりということになりましょうか。
この日は、ちょっと早めのランチタイムで11時10分過ぎくらいの訪店になりました。

1階の店内は奥に長く、左手のキッチンに沿って右手壁際に1人掛けの丸テーブル席が並び、奥の突き当たりはちょっとしたスペースがあってテーブル席が並んでいます。
この他に2階席もあって、食べログ店舗情報によれば(当店は店舗会員)、席数は1階27席、2階32席、予備席4席の計63席となっています。

我々は、奥のテーブル席に着席しました。

卓上にはランチメニューが置かれており、パスタやピッツァを中心としたイタリアンメニュー、ドリンク、スイーツなどがラインナップしています。
また、例えばドリンクセットを頼むとパスタの増量が無料になるなど各種のセットサービスがあるのも特徴ですね。
日替りメニューは定番ランチメニューには無く壁に書かれていました。

セットメニューにもそそられたのですが、何となくそちらに誘導しようとしているのも感じられたので、敢えてセットにはせずに私は定番メニューから武蔵小山のボロネーゼ@1,080円とガーリックトースト@140円を、家内は日替りメニューからツナとキノコの醤油クリームソース@1,180円を注文しました。
単品注文でしたが、お値段は、ムサコにしてはやや高いかなという感じですね。

待つこと8分ほどでまずガーリックトーストが提供されましたので、それをかじりますが、ガーリックバターの香りが心地良く焼き立てのバゲットに染みておりとても美味しかったです。
これは予想外のクオリティだったので、必然パスタへの期待も高まります。
そのパスタは、ガーリックトーストから3分ほどで2人の注文がほぼ同時に提供されました。

私のボロネーゼは、正直見た目はパッとせず、茹でたスパゲッティの上に色褪せたミートソースがかかっているくらいに見えました。
ところが、それを混ぜてみると、パスタは生パスタということが分かる弾力で、実際食べてみてもモチモチです。
そして、ボロネーゼソースがひき肉たっぷりで味付けも本格的。
これは予想を大きく上回るクオリティで、ガーリックトーストで感じた期待が本当になりました。

家内のツナとキノコの醤油クリームソースも、家内は「これ、美味しい！」との第一声。
私も少し味見をさせてもらいましたが、クリーミーな中に醤油風味が隠れており、ツナやキノコも贅沢に使われているなかなかのパスタでした。

勝手に「閉店しそう」なんて無責任なことを言って、申し訳なかったというのが正直な感想で、女性オーナーさんはシェフについてもキチンとした腕の人を雇っているんだなと思いました。
お値段はランチにしてはやや高めと感じましたが、パルムの中で採算を取るには仕方ないレベルだと思いますし、壁の単品メニューなどを眺めると、夜の部は恐らくコスパはむしろ改善するのではないかと思われました。
ペットを飼っている人に限らず、しっかりしたリピーターもいるお店と思われ、なるほど10年伊達に続いているのではないことが分かりました。

結果、予定調和とは全く違う方向のレビューになりましたが、野球に限らず食べ歩きも筋書きの無いドラマということですかねw