丈夫(ますらを)の 顎(あご)をも碎(くだ)く この皮に NOだと言はぬ 我が身なりけり
Restaurant name |
Yokohama Nodaiwa(Yokohama Nodaiwa)
|
---|---|
Categories | Unagi (Eel)、Japanese Cuisine、Donburi (Rice bowl) |
Phone number (for reservation and inquiry) |
045-320-3224 |
Reservation availability |
Reservations available |
Address |
神奈川県横浜市西区北幸2-13-9 |
Transportation |
JR 横浜駅 西口 徒歩8分 614 meters from Hiranuma Bashi. |
Opening hours |
Hours and closed days may change, so please check with the restaurant before visiting. |
Average price |
¥5,000~¥5,999 ¥4,000~¥4,999 |
Average price(Based on reviews) |
¥10,000~¥14,999¥5,000~¥5,999
|
Method of payment |
Credit Cards Accepted (JCB、AMEX、Diners、VISA、Master) Electronic money Not Accepted QR code payment Not Accepted |
Table money/charge |
サービス料10% |
Number of seats |
76 Seats |
---|---|
Private rooms |
Available For 2 people、For 4 people、For 8 people、For 10-20 people 個室はお一人様につき、お料理5千円以上からチャージ可能 |
Private use |
Unavailable |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking |
Available 4台、近隣にコインパーキング複数あり |
Space/facilities |
Relaxing space,Spacious seating,Counter seating,Tatami seats |
Drink |
Sake (Nihonshu),Shochu (Japanese spirits),Wine,Particular about Sake (Nihonshu),Particular about wine |
---|---|
Food |
Particular about fish |
Occasion |
Family friendly |Solo dining friendly |Friends This occasion is recommended by many people. |
---|---|
Service |
Take-out |
Family friendly |
Children welcome,Strollers welcome |
手許(てもと)なる書籍(しよじやく)は、昭和五十二丁巳(ひのとみ)歳(とし)刊行「定本日本料理」。
これに據(よ)らば、初代は魚(うを)の商(あきな)ひを生業(なりはひ)とせし、野田屋の金本岩次郎。
「野田屋金本岩次郎」を以(も)つて屋號(やがう)を野田岩と號(よびな)すと云々(うんぬん)。
かく語(かた)りきは現(いまの)當主(たうしゆ)五代目金本兼次郎翁(おきな)その人(ひと)。
吉兆湯木貞一、八百善栗山友孝、瓢亭高橋英一、美山莊中東吉次、菊乃井村田元治、京味西健一郎、
辻留辻嘉一、つきぢ田村田村平治、久兵衞今田壽治、天政橋井政二、野田岩金本兼次郎.....。
綺羅星(きらほし)のごとき職人(しよくにん)で今猶(いまなほ)板場(いたば)に立(た)つは僅(わづ)か。
久兵衞は初代今田壽治と先代、天政に至(いた)りては初代橋井政二と二代も前(まへ)。
巷(ちまた)に野田岩名乘(なの)る店(みせ)數多(あまた)あれど、主(おも)なるは次(つぎ)の二つ*)。
一つは、兼次郎翁商(あきな)ふ五代目 野田岩 、野田岩 下北沢店 、野田岩 日本橋高島屋特別食堂。
今一つは、末(すゑ)の弟(おと)昭夫翁商(あきな)ふ横浜 野田岩、野田岩 横浜高島屋店。
大森 野田岩、嘗(かつ)て神田に在(あ)りし店(みせ)は不詳(つまびらかならず)。
今年(ことし)の春(はる)ごろか、五代目 野田岩の仕事(しごと)ぶりがあるテレビ番組(ばんぐみ)に。
一時(いつとき、二時間)ほど蒸(む)すとの行(くだり)に驚(おどろ)きて言葉(ことのは)を失(うしな)ふ。
すかさずこれに噛(か)み附(つ)きしは、辛口(からくち)で鳴(な)らす友里某(なにがし)。
これにある方**)怒(いか)りて曰(のたまは)く「確(たし)かに一時(いつとき)蒸(む)してござりまする」。
この方(かた)今(いま)まで嘘僞(うそいつは)りたる例(ためし)なくば、つゆ疑(うたが)ふべきにあらず。
因(ちな)みにこの書籍(しよじやく)で金本兼次郎翁(おきな)自(みづか)ら語(かた)るところ、
「皮目を下にして焦げ色をつけ、それをさらに四十~五十分蒸して油を適度に拔いてやわらげます」。
嘗(かつ)て四十~五十分の蒸(む)しが、今(いま)二時間とは實(げ)に訝(いぶか)しき限(かぎ)り。
「天然しか使わないとがんばり、手にはいらないときは休店して十八年間やってまいりましたが、
天然の魚場が少なくなった現状はいかんともしがたく、昨冬から冬の一、二ヶ月、養殖も使い出しました」
ともあり、改(あらた)めて、この頃(ころ)はまだ粗方(あらかた)天然物(てんねんもの)なるを知(し)る。
さりながら、蒸(む)しが嘗(かつ)ての倍(ばい)とは首(くび)傾(かし)ぐるほかになし。
さるほどに、こちら、末(すゑ)の弟(おと)金本昭夫翁(おきな)商(あきな)ふ横浜 野田岩。
能(よ)く鰻(むなぎ)を識(し)る者(もの)口(くち)揃(そろ)へて曰(いは)く「野田岩は志ら燒に限る」と。
蒲燒を好(この)むも、質高(しつたか)き鰻(むなぎ)は「志ら燒」とあらば、則(すなは)ちこれに。
「天然鰻志ら燒定食」、六點九三みなほん(六千九百三十圓也)。
三十路(みそぢ)餘(あまり)の仲居(なかゐ)を除(のぞ)き、ほかは悉(ことごと)く姥(うば)。
皆(みな)揃(そろ)ひの鶯色(うぐひすいろ)の衣(ころも)纏(まと)ひて客(かく)あしらひに當(あた)る。
頼(たの)みて僅(わづ)か五分餘(あまり)、盆(ぼん)に載せ恭(うやうや)しげに運(はこ)ばれ來たる。
盆(ぼん)、重(ぢゆう)、茶托(ちやたく)は塗(ぬ)り物(で)、他(ほか)は合成(がふせい)樹脂(じゆし)。
名(な)にし負(お)ふ「志ら燒」は、湯煎(ゆせん)され大袈裟(おほげさ)なることこの上(うへ)もなし。
か細き腕(かひな)の仲居(なかゐ)なれば、持つや否や大方(おほかた)命(いのち)を失(うしな)はん。
件(くだん)の書籍(しよじやく)、「蒲燒」は湯煎(ゆせん)、「志ら燒」は陶器と、今(いま)に違(たが)ふ。
徐(おもむろ)に塗(ぬ)りの蓋(ふた)を去(さ)りて、つぶさに檢(あらた)むるはその中身(なかみ)。
仲居(なかゐ)言(い)ひけるは、「常州(じやうしう)霞ヶ浦で漁(すなど)られし鰻(むなぎ)でござります」と。
大(おほ)きく厚(あつ)きこと、こちらの蒲燒(かばやき)の中(なか)には比(くら)ぶるものあらじ。
箸(はし)でこれを斷(た)ゝんとするに、その身(み)淡雪(あはゆき)のごとく脆(もろ)くも崩(くづ)る。
その儘(まゝ)安物箸(やすものばし)より轉(まろ)びて床(ゆか)に落(お)ちんとするぞ危(あや)ふし。
確(たし)かに身(み)の脂(あぶら)は天然物(てんねんもの)ゝ蒲燒(かばやき)を凌(しの)ぐ。
とは云へ、徒(いたづら)に舌(した)に觸(さは)るは綿(わた)のごとき纖維(せんゐ)。
穴子(あなご)好きは識(し)るところなれど、脂(あぶら)少(すく)なき穴子(あなご)、またかくのごとし。
加之(しかのみならず)、心(こゝろ)して拔(ぬ)きたる筈(はづ)の小骨(こぼね)も二本(にほん)。
皮(かは)の齒(は)に抗(あらが)ふこと、一(ひと)つとして鋼(はがね)に異(こと)なるところなし。
生(む)まれてよりこの方(かた)、かくも硬(かた)き鰻(むなぎ)の皮(かは)は他(ほか)に不知(しらざ)り。
見(み)た目(め)も佛蘭西(フランス)料理(れうり)のポアレなる煎(い)り附け燒きに瓜二(うりふた)つ。
綿(わた)の身(み)に鋼(はがね)の皮(かは)とは、かくも淺猿(あさまし)きものかな。
以爲(おもへらくは)、肝腎要(かんじんかなめ)の味(あぢ)もまた然(しか)り。
濫(みだ)りにあれやこれやと加(くは)ふるは野暮(やぼ)の極(きは)み。
さりながら、山葵醤油(わさびじやうゆ)ばかりでは何(なん)とも力(ちから)が足(た)りぬ。
醤油(しやうゆ)に味醂(みりん)を合(あ)はす智恵(ちゑ)、努々(ゆめゆめ)侮(あなど)るべからず。
遍(あまね)く知らるゝごとく、「江戸前(えどまへ)」なるは御城(おしろ)前海(まへうみ)の鰻(むなぎ)。
嘗(かつ)ては、品川沖(おき)臺場邊(あた)りの海(うみ)で夏(なつ)に漁(いさ)りしものを飛び切りとす。
時季(じき)に依(よ)るものゝ、荒川、中川、利根川の鰻(むなぎ) はこれに劣(おと)れりと云ふ。
さらば、見境(みさかひ)なく天然物(てんねんもの)難有(ありがた)がるは傍痛(かたはらいたし)。
小鉢(こばち)、香(かう)の物(もの)、米の飯(いひ)、肝吸(きもす)ひ、水菓子(みずぐわし)附(つ)き。
小鉢(こばち)は小鰭(こはだ)にて、甘(あま)めながらも程(ほど)よき〆具合(ぐあひ)。
香(かう)の物(もの)は白瓜(しろうり)、甘藍(キャベツ)、蘿蔔(すゞしろ)と月並(つきな)み。
水菓子の紀州南高梅(なんかうむめ)甘露煮(かんろに)は聊(いさゝ)か酸味(さんみ)が勝(まさ)る。
----------------------------------------------------------------------------
*)野田岩に詳(くは)しき方(かた)の話(はなし)に據(よ)る。
**)同(おな)じ方(かた)。