私、どういう訳だか「天ぷらそば」に凝っています。
「かけ」「もり」の好きな私が、「天ぷらそば」を注文したのは、遥か子供の頃のことでした。
ところが、どうした加減か、今年に入って美味しい「天ぷらそば」を探求しようということになり、今春から蕎麦屋へ入る度にこれを食べています。
契機は、「天丼」にありました。
天ぷら屋のカウンターに座り、お好みで季節の美味しい天種を揚げてもらいながら「ぬる燗」を飲むというのが大好きなのですが、〆に頼む「小天丼」と「蜆の赤出汁椀」の美味しさの不思議を考えていたら「そうなんだ!」と小膝を打って気付きました。
通常、天ぷら屋の「小天丼」は、「芝海老と小柱のかき揚げ」ですが、私は好きな天種(鱚と青唐辛子、若くは、メゴチと獅子唐辛子)で作ってもらいます。小さな丼には、必ず蓋が被さっています。蓋を取ると一片の柚子の香りが混ざった香ばしい天つゆと衣の匂いが鼻を抜け、丼が「早く食べて!」と言っているようです。
江戸前の天丼には、この蓋が重要だと気付きました。
熱々のご飯には、小鍋で軽く煮て天つゆを絡ませた天種が載っています。これに蓋を被せることによってご飯の湯気が衣をシットリさせます。衣が柔らかくなっていますから、ご飯と天ぷらが一体となり、口に運んだ時により美味しく感じます。パリパリ、ホロホロした衣が好きな方もいらっしゃいますが、この場合、衣が唇に当たり、口の中でご飯と天ぷらが別々の状態になり、一体感を味わうことが難しいです。赤出汁を啜って咀嚼することになりますが、これでは行儀が悪いです。
同じ理由で、天ぷらそばの海老天は、汁に浸っていなければならないのです。(独断)
しかし、この仕事は難しいと気付きました。今回訪問したこの店にあるように天ぷらが別盛りになっている場合、天ぷらは天ぷらとして食べて、「かけ」を合間に啜るという食べ方を想定しているのでしょうが、汁に天ぷらを浸す仕事は客に任せています。客がどう食べようと店に責任はありません。
ところが、初めから海老天が汁に浸っている仕事をしている蕎麦屋の場合、どのタイミングでどの程度浸すのかによって味が決まりますから、これは店側の仕事として客に評価されてしまいます。ここが面白いところです。数少ない「天ぷらそば」の経験からして、私は、次のことが大切だと気付きました。
1、天ぷらは、海老天だけ。できれば二本入っていること。(小海老のかき揚げはNG)
2、海老は、活き車海老に限る。大きさは「手二束」(両手で隠れる大きさ)が好ましい。
3、海老の尻尾が丼から出ていれば、尚良い。
4、衣は、簡単に剥がれないこと。
5、青菜は三つ葉。柚子の小片。
6、油切れが充分であること。
7、蕎麦は、香りが立ち、しかも茹で過ぎていないこと。
8、出汁は薄めで、海老天ぷらの色と蕎麦の色を損なわないこと。
9、全てが、そば盆に載っていること。
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さて、『手打蕎麦 一澤」の天ぷらそばは如何に。
海老は、活き車海老が三本ありました。(お大きさは、手一束、揚げた頭がついていた)
ここの天ぷらは、一流の天ぷら屋と同等の仕上がりであり、別盛りにしていることに店の自信が見て取れます。とても上品で美味しいのですが、私が「天ぷらそば」に抱いている「下手味(げてみ)」がありません。無理して海老天を二本、「かけ」の上に載せてみましたが、どうにもバランスが悪いです。
野菜天も素材の甘みが生きていて、塩も天つゆも要らず、そのまま食べた方が美味しいです。胡麻豆腐、蕎麦寿司の味も素晴らしく、蕎麦屋というより料理屋のような仕事をしています。近くには、「車家」という有名店がありますが、蕎麦そのものは、この辺りで一番美味しいと感じました。
メニューに「手挽き蕎麦」というのがあり、手挽きで製粉した挽きぐるみ100%の蕎麦です。食いしん坊なもので、これを追加で頼みました。
細く打たれた蕎麦は、香り良し、歯応えあり、喉越しよし、蕎麦実の甘味を感じる素晴らしい蕎麦です。一度に盛られて出てくるのではなく、客の食べ具合を見計らって二回に分けて供されます。常に最高の状態で食べることのできるこのサービスは初めてで嬉しいです。蕎麦ツユは、から過ぎず、甘すぎず、鰹節臭さも控えめで蕎麦の香りを堪能するために作られた最上級の蕎麦ツユです。
「牡蠣そば」を十月一日から始めたと表示されていましたので、牡蠣の好きな妻を連れて、訪れようと心に決めました。
店名 |
Takumi Ichisawa(Takumi Ichisawa)
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类型 | 荞麦面、天妇罗 |
预约・查询 |
042-676-2089 |
预约可/不可 |
可预订
原則的に予約制での営業。 |
地址 |
東京都八王子市別所1-1-6 |
交通方式 |
京王堀之内駅から徒歩5分 距離京王堀之内 223 米 |
营业时间 |
营业时间和节假日可能会发生变化,因此请在参观前与餐厅联系。 |
预算 |
¥5,000~¥5,999 ¥1,000~¥1,999 |
预算(评价总数) |
¥4,000~¥4,999¥3,000~¥3,999
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付款方式 |
可使用卡 (JCB、AMEX、Diners) 无使用电子钱 |
座位数 |
24 Seats ( テーブル 4人席×2、6人席×3) |
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最大宴席可容纳人数 | 24人(坐位) |
个人包厢 |
可能的 可容纳4人、可容纳6人 |
包场 |
不可能 |
禁烟・吸烟 |
严禁吸烟 店の入り口に灰皿あり |
停车场 |
可能的 店の前 2台、ドン・キホーテ駐車場出口前 2台、お店横サンドラック駐車場40分無料 |
空间、设备 |
平静的空间 |
此时建议 |
许多人推荐的用途。 |
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位置 |
家庭式餐厅 |
关于儿童 |
接待儿童 |
网站 | |
备注 |
サンドラッグへの駐車は40分間は無料になります。40分以降は有料となりますのでご了承下さい。 |
「手打蕎麦 一澤」の住所は、東京都八王子市別所1-1-6 。最寄駅は、京王堀之内駅です。
近くには、「手打そば 車家」があり、一つ手前の駅には「蕎家 佳」、足を伸ばせば「蕎麦 坐忘」もあり、どの店も蕎麦通を満足させる仕事をしています。
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「食は、"好みの問題" 」と仰る人がいます。
その通りであり、この多様性が面白いのですが、どの段階で個人差が生まれるのでしょうか。
私には孫が三人 (十歳、八歳、五歳) います。NONNO (ノンノ、おじいちゃん) として彼らの成長を冷静に眺めることができのは、とても楽しく大きな喜びであります。婚姻によってそれぞれの血統 (DNA) を引き継ぎ、食べ物の好みも三者三様なのですが、どういう訳だか皆、マズローの欲求階層説の第一段階である "生理的欲求" を超え第五段階の "自己実現の欲求" に至った "食いしん坊" の素養を示しています。私の二人の子供もその連れ合いも「誰に似たのかなぁ」と、言いながら私の顔を覗き込みます。
トリノに住む初孫はイタリア人の DNA が半分混ざっているのですが、納豆、味噌汁、餅の磯部焼き、梅干しのおにぎりが大好きです。その父親は海の近くで育ったので魚が好物でドルチェが好きです。孫も魚を上手に箸を使って食べるのですが、甘い菓子はこれを受け付けず、ジェラート留まりです。(納豆は、トリノの Porta Palazzo の中華食材を扱っている業者から冷凍品を仕入れることができる)
私の父方の祖母は、自分の連れ合いのことを「食べ物にうるさいことを言わないのが嬉しい。どんなものでもおいしそうに食べてくれる。」と生前、話をしてくれました。木曽の自然に育まれた食べ物は決して贅沢なものではありませんが、昭和の中頃まではきっと素朴で自然を感じるおいしい食材があったのだと思います。祖父は、毎朝、飼っていた山羊の乳を同じく鶏の卵に混ぜてミルクセーキにして飲むのが好きでした。兎はいつの間にか一羽二羽と数が減っていました。
神楽坂に住んでいた母方の伯父は下戸なのですが、戦時中でも富山の取引先から鰤が届けられ、日本橋の三越や高島屋で百貨店巡りをしながら "大人買い" で食材を購入し、お抱えの板前に料理を作らせていたぐらいの食通で粋な年増に大層モテた旦那でした。目は利いていたようです。
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さて、私の住んでいる長屋 (日本ではマンション) でもコロナ禍によるテレワークが増えているため、管理人室の隣にあるファシリティ室に設備されているインターネット機器が無料で更新されることになりました。100Mbps → 1Gbps と十倍になるだけなのですが、クラウドコンピューティングの時代ですから映像の取込み速度は格段に向上すると思われます。
これに伴い、自宅で使っていた Apple の古いTime Capsule を最新の WiFi ルーター (4.8Gbps) にしようと思い、京王堀之内駅近くの家電量販店まで行ってきました。(大本が 1Gbps なのにオーバースペックですが、スイッチングハブを取り除き、幹線のLANケーブルに直接繋いでノイズを減らし、セキュリティを向上させるのが目的)
この日、買い物は五分で終了したのですが、正午をかなり過ぎた時刻になり、『何処で昼食を摂ろうかなぁ』と考え、ご無沙汰していたけれどもいつも気にしていた「手打蕎麦 一澤」の暖簾を潜ることにしました。
「こんにちは。」
「あら、お久しぶり。」
美しい女将の笑顔に迎えられ安堵しました。
【いただいたもの】
・牡蠣せいろ (1,750円)
・小鰭
・天ぷら(才巻き、鱚)
どの料理も丁寧に作られ、素材の良さが伝わるものです。
水槽に活けで保存されている才巻きは甘く、鱚はフワッと優しく舌を喜ばせ、小鰭の〆具合も素材のおいしさを生かした肴として最上な仕上がりです。
『車で来るんじゃなかった。』
添付写真一枚目の "晩秋の品書き" を見るまでは、せいろ二種だけをいただこうと思っていたのですが、「牡蠣」の文字が目に入り、あれも食べたい、これも食べたくなった となりました。
他のそば屋に比べて二段階ぐらい冷たく仕上げられた蕎麦を手繰っていると、五十年ほど前、父方の祖父に連れて行ったもらった木曽福島の蕎麦を思い出しました。木曽節に「夏でも寒い ヨイヨイヨイ」と、あるように冷たい水で〆られた手打ち蕎麦は、歯応えが良く、口に含むと香りが立ちます。ここ「手打蕎麦 一澤」の蕎麦そのもの の旨さはこの辺りで随一ではないかと "好みの問題" ですが、私は思います。
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