ときに白サギ舞い降りる庭。天ぷらを頂く幸せ。 : Naruse

現在食べログ天ぷら部門
全国1位の成生さん。（2023年10月現在）

もちろんその技術もさることなれど
その天ぷらを支える
様々な複合的要素にも心踊らせます♬

まず室町時代に作られた庭園があり、
カウンターの隅から隅まで
大きな窓に縁取られて
美術絵のような緑と池の庭を眺める。

窓に仕組まれたガラスは
特殊なコーティングを施されており、
どんな光であっても映りこみしないので
ガラスはあってもまるで無いかのような透明感。

お客の手許を照らすピンスポットは
真上からキチンとお客のお皿を照らしながら
決して真下以外に光量を漏らさず
離れた席から見てると
カウンターを照らす遠い席の照明は
点灯してないかのような錯覚に陥る。

そのカウンターの配置も含めて
内装は有名な木島徹さんによる完璧な建築。

何もかもが無駄を排して
スタイリッシュであり、かつモダン。

しかも食材は
富士山の肥沃な台地から採れる濃厚な野菜。

極めつけは
サスエ鮮魚店から到着する
静岡最高の鮮魚。

今や静岡や焼津には
サスエさんから卸される魚を使われるお店多かれど
成生に持ち込まれるものは
その中のトップオブトップ。
常にサスエさんは
まず成生に一番の魚を選びます。

先日NHKで放映された
サスエさんを取り上げたプロフェッショナルでも
成生あってこそ
私の今があると繰り返しおっしゃってました。
お２人の絆は深い。

もう観客は贅沢な空間で
大将·志村さんの一挙手一投足に見惚れ
ため息つきながら料理を頂く。

さながら志村の大将による
天ぷらの一大アトラクション。

とはいってもそのアトラクションは
ド派手な立ち回りではなく
静かに語りを交えながら
おだやかに過ぎてゆきます。

今の流行りで言うなら
ジョン·クイックの派手な殺しではなく、
イコライザーのマッコールさんのような
静かに殺して観客の心をぐっと掴むやり方。
そうそう、９秒で殺すか、９秒で揚げるか。


たまらない時間が過ぎてゆきます。
あなたもご縁があれば
殺されてみては！　(*^-^*)

晴天に輝く庭を借景に
お昼の成生で今日も見事な天ぷらを
頂きました。

相変わらず
サスエ鮮魚店の前田さんから入荷するお魚は
ピンの中のピンばかり。

この日も朝とれのアジが
とても濃厚な味わい。
聞けば前田さんが成生に卸すアジは
群れの先頭を泳ぐものに限るとか。

どうやったら
大量に陸揚げされたものから
先頭を泳ぐのを選別できるのか。
すばしっこい顔でもしてるのか。

先頭を泳ぐので
一番美味しい食料をたっぷり食べていて
結果アジの肉質が圧倒的に違うらしい。

前田さんにかかれば
魚の顔を見れば
どんなものを食べてきたか
わかるとか。

それなら浜ちゃんが
本当にフレンチクルーラー大好きか
サスエの親方なら
即座にわかるんだろうな（笑）

この日は
東京で一番元気な料理人をお連れして。
志村さんの目の前の席で
前のめりになって
ひたすら揚げの技を凝視。
天ぷらの鍋に頭突っ込むんかい
とツッコミ入れたくなるほど。

私もこの日驚いたのは、
序盤のお造りの完成度。
この日は5.8㎏のヒラメ。

成生さんはお造りを目の前で
油通しされます。
油の鍋をじっと見つめながら
大将は魚と油の頃合いを見極める。
成生流の油通しは
素材を低温の油にくぐらせて
脱水させることで
旨味とコクを引き出す技術。

鍋からあげられたヒラメは
油にうっすらコーティングされていますが
決して油を感じさせなくて
ゴマ油がフッと香り
同時にヒラメの味わいが
膨らみを増しています。
素晴らしかった。
料理人が
食い入るように見るのがわかります。

成生さんの天ぷら。
日々進化してらっしゃる♪

サスエの魚に志村大将の天ぷら。
キリリとした建物とお庭の情景。
ハイセンスな照明テクニック。

そういえば、カウンターから庭を臨むガラスも
ある時より特殊コーティングされた特注品に入れ替えて
光がガラスに映りこまない低反射ガラスに変えています。
大きく開けた窓からは
スッキリクッキリと庭が見えます。
気持ちいい～♬

ああ、やはり成生は総合芸術だ！

移転後、初めての成生の夜の部。
人生初の経験に大興奮でした。

これまではお昼ばかりの訪問でしたので
照明デザイナー・東海林弘靖さんによる
ライティングの素晴らしさは
お店よりお聞きしているばかり。
しかし、実際に経験した照明の見事さ。
も～～、その超絶技法には
心臓の鼓動が高まりました。


お店の待合室からカウンターに入った、
そのときは明るい間接照明に包まれて
穏やかで上品な柔らかなライトでスタート。

そこから照明は最後の天ぷらに向けて
10段階に明るさを落としてゆきます。
食事の最中にその調光はゆっくりとなので
その変化に客側は気づきません。

気がつけばお客側のカウンターは
ゆるりと光量が落ちていき
いつの間にか大将の手元の天ぷらの鍋に
照明が集中されてゆきます。
つまり、照明のうつろいと共に
お客の目線も光につられて
おのずと大将に注がれてゆく仕掛け。

目が慣れてくるので
客は自分の照明が落ちてゆくに意識なく、
どんどん大将の姿と揚げてゆく鍋が
劇場でスポットに照らされるように
浮かび上がります。

ひとり芝居のピンスポットのように
大将が天ぷらに向かい合う美しさ。
それはとても幻想的でもあります。

そうか、こうゆう食事の見せ方ってあるのか。
ただ舌を巻くしかありません。
素晴らしい演出です。

変わらず大将の揚げのテクニックと情熱は
移転後も益々冴え渡り、
その語り口調もやっぱりカッコイイ。

お見事でした。

成生の天ぷらと
照明のテクニックが
見事に競演して感動を与えてくれます。

お昼の成生は食事と共に建築の美しさを楽しみ、
夜の成生は照明の美しさに身を任せます。
ある意味、食事の楽しみ方として
全く違う顔を見せてもらえます。

最後は別室のお茶室に移動して
香り高い静岡のお茶とデザートを堪能。
（その日は茶室の写真撮影禁止でした）

ちなみに年明けより食事のお写真は解禁。
写真はその日の一部をのせています。


心が豊かになるような
たまらない一夜でございました。


＜補足＞
しかしなんだね。
人によっての感性って違うもんだと思うのは
新店舗での他の方々、夜のレビューで
照明に触れてるのが皆無でした。

皆さんさすがに全力で
食事に集中してるのでしょうか。

私なんか照明の巧さに大興奮して
周りをキョロキョロ見てばっかりで
最後トイレに入って鏡みたら
髪が乱れに乱れ、
台風一過みたいになってた(>_<)

ちなみにここで使われてるスポットライト。
「超狭角」と呼ばれる
最新ライトを使用してるので
カウンターの上からの光は
横に一切漏れなくて直下に落ちます。
でも手許のカウンターはしっかり照らす。
なので左右のお客様の真上、
電球の根元を確認すると
電気が消えてるとしか見えない。
でもその人の手許は
きっちりと明るく灯されている。

いまどきのテクノロジーに驚かされて
やっぱり髪振り乱れちゃいます。

移転されてより
新店にも何回か訪問させて頂いております。
けれど残念ながら2021年9月現在、
お店の内装は撮ってもOK、
料理のお写真は撮影NGとなっています。

しかし移転前のお料理とは
どの季節の訪問であろうと
ものすごくグレードアップされています。

カウンターの目の前に広がるお庭は
室町時代に太田道灌が作られた由緒正しき庭園。
これを京都の庭師さんが出張で来られ
定期的に保守管理されています。

この歴史的遺産があって
そこを借景として目の前に
成生さんが新築のお店を構えられました。

お店のデザインは大阪の米増も手掛けた
有名な木島徹建築設計事務所。

華美を排してすっきりと上品に、
間接照明までよく考えられていて
白木の美を極めた現代和風。

カウンターに着座すれば緑いっぱいが
額縁に切り取られた如くに目の前に広がります。
ため息をつきながら、
すべての雑念が洗い流されます。
もう極楽往生した気分。

この日の素晴らしきコースは
次の通りです。

☀落花生のポタージュスープにまいたけを投入。
　⇒出汁がしっかり利いています。

☀はたのお造りは朝のとれたて。
　⇒もちろんお魚は相棒と言うべきサスエさんからすべて仕入れたもの。
　　ですのでねっとり感が舌に絡みます。噛むと甘味がましましに。

☀解禁になった伊勢海老を炭で炙って。
　⇒浜納豆を絡めてトーチみたいな感覚で頂きます。
　　エビは50度の低温油にくぐらせて、旨味ぐんとアップ。

≪ここから天ぷら≫

☀アジに大葉を巻いて
　⇒あえて気泡の衣を作って、揚げる時に衣で包み込みながら、蒸らすだけでなく、
　　空気と余分な水分を抜く。結果、サクサクでありふわっと揚がります。

☀新ぎんなん
　⇒もちもちの食感はぎんなんの粘りもあって、フレッシュそのもの。

☀なごりの丸おくら
　⇒大将がお店の開店前に畑から収穫されてきた、渾身の一品(笑)　

☀浜名湖の天然車エビ

☀キス

☀大ぶりのまいたけ

☀優しい味わいの白身、連子タイ。

☀その日取れた野菜でサラダ
　⇒じゃがいも、ミント、まくわうり、みずのみ、四角豆、そしてカツオ

☀エビの足とエビ味噌

☀収穫して常温で日数をかけて寝かしたカボチャ。
　⇒これを長い時間油の中で寝かせて、じっくり焼き上げるみたいに揚げる。
　　身はほっくり、皮の苦味も香りとして。

☀まだ骨に身をつけたアカムツ、これを手渡しで。
　⇒これがまたジューシーなこと。

☀じゃがいもも手渡しで
　⇒これも長時間揚げて、皮目はパリッと、身はホクホク

☀河口でとれる海ウナギ。

☀小アジ
　⇒粘膜がしっかり感じられて、身はふっくら。静岡の魚ってすごい。　

☀天丼ではなく天バラ。後半は出汁を入れて天茶
　⇒今回はまいたけを使ったさっぱりした出汁

☀水だしのお茶

☀いちじくとジャージー牛のジェラード
　⇒食事の間にスタッフが練っていたという、出来立て。

☀二煎目は渋さたっぷりのお茶


移転されて、魚に関しては
サスエさんとのタッグが益々凄みをだしてる感じ。

そして得意の冬の根菜のみならず、
この時期の野菜の旨味やら味わいを
思いっきり引き出すワザに脱帽するばかり。

成生の進化は止まりません(^-^)v