「だからお前は童貞なんだよ！ 何でそこで土下座ができないんだっ！」 : Budou Tei

新卒が配属された。
仮に、彼の名前を力勝男(りき・かつお)としよう。

プロレスラーのような巨体で、顔もかなりの強面である。
しかし相反して、内面は気弱でデリケートでガラスのハートを持っている。

そんな力勝男が言うには先日、同期の飲み会があったという。

彼の隣に座ったのは、スタイル抜群のハーフだかクオーターだかで、
「白鳥・フランソワーズ・麗子」といった感じでミドルネームが入っているという。
彼女の学生時代のバイトはモデル。
しかもその日の飲み会の服装だが、体の線が出る服で、ボンキュッボンがまるわかりとの事だ。

そのフランソワーズだが、酒に酔ったのだろうか、
力勝男に対し顔を近づけ「あんた、童貞でしょ？」と聞いてきたという。
「ねぇ。あんた、童貞でしょ？」と30分にわたり問い詰められたという。


…なに？ その、ごほうびプレイ。
お前はマンガの主人公か何かか？


「力勝男くん、それで君はなんて返答したんだい？」と私は聞いてみた。
「『いやー』とか『別に』なんて言い返しました…」

ここで私は、彼につかみ掛からんばかりにせまった。
「お前は何でそこで土下座が出来ないんだ～！ だからお前はいつまでたっても童貞なんだよっ！」
「ひえっ。先輩パワハラはやめてください」
「失礼なこと言うな！ 俺はパワハラなんかしえねよ。俺がするのはセクハラだけだ！」
あったく。何が草食男子だ。情けねえだけの軟弱野郎のくせにカッコつけんな。肉食え肉！

「今からフランソワーズのところに行って、パンツ一枚で土下座してこい。『一回お願いしますっ！』って、ひたいを地面にめり込ませろ」
「ひえ～、それだけはご勘弁を」
彼はおびえ始め、このままだと私に対し、パンツ一丁で土下座しそうな勢いである。

「…しかたねえな。今すぐ本郷三丁目の『ぶどう亭』に行って、勇気を注入しに行くぞ」
「？」
「男にはな、土下座をしなくてはならない時があるって事を教えてやるゼ」

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こちらは本郷三丁目駅のすぐそばにある洋食店である。
場所は、バーガーキングの入っているビルの地下一階。
ウマくて、安くて、荒っぽい、日替わりランチが人気の小さな店である。

■今日のランチを注文（鳥もも肉ステーキ・キノコのクリームソース、メンチカツ）
　サラダ、みそ汁、ご飯付き。

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「ふ～。先輩、美味しかったっす。お腹一杯っす。でも何で『ぶどう亭』なんですか？」
「それはな、ぶどう亭≒ぶどうてい≒ぶ童貞≒不童貞、だからだ」
「……先輩、親父ギャグすか？(チッ)」と彼は吐き捨てるように言った。そして私をさげすんだ様な目で見た。

さあ後輩よ、オレの一世一代の大土下座を、しっかり目に焼き付けろよ。