"一期一会"浜松の隠れ家として使いたい … 『いっ木』。
何を隠そう浜松に途中下車したのは決して『あつみ』さんの『白焼重』や『鰻』だけが目的だった訳ではなく本当の目的は静岡一とも称されるカウンター割烹である當店『いっ木』さんへ寄せていただくことが主でありあくまでも『あつみ』さんの『白焼重』はその序であったと悔しいから嘯いてみます(笑)さて、當店の店主である『一木 敏哉』さんは京都の『菊乃井本店』さんにて研鑽を積まれた後、浜松の地に自身の店を構えられた新進気鋭の若き料理人という噂はかねてより聞及んでおりました。いつの日か伺ってみたいと思っていたものの飛び道具の飛行機での移動が多く浜松に行くことはなかなか簡単そうでありながら現実的にはかなり難しく今まで伺うことが叶いませんでしたが今回は不可抗力により全行程、新幹線での移動。この機会を逃しては次に何時行けるか判りませんので浜松で途中下車して一泊することに初めから計画していたのでありました。店は白壁塗りのシンプルな店構えで掲げられた『いっ木』の暖簾は修行先の『菊乃井』さんから贈られたものらしく『贈 菊乃井』の文字が。暖簾をくぐると石畳、手前に掘りの座敷席その奥手に全六席のカウンター席。カウンターは目を瞠るような立派な無垢の一枚板、店主との距離感は極めて近く移転する前の西木屋町の『食堂おがわ』さんの距離感に近いものが感じられ個人的に好きな雰囲気の店でした。何せカウンター席がゆったりとした間隔が空けられて全六席というのが良い。これだと店主の目が行き届きますし美味しいものを戴くにも丁度良い席数だと思う次第。座り心地の良い椅子に腰を預けると先ずは『おぶ』が供された後ひと呼吸措いてから飲物が問われ瓶ビールを取り敢えず所望、料理は細魚の昆布〆に煮凝りの上に甘海老と海老の子、うすい豆に蕨という先付から順に椀物は五月ということで『鯉』の素揚げと菜花を使った吸物、そして目にも楽しい八寸は小鉢や豆皿に珍味や酒を呼ぶ酒肴が色々、静岡らしい酒盗や山葵菜に『菊乃井』さん譲りの烏賊の身の中に唐墨(カラスミ)を詰めた印籠詰(インロウヅメ)、鼈(スッポン)のエキスがギュッと凝縮された滋味溢れる○出汁のゼリー寄せ粽(チマキ)の中には鯛ずし出汁で炊かれた車海老、鞘豌豆(サヤエンドウ)に麩には思わず頬が緩みました。料理に合わせ戴いた日本酒は磯自慢、初亀、開運、喜久酔、菊姫、國香といった静岡を代表する地酒がずらり何から戴こうかと悩んでいると三種類の酒がお任せで供される『利き酒セット』がお奨めと伺い店主に委ねることに。何といっても店主は日本酒のソムリエとも喩えられる利き酒師の資格を持たれている方、自ら作られる料理の味と酒とのマリアージュは誰よりも判っている筈であり身を委ねるのが賢明でしょう。選ばれた酒は英君の特別純米酒、志太泉と國香の純米吟醸酒が180㍉入のグラスの七~八分まで注がれて供されたのでこれだけで二合強の量ですから量的にも充分かと。続いて供された料理は造り、二皿に分けて供され一皿めは鯛の腹身と『のどぐろの炙り』、二皿めは炭火で皮目を焼いた鰹に藁燻で香りづけをしたもので厚切りにされた鯛の腹身はコリコリとした歯応えと適度な脂が楽しめ『のどぐろの炙り』は言葉は不要、脂ノリノリの『のどぐろ』に自称『ノドグラー』歓喜、鰹は腹身ではなく背の真っ赤な部分に藁燻をつけれたもの。こってりした『のどぐろ』にさっぱりした『鰹(カツオ)』の組合せは濃淡の味覚のメリハリだけではなく視覚、臭覚までをも考えられたもの。焼物は贅沢に『河豚(フグ)の白子焼』に鮑(アワビ)の上に『海胆(ウニ)』をたっぷりのせ焼き目をつけたものというこんなのアリという超豪華版。目を閉じて想像してみてください。不味い訳などある筈がありません(笑)豪華な海の幸の味の余韻に酔いしれていたところ次に供されたのが『黒鯥(クロムツ)』に茸のたまご餡をかけ粉山椒と花山椒でピリリと全体の味を締めたもの。『のどぐろ』は学術名は『赤鯥(アカムツ)』、赤鯥の後に黒鯥の料理を供されたのは確信犯的と思える店主のセンスに脱帽です。〆の食事は『鯛の子のぞうすい』、鯛の子がこれでもかという程に入れられておりました。水菓子は二段構え店主自ら点てたお薄を戴きコース料理はひと通り。料理の味付や椀物の吸地はあくまで滋味優先で食べ終えるころに味のトーンを合わせたもので同じ『菊乃井』さん出身で今や人気絶頂で予約が取り辛くなってしまった『中善』さんの味付けとは対極のもの。今回戴いた料理は九千円也の料理、都内なら用賀の『花邑』さんや『本城』さん、赤坂の『詠月』さんといった人気店と同価格帯。京都であれば『中善』さんや『大渡』さん、『とくを』さんあたりと比較することになると思いますが上記の人気店と比べても一歩も引けを取らぬ内容。個人的には『光安』さん以来の感動を覚えました。一木店主の人柄も素晴らしく、しばらくの間、京都に戻る際には浜松で途中下車を繰り返すこととなる可能性も無きにしに非ず。初訪ながらも総合評価は★★★★☆(4.5)と評価させて戴きました。おまかせのコース料理は七千円から壱萬五千円まで四コース今回は上記の内容で下から二番目の九千円ですからその上を頼んだら一体どんなことになるのやら(笑)浜松に『いっ木』アリ、久しぶりの佳店です。
Restaurant name |
Ikki
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Categories | Japanese Cuisine、Fugu (Blowfish)、Suppon (Soft-shelled Turtle) |
Phone number (for reservation and inquiry) |
053-456-0850 |
Reservation Availability |
Reservations Only |
Address |
静岡県浜松市中央区田町329-8 |
Transportation |
55 meters from Daiichi Dori. |
Opening hours |
Business hours and holidays are subject to change, so please check with the restaurant before visiting. |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥15,000~¥19,999¥6,000~¥7,999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (JCB、Diners、AMEX) Electronic money Accepted |
Number of seats |
10 Seats ( 6 seats at the counter, 4 seats at the sunken kotatsu) |
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Private dining rooms |
OK For 4 people |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables |
Parking lot |
not allowed |
Space/facilities |
Comfortable space,Counter,Horigotatsu seats |
Drink |
Japanese sake (Nihonshu),Japanese spirits (Shochu),Wine,Particular about Japanese sake (Nihonshu),Particular about wine |
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Food |
Particular about fish |
Occasion |
Business |With friends/colleagues This occasion is recommended by many people. |
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Location |
Secluded restaurant |
Website | |
Remarks |
Cards are only accepted at night |
素晴らしい御縁をいただき前夜は10kgアップの『九絵(クエ)』にはじまりAOCブレス産の『シャポン』に1kg超の『伊勢海老』、『吉浜鮑(キッピンアワビ)にヨシキリザメの『鱶鰭(フカヒレ)』に『上海蟹(シャンハイガニ)』、西表島産の『カマイ(猪)』という高級食材を惜しげもなく使われた超悶絶級の中国料理を知る人ぞ知る会員制の『飛龍』さんにて堪能させていただきました。そして興奮覚めやらぬ翌日は約七年ぶりに寄せていただいた『懐石いっ木』さんへ。昼のミニ懐石のコース料理とともに品書きには載せていない『初亀』かすみざけ、『國香』中汲み無濾過生原酒、『英勲』愛山ノ山廃等、一木さんの隠し酒を楽しませていただきました。料理は『赤烏賊(アカイカ)の真薯』に『蓮根饅頭(レンコンマンジュウ)』、『車海老(クルマエビ)』に『鶏松風(トリマツカゼ)』に『トラ河豚』の煮凝り、『地金目』に『氷見の鰤(ブリ)』の造りに『越前蟹(エチゼンガニ)』に『猪肉(シシニク)』の小鍋立。前夜は『飛龍』さんで西表島産のカマイ、そして『いっ木』さんでは井伊の尼小僧様と直虎様で一躍有名になった井伊谷産の罠掛けで獲られた『猪肉(シシニク)』とジビエづいています。炊きたてのごはんで『海老芋(エヒセイモ)』の雑炊、二種の水菓子に抹茶にて昼のミニ懐石の料理はひと通り。突発的な前日夜の予約でしたが折角、浜松に来られたのですから。と休日を返上し温かく迎え入れてくれた一木さん。二時間超えの一木さんと二人きりでの料理談義に酒談義、京の雅な話と会話は尽きることなく贅沢な時間を愉しませていただきました。『菊乃井』さん仕込の食べ終える頃に味のトーンを持ってくる『滋味優先』のブレの無い味わいは未だ健在。