Official information
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平成25年大晦日スペシアル/潮騒のメモリー
【その一人当たり7千円オーヴァをコンスタントに記録し続ける大衆そば居酒屋での、或る大晦日の出来事を発掘してみましたので】
「その少女の姿は、それっきりもう見えなくなりました……」
2013年大晦日、午後十一時。全身からめんつゆの臭いを立ち昇らせた男が、国鉄京浜東北線に揺られていた。隣で、黒いストッキングに覆われた逞しい太腿を見せつけるうら若き乙女が、男のめんつゆの臭いに気付かないように気付かないようにしていて、男も、彼女が気付いていることに気付かないように気付かないように、すました顔を精一杯キープし続けていた
「明日、奇跡的に休みんなりましたよ。明日あまちゃん10時間スペシャル観れるよ~、良かった~ !!」
「あまちゃん」というと、天知茂さんの回顧録ドキュメントだと思われる方も多いと思うが、そうではない。「鳩子の海」から続く(鳩子の海が最初じゃねぇだろ)、NHKの朝の連続ドラマのことで、高視聴率の怪物番組らしい。
<H25.12.29>
相棒、ミッドホースと十条の居酒屋で呑んでいた時だ。
なんでも、その「あまちゃん」というやつは面白いらしい。何故面白いのかというと、「あまちゃん」というやつには、小泉今日子とか薬師丸ひろ子とか、それと宮本信子やらなんやら出ているらしいのだ。
――確かに、それは面白そうだ……
私 「宮本信子いいよな。三十年前からずっとお婆ちゃん役しか観たことないけど……」
ミッドホース 「宮本信子は三十年前からお婆ちゃん役じゃなかっただろ、「たんぽぽ」とか主演してて」
私 「あ~、宮本信子か ! 乙羽信子と勘違いしてた」
それからミッドホースは、酒に酔いながら「あまちゃん」のあらすじを熱く私に語った。話を聞くと確かに面白そうだが、その時には、それほど気にはしていなかった。
「あすなろ行くか?」
翌日が急遽休みとなって、完全にハイになっているミッドホースの欲求を発散させてやろうと思い、カラオケスナックへの移動を促すとやる気満々、二つ返事で行こうぜとなった。で、いつものように演芸場通りをふらふらと歩いて信号を越えて坂を下り、「あすなろ」のドアを引いた。が……
――なんなんだ、この年末にフロアを埋め尽くす夥(おびただ)しい数の老人の群れは……(笑)
<H25.12.31 新橋/野郎三人呑み>
私は世間に遅れて初めてみた「あまちゃん」の感動を、誰かと共有しなければならないと思った。
が、おっさんのくせ自分のことを大人と子供の中間、コドナと名乗る男が突如、「あまちゃん」の話を先に切り出したのには驚いた。彼も私と同じく「あまちゃん」に対し無知だったが、何の気なしに合わせたチャンネルから、10時間ほとんど最初から最後まで観切ったらしい。私もこのダイジェストを半分とはいえ観ていなければ、10時間もテレビに噛り付いたことに熱弁を奮うこの男を馬鹿にしたかも知れないが、彼の熱い思いはよく理解できた。そして彼は、なんと今夜の紅白に小泉今日子が出るかも知れないのだと、非常に気になる極秘情報を私に漏らしたのである。
やがて宴もたけなわ。彼はスマートフォンで「潮騒のメモリー」を探し当て、懸命に歌を覚えようとしているようだった。何故か“ジョニーに伝えて~ 千円返して~♪” の部分が非常に気に入ったようで、その部分だけをうわ言のように繰り返し繰り返し……
当然のように、寄せ鍋にうどんセットを三人前平らげた。しかしまだ何か物足りなく、ピザでも頼もうかとチャイムを押した。直ぐにホールのあんちゃんがやってきたが、私はふと思いついて、そのあんちゃんを返した。年中蕎麦を食っている私に年越し蕎麦もクソもないが、蕎麦が食いたくなったのである。つい最近、店構えといいホールの小姐といい、居酒屋に酷似した形態を持つ“手打ち蕎麦屋”を、我々は新規開拓していたのだ。しかし今日は大晦日、相手は手打ち蕎麦屋の名を語る大衆居酒屋。果たして営業しているのか……
幸い、私はその店の屋号を覚えていたので、電話番号を手繰ることができた
「すみません、今日営ってますか?」
「営ってますよ♪ 今からですか? お名前を」
「N脇です!」
話は早かった。「年越しそば食おうぜ!!」
既に〆のうどんまで食っているにも拘らず、大馬鹿三人パーティが、大晦日の新橋の街を薄馬鹿のように移動する。
「あのラーメン屋、やってんのかよ?」 自称、日本制覇男が呟いた
「ラーメンじゃねえよ、年越し蕎麦って言ってんだろ。中国人が営ってる(かは知らない)手打ち蕎麦屋よ」
道を一本間違えながらも、兎も角我々は、その居酒屋に似た蕎麦屋にたどり着いた。
まさか最奥に鎮座するテレヴィジョンが映し出しているものは、これは紅白 !? ではなかった。世の中、そんなに都合良くいくわけがない。ボクシングのタイトルマッチが流れていた。そして我々はしかも、またつまみから注文し始めた。
「板わさと~、明太子入り卵焼き!!」 板わさがまるでテーブルマジックのように、すぐになくなった(笑)。
「板わさもう一つ!!」 一つでいいだろ、板わさは……
と、“ガチャン!!”
日本制覇野郎がビールをぶちまけやがった。私のズボンがもろにビールでびちょびちょになった。もう酒の席でこいつの向いに座るのは絶対にやめようと、私は決心した
「田舎せいろう大盛りと~、この御前そば大盛りください♪」
と、やっと蕎麦にたどり着いた頃だったかは忘れた。テレヴィジョンがボクシングを吐き終えて、なんと紅白歌合戦に切り替わっているではないか。期待が高まりつつも、手は休めない。何故なら、手を休めると目の前のコドナに蕎麦を全部食われてしまうからだ。冷たい蕎麦が冷たくて美味い! などと子供のような感想しか浮かばなくなってきた。特に御前そば大盛りは確か\1,500超と高価な設定だったが、量が尋常ではなく大盛りで雰囲気もあり、不思議と満足感がある。
と、また“ガチャン”
日本制覇野郎が、今度はそばつゆを撒いて、ビールの乾きかけた私のズボンが、今度はそばつゆでまたびちょびちょになった。よく分からないのは、この日本制覇失恋魔術師野郎は、幾らも飲んでいないくせにこんなへろへろになって、それでも訳の分からない持論を展開し、恰好をつけ続けていることだった。そういうことを“恰好悪い”ということに、いい年ぶっこいてまるで気付いていないらしい。
突如、その場の空気が、何か一変したような気がした。
「……?」
「あまちゃん出てきたよ~!! あまちゃん!!」
「あんなの○○じゃねえかよ!!」
一所懸命頑張っているあまちゃんに対して、失恋魔術師がまたほざいている。こぼしたつゆを貰ってやったらそれを私に押し付け、「食っていいよ! 俺はいいから食っていいよ!」とまた訳の分からないこと粋がってほざいた。私は、今夜この男に声を掛けたことを、心底後悔した。
そこからが、まさに畳みかけるようだった。畳みかけるという言葉がこの世に存在するというなら、それはこんなことなのだろう……
私 「だから俺のつゆは始めからあって、俺は食ってるから。お前がぶちまけたから貰ってやったんだろ、そのつゆ!!
コドナ 「小泉今日子出て来た~ !!」
私 「すみませ~ん! 韃靼蕎麦(だったんそば)大盛り !!」
気付けば、中国人スタッフオンリーだと思っていたこちらの店だが、厨房から職人風の年嵩の男性が出てきて、我々と同じように食い入るようにテレヴィジョンを見つめていた。こちらの手打ち蕎麦は製麺所からの買い物だろうと訝っていたが(いや、こんな店ならそれで十分だと思うが)、案外自前なのかも知れない。
そしてついに……
薬師丸ひろ子が~ !! ついに !!
――まさか出てくると思わなかった、薬師丸ひろ子……
私が日本最高の女性ボーカリストと信じてやまない薬師丸ひろ子さんの、幾つになっても処女性を失わぬ天使の歌声がこの居酒屋の隅々までをも捻じ伏せて、結局最後にはやっぱり薬師丸ひろ子さんが全部持ってったという、ただそれだけの話である。
普段やったことのない年越し蕎麦も食ったし、紅白でキョンキョンと薬師丸ひろ子も聴けた。もう今年も思い残すことはない。永遠のマーメイドが最後まで歌い上げた。目の前でコドナが男泣きしながらテレヴィジョンに向かって拍手を送る姿が、まるでスロウモーションのように映えていた
――もう今年も腹いっぱいだ…… もう食えない……
Fine
Restaurant name |
Kem Bi(Kem Bi)
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Categories | Soba、Izakaya (Tavern)、Seafood |
Phone number (for reservation and inquiry) |
050-5592-9130 |
Reservation Availability |
Reservations available
※混雑時・金曜日・12月はお席2間制となります。 |
Address |
東京都港区新橋3-9-7 黒滝ビル 1F・2F |
Transportation |
3 minute walk from JR Yamanote Line Shinbashi Station Karasumori Exit 3 minute walk from Tokyo Metro Shimbashi Station Karasumori Exit 5 minute walk from Toei Mita Line Uchisaiwaicho Station 7 minute walk from Tokyo Metro Ginza Line Toranomon Station Intersection 2nd traffic light from Karasumori Exit [ Turn left at Y Mobile and walk for about 1 to 2 minutes, and restaurant will be on your left. 256 meters from Shimbashi. |
Opening hours |
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Budget |
¥3,000~¥3,999 ~¥999 |
Budget(Aggregate of reviews) |
¥6,000~¥7,999~¥999
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Method of payment |
Credit Cards Accepted (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners) Electronic money Not Accepted QR code payment Accepted (PayPay、Rakuten Pay) |
Table money/charge |
お通しお一人様210円(税抜)頂戴しております |
Number of seats |
90 Seats ( The first floor has 5 seats for 4 people (tables), 1 seat for 6 people (table seats), and the second floor has various private rooms for 2 to 26 people.) |
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Private dining rooms |
OK For 2 people、For 4 people、For 6 people、For 8 people 8 semi-private rooms, 1 private room (2 to 26 people) |
Private use |
OK Up to 20 people、For 20-50 people |
Non-smoking/smoking |
No smoking at all tables Due to the enforcement of the Tokyo Metropolitan Passive Smoking Ordinance |
Parking lot |
not allowed |
Space/facilities |
Comfortable space,Wide seat,Counter,Tatami seats,Horigotatsu seats,Free Wi-Fi available |
Set menu |
All you can drink |
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Drink |
Japanese sake (Nihonshu),Japanese spirits (Shochu),Wine,Cocktails,Particular about Japanese sake (Nihonshu),Particular about Japanese spirits (Shochu) |
Food |
Particular about fish,Healthy/beauty food menu,English menu available |
Occasion |
With family/children |Alone |With friends/colleagues This occasion is recommended by many people. |
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Location |
House restaurant |
Service |
Extended party hours (more than 2.5 hours) |
With children |
Kids are welcome(Babies are welcome,Preschool children are welcome,Elementary school students are welcome)
*Children are of course welcome to enter. |
Website | |
Phone Number |
03-3432-7633 |
<R4.11.10 夜の部>
「健美」
「300mlって、小さいよね …… ?」
健康的且つ美しくあれ、という願いの籠められた屋号の本格日本そば屋。
私の座右の銘、「イオナ、私は美しい」のポリシーにも完全に適合するお店にコドナとともに訪れるのは、ずいぶんと久しぶりとなろうか。
すでに数組の先客の姿があったが、空いていたテーブル席に腰を据え、焼酎だけはやらないと頃に決めてお酒を考える。FD比率(フード・ドリンク比率)のDの割合が常に異常値を示す我々にとって、こちらのネックはお酒が高くつくということだが、今夜、それは覚悟しての来訪。
それでもどこか吹っ切れず、綿密なコストマネジメントを図って、一合よりはマシだろうと300mlの冷酒を注文したのだが、300mlなんか、すぐになくなっちゃうものなぁ ……
今までやっていたガード下の一杯飲み屋が、たしかに値段は安いものの食べ物がぜんぶ不味く、またお酒がぜんぶ胸焼けし、且つギャルソンの女の子が耳元で発狂したような奇声をあげ続けるために(どんな店だよ ! でもこれほんと !)、堪らずに逃げ出してきたというのがほんとうのところ。
お猪口ふたつに板わさ。それだけでもぼくたちは平静をとり戻す。
誇り高きgreenの「the 練りわさび」が実に潔く、隠し味のしょう油という日本のtraditionalなソースに限りなく相乗すれば、かまぼこのグレードなど、もはや二の次、三の次 ……
そしてトマトにトリュフを合わせた高級イタリア料理を注文。
これだけのトリュフを荒川河川敷で嗅ぎ分けるブタは数少ないといい、そのうちの一匹は海を渡り、ニコラス・ケイジの相棒として立派に役目を果たしていると聞く
“ふつう”のおそばを大盛りで注文。
背のテレヴィジョンで紅白歌合戦が掛かり、キョンキョンが出てきたら教えてくれとあらかじめコドナに頼んでいたが、今夜は紅白歌合戦もレコード大賞も未だ掛からないという。
今は昔の夜、背のテレビに紅白歌合戦が掛かっていて、とつとして一曲の懐かしいメロディを若い二人の女の子が歌いだしたと思ったら、それをキョンキョンが横どりして、そしたら皆俄然 ! 食い入るようにそのブラウン管に釘付けになったことが、この空間にいると鮮やかに蘇ってくる
“田舎”のおそばを大盛りで注文。
そしてそれだけでも完成されていた小泉キョンキョンの歌を、とつとして出現した薬師丸ひろ子が引きとって歌い始めたとき、もう堪らずに、釜に泳がせたそばもほったらかしで茹で場から職人のおじさんが飛び出してきて ! 魂抜かれたように呆然とテレビを見あげ続け ! そしてぼくたちは野郎三人、人目も憚らずに揃って号泣したね ……(笑)
あのときいっしょに泣いてくれたおじさんが、今夜も変わらずに最適な調子で茹であげてくれたそばを、ぼくたちはふたたび噛みしめてる
そばは、ほんとは東京の人間なら噛んじゃいけないのだけれど、噛みしめるほどに涙が滲み出てくるものだから、もう追加100円の(それは言わない約束 !/一枚のそばをふたりでやる為には最初から追加つゆが必要)つゆがすぐに薄まってきちゃっていけない ……
その涙味をなんとか誤魔化すように、もう狂ったように練りわさびをつゆに溶くコドナ。それを見て、この男に粋なそばのやり方を伝授するのはもう無理かも知れないと、半ばあきらめムードに耽るぼく
【私たちの今夜の献立】
・けんび純米吟醸 300ml @1,500 *2
・いたわさ @409
・搾菜風サラダ @618
・挽きぐるみそば/大盛り @909
・追加つゆ @100
・田舎そば/大盛り @1,273
税込みで〆て7,540円也